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『ゴーストバスターズ/アフターライフ』 [上映中飲食禁止]

[かわいい]鑑賞後、無性に嬉しくて前2作を配信で一気見してしまった[かわいい]

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母と兄(フィン・ウォルフハード)と共に田舎に引っ越してきたフィービー(マッケナ・グレイス)は、祖父が遺(のこ)した古い家で暮らし始めるが、街ではおよそ30年にわたり原因不明の地震が続いていた。ある日、フィービーは床下で不思議な装置を見つけ、さらに祖父の遺品を探るうちにゴーストを捕獲するための装置「プロトンパック」を発見。その後、彼女は祖父がかつてゴーストでいっぱいのニューヨークを救った「ゴーストバスターズ」の一員だったことを知るが、街はさらなる異変に見舞われる。(シネマトゥデイより)

一世を風靡した1984年の「ゴーストバスターズ」、続く「ゴーストバスターズ2」から約30年以上の時を経ての続編である。小生は子供向けにリメイクされたオカルト系コメディと高を括って、スルー予定の作品だったが、Laby様レビューに促されての鑑賞だった。昔日の映画ファンにとって涙がチョチョぎれる感動作であり、初見のZ世代も心躍る上質のアドベンチャー作だった[ぴかぴか(新しい)]

事前に前作を予習して行くべきだったと上映中に何度か後悔する反面、「このシーン、何か見覚えあるな?」と30年前の薄れた記憶を弄るのもマゾ的で愉しい[わーい(嬉しい顔)]
そして・・・

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この伝説のECTO-1を見た瞬間から頭の中ではレイ・パーカーJr.の主題曲が勝手に鳴り響く[るんるん][るんるん][るんるん] 心はすでに青年に戻り、隣には30年前の麗しの女房が座る...と、シルバー割のシングル鑑賞の爺いは我に帰る[あせあせ(飛び散る汗)]

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新作の主役は子供達だ。ゴーストバスターズの一人イゴン・スペングラー博士の孫にあたるトレヴァー&フィービーの兄妹と妹のクラスメイトのポッドキャストだ。特にフィービー役のマッケナ・グレイスが素晴らしい。

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亡き祖父の血を一番強く引き継いだ科学好きのオタク娘の設定だ。探究心旺盛かつ勇気凛々の少女キャラクターを見事に演じた。一見ボーイッシュだが、顔立ちが美しく、5年後はムフフの女優に成長すると見た[どんっ(衝撃)]そんな孫娘は祖父が生前暮らした屋敷の中に研究室を見つけ、彼の「偉大なる足跡」を垣間見る。

この街には30年来原因不明の地震が頻発しており、昔ゴーストバスターズが成敗した破壊神ゴーザの復活の兆しを掴んだ祖父が長年に亘り研究を続けていたのだ。その兆候は徐々に現実化し、破壊神復活の呼水となるゴースト達が街に溢れ始めてくる。兄妹の母親に一目惚れしたサマースクールの教師を巻き込み、幽霊捕獲機「ゴーストトラップ」を再起動させたフィービーと友人のポッドキャスト、そして遊び半分で廃車同然のECTO-1を修理した兄トレヴァーの3人は「ちびっ子ゴーストバスターズ」として街の危機に立ち向かうのだった[パンチ]

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中盤からゴースト退治のドタバタ劇に胸踊り、ミニマシュマロマン出現に抱腹絶倒[exclamation&question]

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ゴーザの番犬であるズールとビンツが母親キャリーと教師に乗り移る前回同様のパターンを踏襲し、遂に破壊神復活の時を迎える。果たして、ちびっ子バスターズは人類の危機を防ぐことが出来るのであろうか...

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...と強力なお助け隊が登場。元祖ゴーストバスターズ[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)]
8年前に逝去したハロルド・レイミスをCG復活させ、オリジナルメンバー全員集合[exclamation×2]

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大団円を迎える頃には温かい感動に胸が満たされ、流れるエンドクレジットを見つめる目頭が熱くなる。そして最後のシガニー・ウィーバーの登場にとどめを刺された。

