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東京洋菓子倶楽部【浜町・甘味】 [江戸グルメ応援歌]

2回目のワクチン接種を完了した。

接種券配布が非常に早かった行政区に居住している為、自衛隊大規模会場での予約もスムーズに、8月中に何とか免疫獲得というわけだ。ただ、近くに住む長男夫婦やいち早く職域接種に臨んだ前職場の後輩達がことごとく高熱に悩まされていた。2回目の接種後は、比較的若年層に多く副反応が出ているようだ。

今年還暦を迎える微妙なお年頃の小生は、発熱しなければ名実ともに『ご老体』という事なのだろうか。高熱にうなされるのは嫌だが、全く反応が無いのも少々寂しかったりして...どちらにしても1日休めば治るとのことで気に病む事は無い。

珍しく女房が出張中で留守なので、小生は一人で自分用のご褒美を買って帰宅したのだった。鬼の居ぬ間の甘味なのだ[パンチ]

大好物のモンブラン2種類をお買い上げ

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中央区浜町に在る下町情緒溢れる洋菓子店だ。
上写真のモンブラン山をそのまま模した形の一品が、この店の看板ケーキである。これは美味い[わーい(嬉しい顔)] バタークリームなどのしつこさは皆無で、栗の旨みが最大限に活かされている。食感が「和菓子の練り切り」に近く、定番のモンブランとは、見た目以上に味わいも一線を画しているのだ。
下写真は「渋皮マロン」。モンブランと言えば、この形が主流だが、天頂に聳える大栗の存在感が眩しい。マロンペーストがベットリしておらず、上のモンブラン同様に和栗だけの旨みが強調されている。

女房が用意してくれた解熱剤を横目にひとり悦に入って、あっという間に2個を平らげた。う〜ん、幸せだ[ぴかぴか(新しい)]今のところ、発熱の予兆は無い。だが出張前の彼女の言葉を思い出す。『若い人は当日に反応するけど、アンタ鈍いから3日後位に熱出ると思うよ』暴飲暴食は今日だけにしておこう[ちっ(怒った顔)]




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『1秒先の彼女』 [上映中飲食禁止]

オリンピック4連休を最近まで知らずに後輩に笑われてしまった。こういう勘違い親父は、紙の手帳でスケジュール管理をしている昭和世代に多いらしい。振替祝日の決定が遅かった為、今年の手帳のほとんどは訂正が間に合っていないのだ。スマホアプリの利用者には、当然そのような不具合は起こらず、こんな処にもアナログ派とデジタル派の格差が生じているようだ。

個人的には、オリンピック関連ニュースに興味が薄れていたのが一番の理由かもしれない。コロナ禍での開催は、ニッポンが肥大化したスポーツビジネスを変える絶好の機会を得たはずであったが、一連のIOCの不祥事がそんな淡い期待も吹き飛ばした。わが国は、政治を始めすべての組織の決定プロセスが旧態依然としている限り何も変わらない。とにかく「昭和の化石」は第一線から退くべきだ。自分世代の否定にも繋がるが、「残り時間」が多い若者達に権力を移譲していかなければ、我が国の未来は無い。

そんな訳で、スポーツの祭典としてのイベントなどには全く興味は無いが、競技として純粋に世界レベルの真剣勝負をお茶の間で応援しようと思う。もちろん世界中から集まるアスリート達からの美女探しが最大の愉しみなのだが...[揺れるハート]

せっかくの4連休でも、結局出社してしまうのが昭和爺いなのだが、残った時間は映画鑑賞とオリンピック観戦に向けられる。今日の昼間は有楽町へ、ずっと見たかった映画を[ぴかぴか(新しい)]


[かわいい]台湾からのご機嫌な贈り物[かわいい]

