厄払い [寫眞歳時記]
神頼みはしないが、縁起は担ぐ。
念仏は唱えないが、亡き人やご先祖様への供養は忘れない。
今年、還暦を迎える。十干十二支をひと回りする事から、長寿のお祝いをするのが慣例だが、男の60歳は厄年でもあるのだ。辛丑(かのとうし)生まれの小生は、我が町の鎮守が「牛島神社」なのをかこつけて、『ウシ重ねとは何たるご縁。これは牛島様にお祓いに行くべし』と、女房を引き連れて、日曜の大雨の中、出掛けるのであった。
実は、男の大厄と云われる42歳時に、突然に顔面麻痺を患い、そのあと鬱病を発症してしまったのだ。「献身的な妻の看護」(女房談)により、どちらも完治したが、古代からの言い伝えは馬鹿にしてはいけない。小生の独りよがりの分析によれば、42歳前後は加齢と共に体質が変わる頃あいなのである。昔の人が「男の更年期だから、健康に注意しなさい」と言ってくれていたのだ。確かに当時は、仕事も遊びも破茶滅茶だった。今回は60歳、昔ならとっくに老人だ。残りの人生を豊かにする為にも、もう少し自分の心身を気遣わねばと思う。
チャップリン『街の灯』生オケシネマ [上映中飲食禁止]
何回観たか数えきれない名画だが、大スクリーンでの鑑賞は、ほぼ50年ぶりだ。そして、音楽はオーケストラによるライブ演奏という、こちらは初めての体験だ。
小学生時分、映画といえば「ゴジラシリーズ」や「まんが祭り7本立て」などの子供作品しか観たことがなかった私が、母に連れられて初めて触れた「文芸作品」が、このチャップリンの傑作なのである。
小学生時分、映画といえば「ゴジラシリーズ」や「まんが祭り7本立て」などの子供作品しか観たことがなかった私が、母に連れられて初めて触れた「文芸作品」が、このチャップリンの傑作なのである。
親日フィルの企画コンサートを知り、年老いた母のボケ封じにと思い申し込んだのが、一昨年だ。直後のコロナ禍により、2度の延期を挟んで、漸く本日の開催になった。その間に、母は認知症が急激に悪化し、今は介護施設に入っている。結局、本日は妻とふたりでの鑑賞となった。
緊急事態宣言下により、当初購入した指定席が、一席空きごとの再割り当てになり、逆に落ち着いた環境での鑑賞となった。指揮者・竹本泰蔵のプレ解説の後、壮大なオーケストラの演奏をバックに、大スクリーンにチャップリンの最高傑作がリマスター映像で蘇った。
鰻禅【うなぎ・本所吾妻橋】 [江戸グルメ応援歌]
『うなぎ』は大好物なのである
滅多に食えないのが、また良い。寿司やステーキも以前までは同様の部類だったが、最近の流通形態の変化により、価格帯も拡がり、格安店も増えた。だが、鰻だけは変わらない。いや、ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されて以来、高値安定が続いている。入手困難な高級食材が昔ながらの製法によって提供される日本独自の味。地域・店によって異なる風味の違いも楽しい。「自分にご褒美」とか「そろそろパワーつけねば」と勝手に理由をつけて食す折々の特別感が好きだ。
会社の決算の目処も漸くつき、ひと段落。地元の鰻屋に久しぶりに顔を出した。大阪・名古屋での転勤中に「関西風」の旨い鰻も多く食したが、やはり「関東風」の鰻には江戸前DNAが涎を流してしまう。
自宅から歩いていける唯一の鰻屋であり、外観はなんの変哲も無いお店なのだが、味は別格だ。調べれば、どのグルメサイトでもトップクラスの高評価なのである。コロナ以前は、グルメの口コミブームとスカイツリー観光帰りの中国人でごった返しており、なかなかフリーでは入れなかったが、今回はランチタイム真っ最中でも楽勝だった。
熟年夫婦ふたりで切り盛りする家庭的なお店だ。何度か通ったが、なかなか顔を覚えてくれない主人が黙々と鰻を捌いて、重さを計り、取分けている。シャキシャキ系の奥様と寡黙な主人の噛み合わない会話のバトルもこの店の売りだ。一見無愛想な主人も、日によっては機嫌が良く、口も滑らかになる。大概、常連に一杯ご馳走になった時なのだが、そんな時に聞いた話によると、都内の某有名老舗店でとことん修行し、此処で漸く独立したという。主人のこだわりは「臭みの除きとギリギリの柔らかさ」で、「うちほど柔らかい鰻はないよ!」と自信たっぷりに言う。カウンターから厨房の仕事が覗けるが、蒸しに珍しく圧力鍋を利用してから焼きに入っているようだ。ランチタイムのお品書きは「二段重」「特上」「上」の3種類のみ。要するに鰻の量の違いだけなのだが、気持ち贅沢気分で今日も「特上」を注文だ。