今作監督のジェイソン・ライトマンは元祖ゴーストバスターズの生みの親であるアイヴァン・ライトマンの息子だ。既に一流映画監督として不動の地位を築いていた息子が、30年の時を経たからこそ描けた父の作品の続編ではなかろうか。当然、社会現象にもなった傑作コメディへのオマージュ作ではあるのだが、それ以上に老いた父への想いを通して人間愛に溢れた仕上がりになっている。家族を捨てゴースト殲滅に生涯を捧げたイゴン・スペングラー博士の娘キャリーは父の愛に気づき、顔を知らない祖父の血を強く引き継いだフィービーが彼の宿敵との戦いに終止符を打つ。それを手助けしたのが、祖父の3人の得難き戦友達なのだ。出来過ぎなくらい『時を経ても伝わる人の想い』現実と創作で繋ぎ合わせた新作は、前作リアル体験者には尚のごとく胸を熱くさせる。できれば前作の予習をしてからの鑑賞をお薦めする。トランプの神経衰弱のように細かな前作のオマージュシーンを楽しんだ後に、大きな感動がやって来る[ぴかぴか(新しい)]
アイヴァン・ライトマンは今作の製作者として息子の挑戦を見守った後、去る2月12日に鬼籍に入った。きっと息子の答えに満足にしたに違いない。合掌。
 




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『ハウス・オブ・グッチ』 [上映中飲食禁止]

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貧しい家庭出身の野心的なパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は、とあるパーティーで世界的ファッションブランド「グッチ」創業者の孫であるマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライヴァー)と出会う。互いに惹(ひ)かれ合うようになった二人は、周囲の反対を押し切って結婚。やがて、セレブとしての暮らしを満喫する彼女は一族間の確執をあおり、グッチ家での自分の地位を高めブランドを支配しようとする。そんなパトリツィアに嫌気が差したマウリツィオが離婚を決意したことで、危機感を抱いた彼女はある計画を立てる。(シネマ・トゥデイより)

驚愕の悲劇を嘲笑うように喜劇に変える魔術

巨匠リドリー・スコット監督が描くグッチ家の凋落。愛憎渦巻くドラマをアイロニックに人間の愚かさを謳い上げた喜劇に昇華させた。前作「最後の決闘裁判」同様に、シリアスに展開するストーリーの裏で、見栄や欲望に塗れた人間の本質を嘲笑う監督の冷めた視線が見え隠れする。80歳を過ぎてもリドリー節は健在なり[パンチ]

1995年マウリッツオ・グッチ暗殺事件に至るグッチ家の興亡に着想を得て映画化された。グッチ家に了承無しでの製作に物議を醸しているようだが、訴訟沙汰にならないのは、名家のプライドか、はたまた事実はもっと奇なりゆえか。強烈な個性の俳優陣の競演により、創作の愛憎劇がノンフィクション以上の説得力を持って我々に迫って来る。

なんと言ってもレディ・ガガ[キスマーク][キスマーク][キスマーク]

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このムチムチ感と威圧感は彼女ならではだ。3年前の「アリー/スター誕生」と比較してもパワーアップ・・・プラス8キロと見た[ひらめき] 世界一の歌姫の立場を築いた彼女だが、俳優としても超一流であることを証明した。イタリア系アメリカ人であり、パトリツィア役は水を得た魚か、この稀代の悪女をまさに「等身大」できめ細やかに演じた。

芳醇な色香に一発でやられた世間知らずのおぼっちゃまマウリッツオにはアダム・ドライバー。「最後の決闘裁判」に続いてのリドリー作品への抜擢だ。スター・ウォーズでの敵役がいつしかスターダムに登りつめてきた。「男の一途な愚かさ」を情緒溢れる演技で魅せてくれた。

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父が興した皮革工房を世界的ブランドに押し上げた立役者であり、マウリッツオの叔父にあたるアルド・グッチ。卓越した経営感覚とバイタリティ溢れる人間性でグループを引っ張る彼にはイタリア・マフィアの香りが残る...と感じていたらアル・パチーノ様ではないか[exclamation×2]エンド・クレジットまで気付かぬ程の変わりよう。だが雰囲気はまさに初代ゴッド・ファーザー役のマーロン・ブランドだ[かわいい]グッチ本家カリスマの悲哀を、経営者と父親としての両面から滲み出るエネルギーで演じきった。彼の存在感により本作の重厚度が増した。

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アルドの愛すべき愚息パオロ役にはジャレッド・レトだ。役作りの為に体重を30キロ以上増減させる尊敬すべき変態オスカー俳優だが、今回は禿げ上がった中年親父に変身だ。