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郵便局に勤めるアラサーのシャオチー(リー・ペイユー)は、仕事もプライベートもパッとしない。台湾では七夕の日は「七夕バレンタインデー」と呼ばれ、恋人同士で過ごすのが一般的。ある日、シャオチーはダンス講師のウェンソン(ダンカン・チョウ)と出会い、七夕バレンタインデートをすることになるものの、朝起きるとなぜかバレンタインの翌日になっていた。(シネマトゥデイより)

真夏に一服の清涼剤...ラブコメディにSFのエッセンスを振りかけた洒落た台湾映画の佳作である。同じ中国語を話しても、台湾映画と中国映画そして香港映画は空気感が違うような気がする。特に台湾映画は日本と同じ島国のせいか、街の色彩や市民生活の香りに、邦画に近い親近感を覚えてしまう。主演のシャオチー役のリー・ペイユーを一瞥して、横澤夏子かと思った[がく~(落胆した顔)]

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魅力的な女優だ。普通に着飾ればモデル体型の美女だが、変顔も辞さずに『ちょっと変わった娘』を熱演した。さえない郵便局員の彼女が、交番に駆け込むシーンから物語は始まる、「私の一日が失くなった」と。前半は、失くなる1日直前までの彼女の回想だ。子供時代から何をしても周りよりワンテンポ早く、その影響か成人してからも仕事も良縁にも恵まれず、荒んだ生活を送る彼女の姿が丁寧に描かれていく。ようやく巡り会えた運命の人とバレンタインデー(台湾は年に2日あるらしい)にデートの約束をする。心待ちにしながらその日の朝目覚めると、なんとバレンタインの翌日になっていたのだ。勿論、彼女に前日の記憶は無く、呆然と立ちすくむのみだ。その謎解きが中盤以降だ。鍵となるのは、シャオチーの郵便局に毎日、封書を送りに来る謎の青年ウー・グアタイ(リウ・グァンティン)だ。何をやるにも周りよりワンテンポ遅い彼の回想により、二人の関係と失われた1日の秘密が解けていく。

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前半・中盤の視点の切り替えが見事な上に、予想を超えた空白の1日の仕掛けに、完全に作品に飲み込まれてしまう。時間軸を扱ったタイムスリップ作品は数多く鑑賞し、小生の好みのジャンルでもあるが、今作の発想は群を抜いてユニークだ。「こりゃ、一本やられた」なのだ。青年ウーの一途な想いは完全にストーカークラスなのだが、随所に織り込む笑いのエッセンスが、そんな猜疑心や嫌悪感を吹き飛ばしてしまう。

後半は、シャオチーが曖昧な過去を紐解きながら、青年ウーの実態に迫る。サスペンス感が増す展開の後、ついに彼の純愛に気づいたシャオチーは職場を変えてまで再会を待ち続ける。だが、その一年前にウーは悲惨な事故に遭っていたのだった...

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予定調和的な感動のラストであっても十分過ぎるほど楽しい作品だった。気楽に観られる内容だが、実は凄いバランスの出会えそうでなかなか巡り会えないタイプの作品だ。シリアスを基調にしながらウィットにも溢れる緻密な構成と演出が柱となり、色彩豊かなセット・背景、ハッとするカメラワークが挿入音楽と一体化している。そしてリー・ペイユーのコメディアンヌとしての魅力と垣間見せる美しさが、ちょっと風変わりな男女の不思議なラブロマンスを一層ドラマチックにした。鬼才チェン・ユーシュン監督からの素敵な一品を十二分に堪能させてもらった。



中華人民共和国の覇権主義により、あの破茶滅茶に楽しい香港映画は死滅するかもしれない。そして一つの中国を国是とした台湾侵攻は決して夢物語ではない。自由主義陣営の正義が世界標準とは言えないが、中華思想は同じアジアの同胞からしても異質である。「チャイニーズ・タイペイ」として参加する台湾と中華人民共和国の二つの中国の入場行進がいつもでも続く事を願うばかりである。


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『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』               『夏への扉-キミのいる未来へ-』 [上映中飲食禁止]

