目黒『ドレメ通り』を歩く [寫眞歳時記]
JR目黒駅から2年前に長女が披露宴を挙げたホテル雅叙園に行く近道は、一風変わった名前の通りを歩くことになる。「ドレミ通り」という子供向きの可愛い名称とずっと思い込んでいたが、実は『ドレメ通り』が正解だった
どうやら「ドレスメーカー」からの「ドレメ通り」らしい。この通りには服飾専門の杉野学園の関連施設が密集しているのだ。戦前戦後を通じて活躍したファッションデザイナーの杉野芳子は1926年にドレスメーカー女学院を設立したのを皮切りに大学・短大・専修学校を次々と開校していく。彼女は国内で初のファッションショーを開催した戦前の日本ファッション界のリーダーであり改革者だった。そんな彼女の足跡と日本の洋装服飾教育の原点が此の通りに残っているのだ。
現在、杉野学園衣装博物館にて「花もよう」展が開催されている。通常は平日のみの開館だが、さる土曜日が特別開館日と知り、レトロ建築見学も兼ねて飛んできた次第なのだ。
夫の建築家・杉野繁一設計による博物館は1957年竣工。石造りの階段や列柱が重厚感を醸しつつ、正面のステンドグラスの燻んだ煌めきと和風の前庭によりモダンな印象となっている。館内は撮影禁止だったが、開放感溢れる吹き抜け天井の内部に杉野芳子が国内外で長年に亘り収集した衣装が展示されていた。戦前の学生達に西洋衣装の実物を見せたいとの意向から収集が始まったと言われている。今回は花のデザインに焦点を当てた衣装の展示で、地味な昭和風の陳列ケースが華やかな光を発している様だった。
博物館の隣が杉野学園本校舎だが、その敷地内に杉野夫妻が暮らした旧居が「杉野記念館」として保存されている。1938年に建てられた瀟洒な2階建て洋館で、東京大空襲でほとんどの校舎が焼け落ちた中で戦火を免れ、戦後暫くは教室としても使用されたと伝わる。以前は内部も公開されていたが、現在は閉館中だ。外観からだけだが、歴史を見守った杉野学園内一番の古株の姿を堪能した。
本校舎の更に隣にも立派な建物がある。此処も杉野学園一連の施設かと思ったが、『聖アンセルモ・カトリック目黒教会』であった。後日調べると、アントニン・レーモンド設計により1955年竣工された名建築だった。幾何学的な意匠と内部の厳粛な雰囲気に心打たれる。偶然の出会いに感謝
教会の向かいの道を進むと雅叙園に直結の「アルコタワー・アネックス」が見える。オフィス棟の大半はアマゾン・ジャパン本社が占める高層ビルの影には杉野学園の古い校舎と学生寮が点在し、辺りは独特の雰囲気を醸し出していた。
杉野学園第5校舎の隣にブティック併設の小さな喫茶店を発見 店頭にはカゴ入りで洋書の古本まで販売しているセンスの良さに惹かれて、迷わず入店だ。
『マイ・リトル・ハピネス』・・・ハンドドリップの珈琲と葡萄のタルトが絶品お若い夫婦二人で営んでいるようで、ブティック側の輸入雑貨とカフェのメニューのコンセプトがマッチしていて、非常に居心地の良い空間の中で手作りの味を提供してくれる素晴らしい店だった
つむじかぜ さんのおかげでドレメ、杉野学園の中はこんな感じなのかと知った今日。
ほんとを言うと外もちゃんと見たことがありませんでした。
by hagemaizo (2024-10-26 00:10)
杉野学園ドレメという言葉は私も知っていますが見たのは初めてです。いろいろ意匠を凝らしえますね。ご主人が建築家だったのですね。
by JUNKO (2024-10-26 17:26)
> hagemaizo 様
まだまだ東京は知らない処だらけ。
爺いの街探索は永遠に続きそうです^^;
by つむじかぜ (2024-10-27 02:04)
> JUNKO 様
戦前にファッションデザイナーと建築家の夫婦なんて
なんだか憧れますね^^
by つむじかぜ (2024-10-27 02:07)
アンセルモ教会は数十年前、友人の結婚式で行ったことがあり
ました!A・レーモンドの設計だったのですね。衣装博物館は
外観が立派で驚いた記憶があります。博物館内部の見学や喫茶
店も良さそう・・。行きたい所リストは増える一方なのに、
なかなか実行できないのが残念です・・(^^;)。
by うりくま (2024-11-01 21:30)