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Fate/stay night [Heaven's Feel] Ⅲ.spring song [上映中飲食禁止]

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2004年に発売されたPCゲーム内の物語の三つのルートの一つを原作とした劇場アニメ版3部作の最終章である。

小生は、熱狂的なアニメファンでもゲームオタでもないのだが、この「Fate」シリーズはお気に入りというか、昔の「エヴァンゲリオン」並みに結構ハマった。一昨年、偶然、第一章をTVで視聴し、昨冬に勢い第2章を劇場鑑賞した。物語の設定もはっきり知らぬままだったが、圧倒的な映像美と魅力的なキャラクター達、そして少々官能的なシーンに虜になった。それから時間を遡るように、既に公開済みであった「Fate」「Fate Zero」「Unlimited Blade Works」の3作品を密林プライムで鑑賞した。ストーリーの世界観は同じだが、展開も結末もまるで違う。まさにシミュレーションゲームでメインキャラクターを変更すると、物語が激変するように。その最後のルートの最終章だけに、期待は高まる。コロナ自粛により、4ヶ月遅れの満を持しての公開だ。




衛宮士郎は、間桐桜を守り、万能の願望機「聖杯」をめぐる戦い「聖杯戦争」を終わらせるため、遠坂凛と組んで激しい戦いに挑む。一方、闘争の真実を知るイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは運命と向き合い、間桐家の当主・間桐臓硯は桜を利用して自らの悲願を達成しようともくろんでいた。


詳細な説明は別にして、現代の魔術師が、過去の英霊を呼び戻して戦い合う「聖杯戦争」がメインストーリーである。その聖杯戦争に巻き込まれた唯一の一般人・衛宮士郎が、自分の正義と巨悪に取り憑かれた恋人・間桐桜の奪還の狭間で生死を賭けるという展開が、今作である最終ルートなのである。

各登場人物とりわけ英霊達にまで、その描写が非常に緻密であり、観客はお好みのキャラに容易に感情移入できる。それは全ルートを鑑賞したマニアに、一層、その想いを強くさせる巧妙な作りになっている。幾度も設定を変えながら再映される「エヴァンゲリオン」シリーズにも似ているかも知れない。

小生のアイドルは、すべてのルートで衛宮が召喚した英霊(サーバント)のセイバーちゃん(声・川澄綾子)だ。

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ブリテンの伝説の英雄・アーサー王なのだが、無敵の女性剣士という設定が憎い。純粋無垢そして当然ブロンド、伝説の剣技「エクスカリバー」の破壊力は天下一品。[揺れるハート]全作品で、衛宮士郎の盾となり大活躍の彼女だったが、今作では途中から暗黒に堕ち、士郎の最大の障害となるのだ。

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かつてない衛宮士郎との死闘は最大の見せ場であり、その決着は涙を誘う[もうやだ~(悲しい顔)]

今作のヒロイン役である間桐桜(声・下屋則子)も魅力的だ。影を抱えた可憐な女性。意外や結構、豊満です[黒ハート]第2章での濡れ場は発禁クラスだ。本人に自覚は無いが、とてつもない魔力を持つ上に、養祖父に悪の萌芽を埋め込まれている。

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ついに邪悪の権化と化した彼女は、世界を闇に堕とす力を得んと殺戮を繰り返すが、僅かながらの自我が、愛する士郎を求め、故に自己の存在をかき消そうともする。

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士郎と桜の最期の戦いは、桜の実姉であり士郎の同級生でもある遠坂凛(声・植田佳奈)が絡み、まさに壮絶な愛と憎しみの三角関係絵巻となる。ナイスプロポーションのエリート魔術師・凛がまたよろしい[ハートたち(複数ハート)]激しい気性と、深い優しさを併せ持ち、エヴァの「アスカ」を彷彿させる。イメージカラーも同じだ。
 
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そして、決戦を締めくくるのは、聖杯の鍵を握る美少女・イリヤスフィール(声・門脇舞以)だ。18歳ながら、幼女のまま成長を止めてしまっており、士郎の養父・衛宮切嗣の忘形見でもある。
 
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・・・と、毎度の女性キャラのみの紹介に終始したが、劇中の複雑な人間関係を理解しないと、思い入れどころか、作品自体が理解不能に陥る、マニアの為だけの無責任な映画ではある。万一興味がおありなら、旧作鑑賞で予備知識を蓄えて新作に臨むべきであろう。さすれば、Fateワールドの禍々しい深みに陥ること必須の、強中毒性のアニメ・シリーズの傑作である。