実は3週間ほど前に「飛蚊症」を発症した。

右目の端に黒い絡まった糸のようなものが見え始め、余りにも気になるので眼科に行ったが、「老化による飛蚊症に間違いないね」と、いとも簡単に診断された。「網膜剥離のような重篤な病気ではないので心配しないで下さい。但し、どんな目薬でも治らないので慣れるしかないね」老眼は進んではいるが、視力は左右1.5はあり、目には自信があったのだが、ここまで医者に断言されたら仕方が無い。基本的に前向きな小生は「慣れよう[exclamation×2]」と思った。

飛蚊とは上手く言ったものだが、私の場合は床にゴキブリがいる錯覚に襲われ、我に戻って何度も愕然となった。それが2週間もするとほとんど気にならなくなるから、人間の感覚とは不思議なものだ。おかげさまで、当初控えていた映画鑑賞の頻度は、緊急事態宣言下でもうなぎ登りなのだ[パンチ]

今回は、夏に合わせてSFアクションとSFファンタジーの小品を連発で鑑賞である[目]

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世界は、音に反応し人間を襲う何かによって荒廃していた。夫のリー(ジョン・クラシンスキー)と家を失ったがかろうじて生き延びた妻のエヴリン(エミリー・ブラント)は、赤ん坊と2人の子供(ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ)と一緒に、新たな避難場所を探しに行く。(シネマトゥデイより)

前日にネットでパート1を視聴し、予習済みで臨んだ。何も考えずに手に汗を握りつつ、「主役は死なないもんね」的なこういうパニック映画も大好きだ。
前作で父親がエイリアンの犠牲になり、取り残された家族〜母親と姉弟そして乳飲み子がいかに生き延びれるかというストーリーだ。『母は強し』の通り、主役のエミリー・ブラントが孤軍奮闘の活躍だが、長女のミリセント・シモンズが後半から一気に頭角を現す。強力な助っ人にキリアン・マーフィー、助けの神にジャイモン・フンスー、忘れてはならない弟のノア・ジュープも一発逆転で主役の座を狙う。果たして、栄冠を掴むのは...真の主役は誰だ[exclamation&question]

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スッキリ爽快のエンディングながら、パート3への期待も十分に残しての終幕だった。二人の子役が実際に成長し過ぎる前に、次作での最終結末の公開をお願いしたいところだ。1席離れた隣の女子高生二人組が、エイリアンが突如現れるごとにポップコーンを飛ばしてビビっているのを微笑ましく感じる爺いなのでした[わーい(嬉しい顔)]

こちらはSFファンタジー邦画
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1995年の東京。科学者の高倉宗一郎(山崎賢人)は、ロボット開発の研究に熱中する。秀でた科学者であった亡き父の親友・松下が夢見たプラズマ蓄電池の完成を間近に控え、彼は愛猫のピートと松下の娘・璃子と平和な日々を送っていた。だが、共同経営者と婚約者に裏切られ、自分の会社も開発中のロボットや蓄電池も失ってしまう。(シネマトゥデイより)

原作はタイムトラベル小説の不朽の名作と言われている。70年近く前のアメリカの小説な為、この実写映画は現代的かつ日本風に大きく脚色されているはずで、どこまで原作のエッセンスを踏襲しているかは、残念ながら原作未読の小生に判別は出来ない。しかしながら本作は純粋に気楽に楽しめるファンタジー邦画として、十分確立されていると感じた。
山崎賢人清原果耶の売り出し中の二人のフレッシュな演技が心地よい。彼らを助けるアンドロイド役の藤木直人に苦笑しながら拍手を送る。個人的な好みでは、これで悪女はハマり役確定の夏菜[黒ハート][黒ハート][黒ハート]だ。

