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『街の上で』 [上映中飲食禁止]

緊急事態宣言、再々度延長の東京〜シネコンも何とか復活し始めたが、ミニシアター巡りを地道に続けている。

今日は新宿・シネマカリテへ。久しぶりのジュクでも歌舞伎町に飲みに行くわけでは無いので、違和感も恐怖心もまるで感じない。それよりも新宿駅に東西自由通路が出来て、ショートカット移動が可能になっていた事に驚いてしまった。これは昔を知る東京人にとっては画期的な事件だ。酔っ払って地下街をいくら徘徊しても新都心から歌舞伎町に辿り着かない苛立ちを、学生時代に何度も経験した。東京の街の変貌ぶりは承知しているが、新しいビルなんぞを建てるより、住民が便利になるこんなインフラの充実に力を入れるべきだ。開かずの踏切の高架化や電柱の地中化など、まだまだ東京には手つかずの課題が山盛りだ。

本題の本日の作品も素晴らしかった。下北沢を舞台にした若者達の日常を描いているのだが、小生のような昭和爺いには「今時の若者感性」が非常に新鮮に写り、なおかつ洒落た演出に微笑みが途切れることが無かった。これも「今の東京」だ[パンチ]


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下北沢の古着屋に勤務している荒川青(若葉竜也)は浮気されて振られた恋人を忘れることができなかった。ときどきライブに行ったりなじみの飲み屋に行ったり、ほとんど一人で行動している彼の生活は下北沢界隈で事足りていた。ある日、美大に通う女性監督から自主映画に出演しないかと誘われる。(シネマトゥデイより)

NHK朝ドラの常連ファンにとってデジャヴ的なキャスティングだ。前作「おちょやん」の杉咲花の初恋の人であり、終盤には井川遥と愛の逃避行する青年役で名を馳せた若葉竜也が主人公である。

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そして、おちょやんの亭主役で、地味な実力派若手俳優から一気にスターダムにのし上がった成田凌が友情出演して、小品に花を添えている。(二人はプライベートでも親友らしい)映画の撮影開始は朝ドラ以前のようで、結果的に、旬の男優出演のマイナー作品として公開されたわけだ。

力の抜け具合が絶妙。会話が楽し過ぎる。
一昔前なら「青年、シャキとせんかい!」と檄を飛ばしたくなるような主人公。決して自堕落なわけでは無い。決められた時間には仕事には行く。暇な古着店に勤めているが、店番として1日中、座って本を読んでいるだけだ。仕事が終われば地元をぶらついて、フラリとライブハウスやアングラ劇場に寄っていく。そして、いつものBARで酒を煽って帰る生活を繰り返す。行動範囲は下北沢を出る事は無い。彼女に浮気をされ、別れを切り出されて、逆に狼狽え、別れたくないと喚く。不思議と嫌悪感を覚えないのは、主人公が極めて真面目で優しい青年の設定であると共に、男性には珍しいアンニュイな雰囲気を若葉竜也が持っているからだ。
そして、彼を取り巻く女性達にも個性的な女優陣を配置し、若葉青年との各々のやり取りが今風の男女の機微を窺わせて、非常に楽しい。

穂志もえか           古川琴音
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萩原みのり            中田青渚

【小生の好みは、チョイ役だったが、劇場で青にタバコを恵んであげる倉嶋かれん[揺れるハート]
会話がまるで噛み合わず、無言の時間が続いても、決して気まずいムードにならない。自分の想いや考えを正直に、相手に合わさずマイペースに話す。新しいタイプの漫才を観ている錯覚に陥るほど可笑しいのだ。特に、後半での関西弁をまくし立てる中田青渚とのお互いの打ち明け話には、頬が緩みっぱなしだ。さらに、初対面の彼女の家に夜中に誘われて、仲睦まじく会話を楽しんだ挙句に、お互い別々の部屋に寝るという、昭和爺じには信じられぬ行動[がく~(落胆した顔)]据膳食わぬは男の恥」と教えられた小生は「草食系にも程が有るじゃろぉ〜」と愕然とするのであった。
ラストは、朝ドラ俳優の成田凌と付き合っていた元カノ(穂志もえか)が、青とヨリを戻すのだが、ほとんどドタバタ喜劇風に展開する。まさに「朝ドラ」の原典である吉本新喜劇を東京風にお上品にアレンジした演出に拍手喝采[かわいい][かわいい][かわいい]

「朝ドラ」出演俳優の実生活をパロディ化したような洒落た映画に見える。だが本質は、東京で暮らす孤独な彼らの日常をリアルに炙り出した新感覚の作品だ。生活パターンも他人との関わり方、会話ひとつとっても、小生とは異次元の若者達。それが嫌みなく表現されており、とにかく新鮮に写り、「勉強になりました」という仕上がりである。作中、登場人物達の家族背景や仕事に打ち込む姿は全く描写されない。「家族と仕事の悩み」が無ければ、人間はこんなに気楽に自由に生きられるんだな、と羨ましく思ったりして...

下北沢は、小生が学生時代から小劇場やライブハウスが密集し、少々アングラ好きが集う街であった。今も昭和の香りの残しつつ、マニアックな若者の夢を飲み込んでいるようだ。往時の悩み無きつむじ風青年は、歌舞伎町のJAZZクラブ通いでしたが...[わーい(嬉しい顔)]






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