『野球少女』 [上映中飲食禁止]
1月の下旬から長らくリアルな映画鑑賞をしていない。
緊急事態宣言中の都内の映画館は、上映終了時刻20時を厳守している。映画1本約2時間前後なので、1日の最後の作品の上映開始時刻は17時台という事になる。平日ミッドナイト鑑賞が信条の小生には非常に厳しい時間設定だ。いくら閑職の身なれど、部下の手前、早退するまでの根性は無いサラリーマンなのである。
スクリーン禁断症状と共に、本日「首都圏非常事態宣言再延長」のニュースに触れた小生は、「もう我慢ならない」とばかりに終業と同時に猛ダッシュで日本橋のシアターに駆け込み、18時スタートのこの作品に間に合わせた。
最高球速134キロを誇り、<天才野球少女>とたたえられてきたチュ・スイン。高校卒業を控えたスインは、プロ野球選手になる夢を叶えようとするが、<女子>という理由だけでプロテストを受けられない。母や友だち、野球部の監督からも、夢をあきらめて現実を見ろと忠告される。「わたしにも分からないわたしの未来が、なぜ他人にわかるのか」――。(Filmarksより)
日経夕刊の映画コラムで高評価の本日公開初日の韓国映画だ。ジェンダー不平等により、就職や昇進などで不当な扱いを受ける「ガラスの天井」をぶち破った一人の女子高生の物語である。1997年に女性として初めて韓国高校野球部に入部したアン・ヒャンミという実在の選手がモデルと言われている。我が国の元総理大臣の愚かなジェンダー発言が国際的なパッシングを受けたが、これは政治家のレベルの低さと共に、日本全体が未だに抱える古い体質を世界中に露呈したに他ならない。まさに隣国でも状況は同じようで、ジェンダーや格差を問題化した作品が非常に増えている。どうも儒教思想に根ざした文化教育国は、現代の先進国標準には分が悪いような気がする。
主役イ・ジュヨンの魅力と洒落た脚本により、本来は重いテーマの社会派ドラマが、親しみやすいスポ根映画に昇華されている。鑑賞後の清々しさも一際の良作である。
主役イ・ジュヨンの魅力と洒落た脚本により、本来は重いテーマの社会派ドラマが、親しみやすいスポ根映画に昇華されている。鑑賞後の清々しさも一際の良作である。
典型的な韓流美人ではないが、小柄でボーイッシュな顔立ちと強い目力が、この主人公にハマり役である。そして、ストーリーが進むにつれ、彼女の人間的成長と共に美しく見えてくるから不思議である。まともにメイクアップし、髪型を変えれば別人のように妖艶にもなる。なかなか奥行きのある、今後も楽しみな女優である。
劇中では、コーチと選手、母娘のふた通りの葛藤が丁寧に描かれている。こちらの方は、韓国お得意のイケメン俳優と典型的なオバさんなのだが、一途なチェ・スインと衝突を繰り返しながら、徐々に彼女の想いを理解していく過程を見事に演じている。特に母親役は凄かった
P.S.
厳選洋食さくらい【上野広小路・洋食】 [江戸グルメ応援歌]
長女の入籍の日
地方在住の彼氏の両親は上京を避けた為、我ら夫婦のみで祝いの席を設けた
新婚カップルが上野駅近辺に新居を決めたので
その近場に在る父ちゃんの隠れ家を設営した。
目立たぬ雑居ビルの7Fにあるこの洋食屋さんは
昔、小生が独りフラリと飛び込んで以来のお気に入り
今回は二人の門出にコース料理をオーダーした。
『厳選』を謳う店だが、決して敷居が高い雰囲気ではなく
とはいえ、町の洋食屋さんとは一線を画す上品さと清潔感に溢れている。
ありふれた洋食メニューばかりだが
食べ慣れて舌の記憶に染み付いたいつもの料理とは些か違う。
「えっ?」と軽い衝撃の後に「美味い!」が来るまさに「厳選」な感じなのだ
前菜5品盛り合わせの後に...
ロールキャベツ
香辛料が効いた独特の風味、野菜が活きて、コンソメも深い
最後は事前に頼んでおいた「Happy Wedding」のチョコプレートを添えたデザート
娘夫婦とあっさり別れ、女房と帰宅
28年間、毎年飾り続けた雛人形が佇む
「もう来年は飾らなくていいのかなぁ〜」
『何、言ってんのよぉ〜まだ此処に姫がいるでしょ』
「」
熟年夫婦二人きりの生活が始まった...