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コールドスリープ(冷凍睡眠)タイムマシンを組み合わせたSF王道の設定である。「2001年宇宙の旅(1968年)」から「パッセンジャー(2016年)」まで、コールドスリープが題材の映画は、古今東西推挙にいとまがない。「バニラスカイ(2001年)」は、小生の愛しのベスト映画だ。多くのこの手の作品を見慣れている為か、本作の緊迫した場面でも手に汗握れない。山崎賢人と清原果耶はハッピーエンドで終わりそうな予感が、かえって不思議な安堵感の中で鑑賞を楽しむ展開となった。
やはり注目は清原伽耶だ。2018年放映のNHKドラマ「透明なゆりかご」での透明感溢れる演技と新人離れした存在感に小生は釘受けとなった。将来有望な女優として、当時17歳の女子高生をマークしていたが、当然のごとく今春から朝ドラの主役の座を勝ち取ったのだった。これで彼女は全国区に羽ばたくわけだ。

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最近はいつにもまして朝が楽しみなのだが、昭和爺いには最近の彼女に大きな注文が1点だけある。

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前髪上げろぉ〜おでこ見せろぉ〜
小生は最近流行りのこのアイドル風髪型が大嫌いなのだ[むかっ(怒り)]
美人は眉毛と額を見せるべし[exclamation×2]

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『いとみち』 [上映中飲食禁止]

[ぴかぴか(新しい)]昨今では一際光り輝くニッポン映画の傑作[ぴかぴか(新しい)]

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青森県弘前市の高校に通う16歳の相馬いと(駒井蓮)は、強烈な津軽弁と人見知りが悩みの種で、大好きなはずの津軽三味線からも遠ざかっていた。そんな状況をどうにかしたいと考えた彼女は、思い切って青森市のメイドカフェ「津軽メイド珈琲店」でアルバイトを始める。当初はまごつくものの、祖母のハツヱ(西川洋子)や父の耕一(豊川悦司)、アルバイト先の仲間たちに支えられ、いとは少しずつ前を向いていく。そんな中、津軽メイド珈琲店が廃業の危機に見舞われる。(シネマトゥデイより)

いきなり、主人公・相馬いとの強烈な津軽弁が聞き取れない衝撃(笑)のオープニングである。字幕が欲しいと本気で思った。内向きの性格からの脱皮を目指した田舎の女子高生が、一念発起してメイドカフェでアルバイトを始めるというハートフルコメディにはありがちな設定だが、緻密な構成・脚本と俳優陣の熱演により、極めて純度の高い作品に仕上がっている。同型の邦画としては『フラガール(2006年)』以来の深い感動を与えてくれた。

監督は『俳優 亀岡拓次(2016年)』横浜聡子。安田顕を主役に抜擢したこの作品のノリが私の感性とピッタリであり、彼女の次回作を期待していたが結局5年も待たされた。彼女のオヤジ心も判る女性目線がユニークで、絡み合う「人の想い」を深くかつより自然に描く術に卓越した女流監督が、本作で本領を発揮した感ありだ。

今作を圧倒的なレベルまで引き上げた張本人は、もちろん、主役の駒井蓮の魅力が大きい。慶應大学の現役生だが、すでに俳優業は5年近い。地元が青森県平川市であり、津軽弁使いの女優を探していた横浜監督の目に止まり、今回の主役を射止めたらしい。思春期の悩める女子高生を透明感溢れる演技で表現した。現在の素顔は美形の女子大生だが、見事に訛りの激しいさえないJKに成り切っている。

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先輩メイド役の黒川芽以(写真右)がいい味を出している。三十路のシングルマザーながらJK顔負けの接客ぶりと時折見せる母親の素顔に、いとは憧れと親しみを次第に覚えていく。
父親役に豊川悦司。民俗学の大学教授で亡き妻の実家で、娘と義母の3人で暮らしている。唯一の標準語を話す(津軽弁を話せない)大人として、ある意味異彩を放つ存在として登場する。いとをとめどもなくを愛しているが、妻を亡くして以来、娘との距離感を掴みきれず、あえて放任主義を貫いている。