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物語はパトリツィアとマウリッツオとの出会いから始まる。グッチ本家から勘当されても二人は結婚し、純愛を貫く。史実では、彼女が最初からグッチ家の財産目当てだったとされているが、本作ではパトリツィアを確信犯的な悪女には描いていない

運送会社で働く新婚時代の二人の幸福感は決して嘘では無かったはずだ。当初は純粋に、夫と父親の関係を修復し、家業に戻してあげたいと思い、彼女一流の手練手管を使って目的を達成する。法律家志望だった夫がトラックの運ちゃんをしていれば、妻は分相応な仕事に就かせたいと願うのは当然だろう。だが、華やかな世界を垣間見てしまった彼女に別の感情が生まれる。貧しい家柄を人間扱いしないグッチ家の奢りに反骨心が芽生え、能力の無い者が大金を手にする理不尽さに苛立つ。そして、能力の有る自分達がグッチ家の全てを手に入れて当然だと狂信的に駆り立てられていくのだ。徐々に富と権力に心奪われていく夫婦の姿がリアルに描かれ、スクリーンから目が離せない。権力闘争の影で暗躍するのがもちろんパトリツィアだ。学者肌の夫にはそんな芸当は出来ない。「人たらし」が天下一品の彼女の面目躍如たる所だが、レディ・ガガが憎らしいほど見事に演じる。そして夫婦関係の終焉と並行して会社の破綻が描かれる。パトリツィアと別離し、グッチ家の財産を独占したマウリッツオに経営能力が備わっている訳が無い。放漫経営の末、彼はグッチの経営権を売却するしか道は残らなかった。

それでも余りある資産を残し、気楽な余生を暮らすマウリッツオに迫る魔の手。パトリツィアに雇われた殺し屋の銃口が彼に向けられ火を吹く...まさに金曜サスペンス劇場並みの暗殺事件に発展する。だが離婚調停中だった妻の座を利用し、全ての資産を我が物にした彼女にも安寧の時は続かなかった...

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全ての登場人物から欲にまみれた人間の本質を抽出し、その末路を描き出した滑稽劇に仕立てた。人間の背負う哀しき業に涙しながら笑い飛ばす老監督の嘆きが聴こえる。果たしてパトリツィアの欲したものは、財産か名声か男の愛かはたまた一握りの自尊心か。創業家の精神が消え果ててもブランドだけは生き残り、あのロゴマークに大金を叩く世界中の紳士淑女にまで嘲笑っているようだ。19世紀から隆盛を極めた欧州のファッションブランドのほとんどは、今やLVMHやケリングなどに買収され系列化された。多くの商品はアジアで生産され最終工程で母国のブランドが付与されるらしい。個人的には「熊本のシジミ」と大差無いと思うのだが。因みに、パトリツィアの共犯として逮捕された占い師を演じたサルマ・ハエックの亭主はケリング社(Gucciを買収したコングロマリット)のCEOだそうだ。この辺りの配役にもリドリー・スコットの風刺が効いている。老いてもいまだに脂ぎる監督に今後の期待が更に膨らむ[ぴかぴか(新しい)]




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『ビリー・アイリッシュ』に向き合う [歌姫列伝]

日本人の洋楽離れが顕著らしい... 

2020年の世界の音楽市場は6年連続のプラスとなり、コロナ禍の中で力強い音楽の力を示した。成長を牽引したのはストリーミング配信でああり、全体の62%に及んだ。日本はアメリカにつぎ世界第2位の売上を誇る。但し、国別トップ10の中で唯一のマイナス成長だ。他国と比較しストリーミング売上が伸び悩み、CD・レコードなどのフィジカル音楽売上が着実に減少しているからだ。そして国内売上の邦楽・洋楽の構成比は10:90だ。20年前は何とか30%だった洋楽も今や風前の灯火である。最近巷に流れる音楽の大半は洒落たJPOPだ。70年代の洋楽ロック育ちの小生としては寂しい限りなのだが、最近のJPOPは確かに聴きやすい。楽器が皆滅茶苦茶上手いし、メロディーもキャッチーなものが多い。TVの歌番組は減ったが、ドラマ・映画・CMの挿入歌とネットでのMV露出は強力であり、庶民の購買欲をそそるには十分だ。ランキング上位の楽曲を一聴すると、スタイル・ジャンルは多様化しているが、多くが日本語の詩を大事にし、メロディーは日本人が歌謡曲で馴染んだコード進行が多いようだ。国内音楽業界がハイスペックな歌謡曲路線に回帰し国内アーチストの売り込みに特化するあまり、世界の潮流とは逆行したガラパゴス化が進んでいる気がする。何時から日本人は洋楽への憧れを失ったのだろう?世界のトップチャートとは全く異なる日本のチャートを見るにつけ愕然とする。そんな歌謡曲を毛嫌いした元ロック少年の小生ではあるのだが、直近の世界のヒットチャートTOP10のうち知るアーチストは何とBTSだけだった[がく~(落胆した顔)]気が付けば、小生が今聴く洋楽は10年以上前の「クラシックロック」ばかりではないか。知らぬ間に俺も日本のレコード業界に洗脳されているのか[exclamation&question] いかん、いかん、慣れた音楽に身を浸すのは老化の前兆じゃ[むかっ(怒り)]


