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『1秒先の彼女』 [上映中飲食禁止]

オリンピック4連休を最近まで知らずに後輩に笑われてしまった。こういう勘違い親父は、紙の手帳でスケジュール管理をしている昭和世代に多いらしい。振替祝日の決定が遅かった為、今年の手帳のほとんどは訂正が間に合っていないのだ。スマホアプリの利用者には、当然そのような不具合は起こらず、こんな処にもアナログ派とデジタル派の格差が生じているようだ。

個人的には、オリンピック関連ニュースに興味が薄れていたのが一番の理由かもしれない。コロナ禍での開催は、ニッポンが肥大化したスポーツビジネスを変える絶好の機会を得たはずであったが、一連のIOCの不祥事がそんな淡い期待も吹き飛ばした。わが国は、政治を始めすべての組織の決定プロセスが旧態依然としている限り何も変わらない。とにかく「昭和の化石」は第一線から退くべきだ。自分世代の否定にも繋がるが、「残り時間」が多い若者達に権力を移譲していかなければ、我が国の未来は無い。

そんな訳で、スポーツの祭典としてのイベントなどには全く興味は無いが、競技として純粋に世界レベルの真剣勝負をお茶の間で応援しようと思う。もちろん世界中から集まるアスリート達からの美女探しが最大の愉しみなのだが...[揺れるハート]

せっかくの4連休でも、結局出社してしまうのが昭和爺いなのだが、残った時間は映画鑑賞とオリンピック観戦に向けられる。今日の昼間は有楽町へ、ずっと見たかった映画を[ぴかぴか(新しい)]


[かわいい]台湾からのご機嫌な贈り物[かわいい]

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郵便局に勤めるアラサーのシャオチー(リー・ペイユー)は、仕事もプライベートもパッとしない。台湾では七夕の日は「七夕バレンタインデー」と呼ばれ、恋人同士で過ごすのが一般的。ある日、シャオチーはダンス講師のウェンソン(ダンカン・チョウ)と出会い、七夕バレンタインデートをすることになるものの、朝起きるとなぜかバレンタインの翌日になっていた。(シネマトゥデイより)

真夏に一服の清涼剤...ラブコメディにSFのエッセンスを振りかけた洒落た台湾映画の佳作である。同じ中国語を話しても、台湾映画と中国映画そして香港映画は空気感が違うような気がする。特に台湾映画は日本と同じ島国のせいか、街の色彩や市民生活の香りに、邦画に近い親近感を覚えてしまう。主演のシャオチー役のリー・ペイユーを一瞥して、横澤夏子かと思った[がく~(落胆した顔)]

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魅力的な女優だ。普通に着飾ればモデル体型の美女だが、変顔も辞さずに『ちょっと変わった娘』を熱演した。さえない郵便局員の彼女が、交番に駆け込むシーンから物語は始まる、「私の一日が失くなった」と。前半は、失くなる1日直前までの彼女の回想だ。子供時代から何をしても周りよりワンテンポ早く、その影響か成人してからも仕事も良縁にも恵まれず、荒んだ生活を送る彼女の姿が丁寧に描かれていく。ようやく巡り会えた運命の人とバレンタインデー(台湾は年に2日あるらしい)にデートの約束をする。心待ちにしながらその日の朝目覚めると、なんとバレンタインの翌日になっていたのだ。勿論、彼女に前日の記憶は無く、呆然と立ちすくむのみだ。その謎解きが中盤以降だ。鍵となるのは、シャオチーの郵便局に毎日、封書を送りに来る謎の青年ウー・グアタイ(リウ・グァンティン)だ。何をやるにも周りよりワンテンポ遅い彼の回想により、二人の関係と失われた1日の秘密が解けていく。

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前半・中盤の視点の切り替えが見事な上に、予想を超えた空白の1日の仕掛けに、完全に作品に飲み込まれてしまう。時間軸を扱ったタイムスリップ作品は数多く鑑賞し、小生の好みのジャンルでもあるが、今作の発想は群を抜いてユニークだ。「こりゃ、一本やられた」なのだ。青年ウーの一途な想いは完全にストーカークラスなのだが、随所に織り込む笑いのエッセンスが、そんな猜疑心や嫌悪感を吹き飛ばしてしまう。

後半は、シャオチーが曖昧な過去を紐解きながら、青年ウーの実態に迫る。サスペンス感が増す展開の後、ついに彼の純愛に気づいたシャオチーは職場を変えてまで再会を待ち続ける。だが、その一年前にウーは悲惨な事故に遭っていたのだった...

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予定調和的な感動のラストであっても十分過ぎるほど楽しい作品だった。気楽に観られる内容だが、実は凄いバランスの出会えそうでなかなか巡り会えないタイプの作品だ。シリアスを基調にしながらウィットにも溢れる緻密な構成と演出が柱となり、色彩豊かなセット・背景、ハッとするカメラワークが挿入音楽と一体化している。そしてリー・ペイユーのコメディアンヌとしての魅力と垣間見せる美しさが、ちょっと風変わりな男女の不思議なラブロマンスを一層ドラマチックにした。鬼才チェン・ユーシュン監督からの素敵な一品を十二分に堪能させてもらった。



中華人民共和国の覇権主義により、あの破茶滅茶に楽しい香港映画は死滅するかもしれない。そして一つの中国を国是とした台湾侵攻は決して夢物語ではない。自由主義陣営の正義が世界標準とは言えないが、中華思想は同じアジアの同胞からしても異質である。「チャイニーズ・タイペイ」として参加する台湾と中華人民共和国の二つの中国の入場行進がいつもでも続く事を願うばかりである。


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