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祖母役・西川洋子はプロの三味線弾きであり、あの伝説の高橋竹山の一番弟子とのこと。(彼をモデルにした新藤兼人監督『竹山ひとり旅(1977年)』での演奏と生き様は今でも記憶に刻み込まれている。)彼女の三味線の調べと優しい笑顔が、孫の成長を優しく包み込む。

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一人の女子高生が、未知のアルバイトの世界に飛び込んで、他人との関わり方が少しづつ変わっていく過程が丁寧に描かれていく。何となく気が合いそうなクラスメイトにも話しができなかった彼女は一歩踏み込む事を覚え、親友を得る。「ひたむきに働く大人達」と関わり「仕事の本質」と「理不尽な社会」を垣間見、そして父親の愛を知る。俯瞰してみれば、大人の誰でもが少なからず経験した事柄を、主人公いとを通して「自分」を思い返す構図になっている。歳を経るごとに、人の想いに鈍感になってしまう寂しさを振い落とし、改めて「ひたむきさ」を呼び起こしたいと感じるのであった。

ラストシーンでの、いとの吹き替えなし津軽三味線の独演が白眉であり、鳥肌ものである。駒井蓮は当然ながら三味線未経験者であったが、半年間の猛特訓でこのレベルまで到達した役者魂に拍手喝采だ。「フラガール」での新人・蒼井優のラストのフラダンスの衝撃再びだ[exclamation×2]小生は、演奏前の黒川芽以が彼女の髪を梳かす無言のシーンから涙腺緩みっ放しだったが[たらーっ(汗)]

青森県津軽地方の地産地消映画の体裁で、上映館も限られた小品だが、紛れもなく日本映画の傑作に挙げられて然るべき作品だと思う。本当に鑑賞できて幸せだった[ハートたち(複数ハート)] 激しい津軽三味線の撥の音の余韻が、人の優しさを際立たせてくれる。




◉おまけ

作品内で一瞬流れるロックは、津軽出身の『人間椅子』の手によるものだ。私がこのバンドを初めて聴いたのは、平成元年からTVオンエアされていたロックバンド勝ち抜き番組「イカ天」だ。当時、アマチュアながらも独特の容姿でおどろしいグラムロックを演奏し、記憶に強烈に残っていた。まさか、今でも現役続行しているとは衝撃を超越して感動だ[パンチ]やり続ける凄い奴らが此処にも居た[exclamation&question]

懐かしい映像だなぁ〜(1990年)


現在の人間椅子
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文治 喬太郎 桃太郎 三人会 [上映中飲食禁止]

「柳家喬太郎」が好きなのだが、なかなかチケットが取れない。馴染みの浅草演芸ホールなどの寄席では何度か聴いているが、独演会などは人気があり競争率が激しいのだ。狙いどころは、ソロコンサートではなく団体戦で、しかも場末のホールだ。先月は、江東文化センターでのさん喬一門会で、本日は日本橋公会堂での3人会で、彼の噺を生で堪能してきた。

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3人会の構成は、前半は一人1演目づつを演り、後半は3人でのトークショーだ。

前座の桂空治が元気な「鈴ヶ森」で露払い、まず、大ベテラン昔昔亭桃太郎が脱力感タップリに「道具屋」を軽くこなす。初めて彼の噺を聞いた方は、「もっと真面目にやれ!」と憤るかもしれないが、これがこの爺ちゃんの味なのだ。
そしてお目当の柳家喬太郎である。落語の楽しみの一つは演題に入る前の枕でどれだけ観客を引き込むかだ。
「あのぉ〜また緊急事態宣言なんだね、凄いすな。もぉ、なにか困った時の緊急事態宣言なんだね。今回は8月22日までやるっつうんでしょ。夏休みかよ。そんなに長い間、緊急事態なの?それはもはや緊急事態とは言わない!」
独特の丁寧な江戸弁を駆使し、客との間合いを計りながら、爆笑と拍手の渦を攫っていく話術の凄さ。市井の人々が感じている事を洒脱に代弁するのは、江戸時代から変わらぬ噺家の特技なのかもしれない。本日の二人の先輩をあげつらいながら、「共演者とのバランスを考えてその日の演目を決めるんだが、今日は非常に立ち位置が難しい」と言いながら、観客の期待を膨らませる。芸域の広い彼の今日の出し物は古典か新作かはたまた会談噺か?先月は「任侠 流山動物園」という三遊亭白鳥の新作落語に抱腹絶倒した。果たして...いきなり酔った中年男性が登場する。動画で観た事がある『夜の慣用句』[exclamation×2]彼のオリジナルの新作落語である。生で聴くのはもちろん初めてで、内容は知っていても爆笑の嵐である[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)]