...そう言う訳で唐突に「ビリー・アイリッシュ」に挑戦するのだ。世界を震撼させたティーンエイジャーの最先端の音楽を還暦爺いは理解できるであろうか[exclamation&question]


昨年初に2019年発売のデビューアルバムをアナログレコードで購入。
When We All Fall Asleep.. [12 inch Analog]

When We All Fall Asleep.. [12 inch Analog]

  • アーティスト: Eilish, Billie
  • 出版社/メーカー: Universal
  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: LP Record
針を下ろす...衝撃より先に戸惑いがやって来た。囁くようなヴォーカル、聞き慣れないDTM、やたらと低域を強調したビート音が迫って来る。自分が親しんだギターの唸りやキレの良いドラムは皆無だ。ノリは良いが、重い。多チャンネルを利用せず、少ない音数で表現する独特の音楽作りにいまだかつてない感性を感じるが、アルバム全体を通して押し寄せるダークな印象は小生の嗜好には合わなかった。グラミー賞5部門を受賞した〜全米で大衆受けした理由が解せなかった。英語の歌詞の理解不足、彼女のSSW以外の魅力を知らない面を差し引いても、音楽的傾向は自分とは違うような気がした。アルバムは2回聴いてほぼお蔵入りとなったのだが...

だが昨年夏に発売された彼女の2ndアルバムが前作以上に評判が良すぎるので、懲りもせず駄目元で買ってしまうのだった[かわいい]

Happier Than Ever [Standard CD]

Happier Than Ever [Standard CD]

  • アーティスト: Billie Eilish
  • 出版社/メーカー: Interscope
  • 発売日: 2021/07/30
  • メディア: CD


なんて素敵な音楽・・・病みつきになった[るんるん][るんるん][るんるん]


前作に比べて遥かに楽曲の彩りが違うのだ。まずビリーの生声が全面に押し出され、彼女が稀有な歌唱力と表現力を併せ持つシンガーである事を初めて認識した。そして低音重視のDTMを基調にしつつ、ギターやドラムのアナログ楽器が多く使用され(前作はベースが主体)、人間の温もりを感じるサウンドに仕上げっている。プロデューサー兼マルチミュージシャンである実兄フィニアス・オコネルの卓越したセンスも華開いた印象だ。歌詞はほとんどがビリー自身の極めて私的な内容に基づいている。瞬く間にスターに押し上げられたティーンエイジャーの悩める感情が精緻な言葉で表現されており、それが年代を超えて多くの人々の経験則と絡まり共感を呼んでいるようだ。


この曲は、DVの傾向があった元カレへの想いを歌っているが、聴き方によっては前トランプ政権を揶揄する内容にも受け取れるのだ。それにしてもアコギ1本がバックだとビリーの染み込むような歌声と表現力が更に際立つ。絶唱などせずにここまで心に沁みる歌声は稀有だ[ぴかぴか(新しい)]妹をサラリとサポートする兄の姿が何だか微笑ましい。

アルバム製作は二人の兄妹の共作であり、特に各曲の豊かな彩りは兄フィニアスの力に拠るところが大きいのだが、三歩下がって敢えて妹ビリーに脚光が浴びるように演出する兄の偉大さに敬服だ。70年代を席巻したカーペンターズのリチャード・カレンの兄妹を彷彿させる...と、唐突に50年前に遡ったりして...