P.S.
この3部作のメインテーマ曲は、すべてAimerが担当している。彼女の独特の非人間的なハスキーボイスが、このダーク・ファンタジーに見事に同化しており、一聴の価値ありだ。(因みに、浜辺美波[揺れるハート]を見初めたのは第1章「花の唄」の名作MVからだ)

 

 

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『海辺の映画館 キネマの玉手箱』 [上映中飲食禁止]

今春、逝去された大林宣彦監督の遺作は、空前絶後の大傑作となった。

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大場久美子の映画デビュー作という興味本位から、学生時代に「HOUSE ハウス」(1977年)を再上映で観たのが、大林監督作との出会いだった。アイドルの大根役者ぶりに微笑みながら、ポップかつエキセントリックな映像に衝撃を受けた。それから40余年、「尾道3部作」を始めとして、日本人の忘れかけていた郷愁感を、時にとめどもなく美しく、時に信じがたい珍妙なカメラアイで、描き続けた。新人俳優を抜擢することでも知られ、薬師丸ひろ子・富田靖子など多くの若手俳優が、彼の作品からブレイクしていった。

半世紀に及ぶ映画人生の集大成とも言うべき本作は、約3時間の長尺である。仕事帰りにつき、実は寝落ち覚悟での鑑賞だったが、時間の経過も忘れ、完全に映画に惹きこまれた。80歳を超えた巨匠の脳みその断片を繋ぎ合せていったような、初心回帰を思わせる突飛な映像が、支離滅裂な時間軸の交錯を繰り返し、徹底して反戦を謳う。現代日本人へ向けた強烈なメッセージであり、極めて私的かつ日本的な、純粋無垢な邦画中の邦画の傑作である。

広島県尾道の海辺にある映画館・瀬戸内キネマが閉館を迎え、その最終日に日本の戦争映画大特集と題したオールナイト興行が行われる。3人の若者が映画を観ていると劇場に稲妻が走り、閃光が彼らを包むと同時にスクリーンの世界に押し込んでしまう。戊辰戦争、日中戦争、沖縄戦、原爆投下前夜の広島と上映作品の劇中で描かれる戦争をめぐる中で、三人は桜隊という移動劇団の面々と出会い、史実では原爆の犠牲になってしまう劇団員たちを救おうと手を尽くす。
 
半世紀に及ぶ大林組新旧スタッフ・キャストが総結集だ。彼らの師匠への至高の「愛」が、豪華絢爛・摩訶不思議なキネマ絵巻となって観客を異次元世界へと誘う。

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今作のメインヒロインは、新人の吉田玲そして鳴海凛子、山崎紘菜、常盤貴子だ。
いやぁ、小生好みの渋いところを攻めていらっしゃる。そして随所に、昔懐かしの俳優・珍客が絡んでくる。いきなり高橋幸宏が不可思議な進行役を務め、坂本龍馬役は武田鉄矢、千利休役は片岡鶴太郎ですか!伊藤歩も川上麻衣子もお美しいままだ[揺れるハート]NHK週間ブックレビュー以来の中江有里に再会できた幸福[黒ハート]笹野高史、白石加代子の怪演が一際輝く[ぴかぴか(新しい)]クレイジーキャッツ唯一の生き残り犬塚弘のベース演奏を聞かされた日にゃ言うことなし。

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3人の若者が、尾道の映画館から日本の戦乱時代にタイムワープし、前述のヒロイン達と愛と別れを繰り返していく物語だ。歴史上の戦乱の世は、つまるところ、同胞同士の殺戮であり、仲間内での裏切りと排除行為だ。その絵も言われぬ虚無感が、「中原中也」の詩と共に、エンドレスゲームのように設定を変えながら描かれていく。最後の場面は、監督の故郷でもある広島だ。1945年8月6日の『ピカ-ドン』・・・日常が一瞬にして「真っ白」になった日。
戦中派である大林監督が、現在の世界の不穏な趨勢を嗅ぎ取り、癌との闘病を続けながら、命を削りながら後世に問うた絶筆〜辞世の句なのである。

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こんな凄い映画には滅多に出会えない。
奇しくも、鑑賞日は原爆投下の翌日であった...
合掌


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