彼の新作落語なら、この演目と『午後の保健室』が小生のお好みである。一人何役も演じるのが落語の妙だが、特に彼の演じるいやらしい中年オヤジは秀逸だ。

本日はこれを聴けただけでも十分だったが、その後トリの桂文治の切れのある「お血脈」も楽しませてもらった。二部のトークショーは、大先輩の桃太郎を囲んでの噺家の他愛のないおしゃべりで、喬太郎も先輩に気を遣ったか、本領の毒舌は封印の感ありだったけど。

度重なる緊急事態宣言で、首都圏在住の噺家の生活の糧がまた細っていくだろう。そんなことも笑い飛ばしてネタにしてしまう彼らを少しでも応援できればと思う。もっと寄席に行かねば[パンチ]

やっぱり落語はいいねえ〜

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来々軒【中華・水天宮】 [江戸グルメ応援歌]

不屈の町中華

ちょっと入るのに少々勇気が必要な雰囲気の店だった...

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コロナ禍初期の昨春に、勤務先が変わったばかりで周辺をやたらと探索していて偶然に見つけた。店の看板が無い。不気味なほど真っ白な暖簾。来る者を拒むような曇りガラス。ウィンドウ内の色褪せした料理写真からなんとか「中華料理店」らしいと推測できる店構えだ。

怖いもの見たさも手伝って、この不可思議な謎の屋敷に入ってみる...が、店内は普通のくたびれた中華屋さんだった。テーブル席が3卓ほどとカウンター、普通の中年のおじさん二人が切り盛りしていた。先客が2名居り、カウンターの隅に座ってメニュー表を軽く一瞥して注文した。いわゆる「中華専門店」ではなく「町中華」と呼ばれる上海でも広東でも四川でもない地元客専用のなんでも中華屋さんに初めて来た時は、王道の「ラーメン+チャーハン」セットを小生は注文する事にしている。

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美味い[exclamation×2]
ラーメンは正当な支那そばで鶏ガラスープと麺の絡みが絶妙、ナルトとメンマと気持ち程度のチャーシューが嬉しい。チャーハンは、しっかっりとした味付けで、米と卵は全くべとついておらず豪快な盛りと共に、料理人の手際の良さを感じる。なんとなく自分のDNAに刷り込まれた「昭和の味」が蘇って来る。中学高校時代のクラブ活動帰りに、友人達と腹一杯食った地元の中華屋さんの味なのだ。

この名を知らぬ町中華店の常連になろうと思い、その後も2度ほど顔を出したが、去年の秋に閉店してしまった。コロナの影響かと思いきやどうも小火を出してしまったらしい。この時期にダブルパンチを食らっては仕方ないと残念がっていた・・・が、先日久しぶりに元の店の前を通りかかったら、新しい小ぎれいな店が出来ていた。良く見ると『来々軒』という中華料理店のようだ...中を覗くと厨房には昨年鍋を振るっていた店主がいるではないか[がく~(落胆した顔)]

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当然の如く「ラーメン+チャーハン」セット注文[パンチ]
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変わらぬ懐かしい味が、少々くたびれてきた小生の胃袋を若返らせてくれる[わーい(嬉しい顔)]