名曲『Close To You』LIVE

歌詞の意味が良く分からんでも、時代を超えてやっぱり洋楽は素晴らしい[るんるん]
では改めて今世紀最強の兄妹バンドの熱狂のステージを[exclamation×2]

彼らにしては珍しいドラマチックな展開の曲

今後の二人の進化が楽しみで仕方ない[わーい(嬉しい顔)]


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マッシュルーム【恵比寿・フレンチ】 [江戸グルメ応援歌]

東京大雪の予報が外れ、久しぶりに女房と山の手方面へ外食なのだ。

チャリンコで行ける下町界隈には良くランチ目的で出掛けるが、渋谷区や港区となると少々敷居が高く感じてしまうものだ。要するに行動範囲が墨東地区専門の下町親父にとって、お洒落な山の手地区は同じ東京でも別世界なのだ。
それでも節目の記念日などには意を決して奥様をエスコートし、普段の不義理を埋め合わせするのである。見え見えの夫婦円満の秘訣だ、と言う訳で▽▽回目の結婚記念日なのだ。

15年ぶりくらいの再訪のレストランだ。

10、11月生まれの小生と長男と長女の誕生日祝いを3人まとめて一回で終わらせる超手抜きイベントを家族の定例行事としていた。小学生位でも入れる気楽なレストランを探すのが家長の役目でもあった。20年前に覚えたてのインターネットで偶然見つけた恵比寿のビストロがこの「マッシュルーム」である。まだ健在だった両親も連れて6人家族でお世話になり、その後も2回ほど利用したが、子供達の高校入学以来、自然と足が遠のいていたのだ。

店名の通り、「きのこ」を素材にした料理に異様な[わーい(嬉しい顔)]拘りを持つ家庭的かつ洒落たフレンチレストランだ。知らぬ間に人気店になっており、予約が取りづらかったが、今回は大雪予報とオミクロンのお陰でこの機会を得た。恵比寿駅から徒歩5分。若干、内装がシックになり大きなワインセラーも設置されていたが、全体的なカジュアルな雰囲気は以前のままだ。変わったのは客側で、いつも家族総出だったのが本日は小生と女房の二人きりだ。子供達は結婚して家を出て、両親は天国から孫の行く末を見守っている。流れる年月を感じる

舌の記憶が蘇る...嗚呼、素晴らしい味だ。基本はフレンチの王道ながら、ほぼすべての皿に「きのこ」を使用し、その風味を活かす調理に独創性が光る。以前より、ジビエ料理にも力を入れている感あり。一人前3皿のコースを注文したが、内容はすべて違うメニューにした。二人で皿を交換し味比べしても恥ずかしく無いビストロの方が、お固いグランメゾンより我々には合っているのだ。


洒落たナプキンのお出迎え
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ホワイトアスパラと山形紅花卵のポーチドエッグ
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天然キノコのブイヨンスープ 香草とシークワッサー風味
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アラカルトでキノコのソテーを追加
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北海道蝦夷鹿のポワレ 赤ワインソース
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紅玉のタタン、フィロ包み焼き、バニラアイス添えとエノキのプリン
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32年...長いようであっという間のような気もする。金婚式までのあと18年、お互い呆けずに健康でいたいものだ。ファミリーLINEで女房が報告したら、早速、長女から「33周年のはずだよ」との指摘が...
手帳に付いている年齢早見表を見て、小生がお店にデコレーションを頼んだのだが...去年の手帳だったぁ〜早くも亭主の方に痴呆の兆候が[がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)]



 気さくな感じの初老のシェフと明るい女性支配人に見送られて店を去る。
こちらは29年目。お二人の歩んできた道がお店の雰囲気と料理の味に滲み出ている。
素晴らしいお店だ。
これからは定期的に通うつもりだ[ぴかぴか(新しい)]

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銀座奥野ビル [寫眞歳時記]

レトロ建築巡りを不定期に実施中なのです[わーい(嬉しい顔)][わーい(嬉しい顔)][わーい(嬉しい顔)]

銀座一丁目のビル街の一角に、古いアパート風の建物がやたら存在感を主張して佇んでいる。美術好きの方々には結構有名な『銀座奥野ビル』だ。


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「銀座アパートメント」として1932年に竣工し、2年後に新館が右側に隣接して建てられた。東京大空襲の大火を逃れ、平成バブルの地上げブームにも踊らされず、東京の一等地で齢90年になろうとする奇跡的に長寿の建物である。いつしか約70戸の住居が小さな画廊やショップ、個人事務所などがひしめく現役バリバリのテナントビルとなって活躍中なのである。当然、一般人も出入り自由であり、若手アーチストの作品目当てにギャラリー巡りをする愛好家で週末などは結構賑わっているようだ。

銀座には画廊が点在しているが、どこも敷居が少々高く感じてしまう。だがこの奥野ビル内のギャラリーは、学園祭の教室ごとの展示を見て回るような気軽さがある。手動開閉のエレベーターで六階まで上がり、女房はショップ巡り、小生は写真を撮りながら階下に降りて行く。

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1階のエレベーターホールに足を踏み入れた途端に昭和初期にタイムスリップする。当然、改装・補習は繰り返していると思われるが、塗装が剥げた壁や床、古色を含んだタイル、剥き出しの配線に往時の昭和の輝きを感じる事が出来る。新旧ふたつのビルは内部で繋がっているが、多分後年に改築連結されたものと思われる。外窓が内部に組み込まれた不思議な光景だ。

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個性豊かなギャラリーは前衛的もしくはマニアックな作品の展示が多い。昭和の遺物の中で令和時代の先端を行く芸術品が飾られる違和感が、今風に面白いと云う事か。戦前に此処に居た住民達は90年後に自分の部屋がこのように使われていようとは思いもよらぬ事に違いない。

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先日訪れた取り壊しが決定した中銀タワービルと違い、奥野ビルの寿命は当分尽きそうもない。有志や入居者、芸術家達の協力により「奥野ビル306号室プロジェクト」を立ち上げ、306号室の保存を通してビル全体の継続営業を訴えている。因みに、306号室には最後の入居者・須田ヨシさんが住んでいた。奥野ビルの一室で美容院を開き、廃業後も住居として過ごした。10年前に100歳で天寿を全うされた後、この部屋を有志達が借り受け、住居のままの保存活動を開始したそうだ。

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やみくもに古い物を残し、ノスタルジーに浸るのが良い事とは思わない。千年経過した神社仏閣は国宝になり行政が経済的に保護するが、築百年のビルは耐震化基準無視の危険な建築物の扱いになっていく。個人の所有者にとってはその補修・管理維持には莫大な経費がかかり、新築した方がビジネスとしては正しい。この奥野ビルのように、市井の人々が保存に立ち上がり、ほぼ全室が再利用されて運営維持されている建物は稀であろう。昭和初期の近代建築物に関しての芸術的価値を再評価し、今まさに消えゆく美術遺産の経済的な再利用にも行政が力を入れるべきと考える。

1階の待ち合わせに女房がなかなか現れないので探してみると、美術に造詣深いと自負する彼女は、とあるギャラリーで迷画を購入中でありました。いいセンスだ
[がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)]


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『コーダ あいのうた』 [上映中飲食禁止]

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とある海辺の町。耳の不自由な家族の中で唯一耳が聞こえる女子高生のルビー(エミリア・ジョーンズ)は、幼少期からさまざまな場面で家族のコミュニケーションを手助けし、家業の漁業も毎日手伝っていた。新学期、彼女はひそかに憧れる同級生のマイルズと同じ合唱クラブに入り、顧問の教師から歌の才能を見いだされる。名門音楽大学の受験を勧められるルビーだったが、彼女の歌声が聞こえない両親から反対されてしまう。ルビーは夢を追うよりも家族を支えることを決めるが、あるとき父が思いがけず娘の才能に気付く。(シネマトゥデイより)

  主人公が高らかに歌い上げる
       ジョニ・ミッチェル「both sides now」に胸が熱くなる[黒ハート][黒ハート][黒ハート]

ホッコリと心温まる青春ドラマの秀作である。体裁は下半身ネタ満載の少々下品なコメディ仕立てだ。放送禁止用語連発につき字幕製作者の苦労が偲ばれるほどだ。だが、ストーリーの骨格は、聾唖の家族に囲まれた女子高生が自分の夢と家族の幸福の狭間で葛藤しながら大人の階段を登って行く成長ドラマだ。一風変わった4人家族が障害者差別と戦いながら、本当の家族の絆を再発見して行く過程が数々の名曲をバックに丁寧に描かれていく。