あのコロナ禍の緊急事態宣言時期に小火を出しても立ち直り、今尚、鍋を振り続ける町中華の王者に拍手を送りたい[かわいい][かわいい][かわいい] 絶対通うぜ[ぴかぴか(新しい)]




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『クルエラ』 [上映中飲食禁止]

[ぴかぴか(新しい)]目眩くファッションに胸踊る[ぴかぴか(新しい)]

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1970年代、パンクムーブメント真っただ中のロンドン。デザイナー志望のエステラ(エマ・ストーン)は、夢と希望を胸にデザイン画の制作や裁縫に全力で取り組み始める。しかし、カリスマ的なファッションデザイナー、バロネス(エマ・トンプソン)との出会いをきっかけに、エステラは狂気に取りつかれた“クルエラ”へと変貌していく。(シネマ・トゥデイより)

半世紀以上昔のディズニー名作アニメに登場する悪女の若かりし時代を描いた作品なのだが、残念ながら「101匹わんちゃん」の内容を知らない小生は、クルエラ・ド・ヴィルと言われてもピンと来ない。著名なディズニーより円谷特撮シリーズで育った日本男児な為、クリエラへやダルメシアン犬への思い入れは皆無だが、そんな予備知識抜きで抜群に楽しい映画であった。

母の仇を討つべく強大な敵に立ち向かう女性の復讐劇だが、その戦いの場が70年代のロンドンファッション業界という設定がユニークである。その復讐に燃える窃盗団上がりの若きデザイナー助手エステラにエマ・ストーン。「アメイジング・スパイダーマン」や「ラ・ラ・ランド」でのイメージを気持ち良く裏切ってくれた貫禄の演技だ。元々上手い女優だが、オスカーを獲ってまた一回り大きくなったような気がする。清潔感溢れる演技の印象が強いが、今作のアバズレの方がハマり役で、実質的なメジャーデビュー作「ゾンビランド」での素の彼女に近い印象だ。

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嗚呼、美しい[黒ハート] 
メイクのセンスも素晴らしいのだが、やはり素材の問題ですな。とにかく、悪女=美女の方程式を守り通すディズニーに拍手である。そしてもう一人のエマ。

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先輩オスカー女優のエマ・トンプソンが、ストーンの上を行く悪女ぶりを貫禄十分に魅せてくれる。当時のファッション業界を牛耳るカリスマデザイナー・バロネス役である。エステラの才能を見出し、彼女を引き立てながら自己の名声を更に強固にせんと狙う。当初は師弟愛を醸し出していたが、エステラの斬新なセンスが花開き始めると、嫉妬と恐怖の心が膨らんでくる。一方のエステラは、強烈な個性と才能を放つバロネスに恋い焦がれ、厳しい試練も喜んで受け入れ、自分を拾ってくれた人の力になろうと尽くす。が、その憧れの人物が自分の母親の仇だと知った日を境に、復讐の刃を向けることになる。悪女クルエラに変身して、バロネスの栄光を地に堕としめんと数々の画策を巡らすのだ。

ありきたりの展開ではあるのだが、二人が纏うファッションの競演に目を奪われ、クルエラの奇抜かつ用意周到なバロネスへの妨害行動が胸をすく。装飾美術とカメラワークが細部に渡り凝っており、小生好みの「絵作り」なのだ。

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近親憎悪を感じさせる似た者同士のふたりだったが、(想定通り)実の母子であった事が判り、対決の構図は更に深みに嵌って行く。そしてクルエラ絶体絶命時に(これまた想像通り)現れる救世主。果たして、クルエラの最後の反撃は功を奏すのか、エステラの純真さを取り戻せるのか...ディズニー映画ならではの安心して観ていられる予定調和作品。70年代ロックミュージックに乗って魅せるエマ・ストーンの美しき七変幻のMTVとしても十分楽しい映画だった。「101匹わんちゃん」を知らんでもダルメシアンのツートンカラーを理解すれば問題なし。



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