主演ルビー役のエミリア・ジョーンズは若干19歳。溌剌した演技と深い歌心が好印象だ。両親と兄は聾唖者で、家族で唯一の健聴者であるルビーが家族を支えていると言って過言では無い。家族の為にずっと漁師として働く事に疑問を感じなかった自分が、違う将来の可能性を発見し戸惑う姿を、まさしく等身大の今時の女子高生として演じた。

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ぶっ飛んでいる両親役にトロイ・コッツァーとマーリー・マトリンだ。精力絶倫
夫婦は常にユーモラスで聾唖というハンディを表面上は感じさせない。深い疎外感と焦燥感を胸の奥深くに隠したままに。

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マーリー・マトリン・・・聞き覚えがあった気がしていたのだが、、彼女は傑作「愛は静けさの中に(1986年)」の主演でオスカーを受賞した女優と同一人物ではないか[ひらめき] 実際の聴覚障害者でもあり、オスカー受賞は当時の話題にもなった。小生お気に入りの映画で、レンタルビデオで何度も彼女の凛とした美しさに打ち震えた記憶があった。それにしても...36年の歳月の残酷さを感じてしまう...我が愚妻の方が若く見えてしまう[がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)]

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「娘さんには類まれな歌の才能があるので、バークレー音楽院を受けさせたい」と音楽の先生から伝えられても、耳が聴こえない両親は実感が無く、信じる事が出来ない。当然だが、家族全員がルビーの歌声を聞いた事はないのだ。それよりも、彼女が家を出て仕事を手伝わねば、聾唖者3人での社会生活は困難になるのは目に見えている。今までルビーが健聴者達との意思疎通を当たり前のようにしていた日常が崩れる事に家族達は悩み苦しむ。

ここから今まで平穏だった家族達の本音の衝突が起こり、物語は佳境に突入する。これまた精力絶倫の兄は「お前に甘えるている自分に腹が立つ。早く家を出て行け!」と、ルビーを敢えてつき離す。母ジャッキーは「貴方が生まれた時に健聴者だと聞いて失望したの。だって娘と分かち合えないと思ったから」と、ずっと抱えていた思いを吐露する。そして父フランクは、学園祭で聴衆から大喝采を浴びたルビーの歌声を無性に感じたくなり、一計を案じる。ネタばれは避けるが、フランクが娘の美声に気づく瞬間が今作の白眉である。劇中ほとんどが客観的な描写だが、要所で聴覚障害者サイドの無音でのシーンが挿入される。ルビー家族の成長の物語と共に障害者差別という問題提起もサラリと織り込む演出効果が見事だ。

家族の思いがひとつとなり、ルビーはバークレー音大の試験に向かう。試験会場に忍び込んだ家族に気づいた彼女は、歌唱実技中に手話を交えて美声を披露するのだった...

「both sides now」〜「青春の光と影」〜人生の摩訶不思議さを美しく綴った詩がルビーの熱唱と手話で表現されたシーンに胸ときめかない者がいるのだろうか。あまり話題になっていないようだが、美しき名作[ぴかぴか(新しい)]

父フランクはヒップホップ好きだ。聴力が無くとも大音量での低音の響きが尻に心地良いからだと云う。そう、音楽って耳では無く心と身体で感じるものなのだ[どんっ(衝撃)][どんっ(衝撃)][どんっ(衝撃)]




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「アニャ・テイラー」に酔う [上映中飲食禁止]

久方ぶりに「ブロンド狂」を刺激させてくれた作品

ラストナイト・イン・ソーホー

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ファッションデザイナー志望のエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学するが、寮生活に向かず一人暮らしをすることに。新しいアパートで暮らし始めた彼女は、1960年代のソーホーにいる夢を見る。エロイーズは夢の中で、歌手を夢見るサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)と出会い、肉体的にも感覚的にも彼女と次第にシンクロしていく。(シネマトゥデイより)

小生のお気に入り「ベイビー・ドライバー(2017年)」のエドガー・ライト監督らしい映像と音楽に拘り抜いたサスペンス・ホラー映画だ。ホラー・ファンからは酷評の通り、正直、全く怖くない。だが、遊び心に溢れた映像作品として捉えると評価は大きく変わる。エドガー・ライトの類稀なる感性に脱帽である。

60年代マニアで霊感の強い女の子・エロイーズがロンドンのデザイン学校に入学する場面から物語が始まる。隠れた傑作「ジョジョ・ラビット(2019年)」の壁の中に住むユダヤ系少女役での存在感が記憶に新しいトーマシン・マッケンジーが、田舎育ち丸出しの少女が都会に出て覚醒したように美しく変貌する姿を好演した。劇中、彼女が突然、髪をブロンドに染めてからは一気にスクリーンに引き込まれた。そして彼女の夢の中に登場するアニャ・テイラー=ジョイという女優に魅力に身も心も蕩けてしまったのである[揺れるハート][揺れるハート][揺れるハート]

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派手派手しい顔立ちは元来苦手な小生だが、ここまで個性的だとマイナスに振れていたた感性メーターが逆回転に振り切れてレッドゾーン突入なのだ[どんっ(衝撃)]久々の大当たりじゃ[パンチ]

毎晩エロイーズの夢に現れる謎のブロンド美女は、1960年代のソーホー街の有名キャバレーで歌手を目指すサンディだ。トッププロを目指す彼女に好意を抱いたエロイーズは、夢の中で俯瞰しながら応援する。だが、マネージャーのジャックに騙され続けたサンディは下働きのストリップダンサーの域を出ず、酔客相手の売春まで強要されて行く。そしてエロイーズは、知らぬ間にサンディ自身と同期している自分に気づくのであった。

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荒んでいくサンディはジャックに抵抗するのも束の間、喉を掻き切られ絶命する。その場所はまさしく、今、エロイーズが住んでいる部屋だった。彼女は精神異常と疑われながらも、半世紀以上前の殺人事件の真相を掴もうと奔走するのだが...

最後はドンデン返しの驚愕のホラーシーンなのだが、前述の通り恐怖レベルは非常に低い。それでも小生は大満足なのである。60年代のソーホーを煌びやかに再現した装飾とオールデイズをバックに歌い踊るバービー人形が如くブロンド美女が、徐々に正気を失って行く様に胸を焦がす。

何はともあれ[黒ハート]アニャ・テイラー嬢[黒ハート]に一目惚れの小生は、後日、配信動画での連続TVドラマの中で彼女と再会する。
netflixを契約したまま嫁に行った長女に感謝なのだ[わーい(嬉しい顔)]

[ぴかぴか(新しい)]1年前の海外ドラマだが絶品[ぴかぴか(新しい)]
『クィーンズ・ギャンビット』
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海外の連ドラには興味の無かった小生だが、長女オススメの「愛の不時着」を一気見して以来、映画館至上主義という妙な拘りを捨てた。映画でもTVドラマでも素晴らしいものには感動するのだ。特にnetflixオリジナルには、単品映画以上に丁寧に作り込まれた作品が散見される。エミー賞を獲得した当作は、アカデミー脚本賞に2度ノミネートされたスコット・フランクが指揮を執り、脚本・演出・美術・音楽全てにおいて極上の仕上がりとなっている。そして今作の最大の魅力が、主演アニャ・テイラーの美貌と演技力なのだ。

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孤児院で育った少女がチェスの魅力に取り憑かれ、15年後にソビエトの無敗の世界王者に挑戦するまでを描いた全7話の物語。主人公ハーモン役のアニャ・テイラーは、今作では残念ながらブロンドを封印して赤毛に染めているが、その美貌には何の影響もない。第1話では少女時代を個性的な子役が熱演し、アニャは14歳となって養子に引き取られる第2話からの登場だ。

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時代背景は1950~60年代の米ソ冷戦時代であり、欧米社会にはまだまだ女性蔑視が根深く残り、チェスのプロトーナメントは男だけの戦場だった。そんな男性社会に、天賦の才と桁外れの闘争心を併せ持った一人の少女が立ち向かう。周りから好奇の目で見られながら、米国内の地方トーナメントで男どもをバッタバッタとなぎ倒して行くのだ。この過程は、貧乏な主人公が恵まれたライバル達を打ち負かして行く日本のスポ根漫画にも共通する小気味よさだ。だが、このドラマが優れているのは、少女の成長を輝くスーパーヒロインのように一辺倒には描かない。孤独な戦いの連続から薬物とアルコールに溺れ、愛を捧げる男達をボロ雑巾のように捨て去り、世界チャンピオン打倒のみに命を賭すダークヒロインの位置付けだ。『類稀なる才能を持った者は、その代償を支払う事になる』少女から大人の女性へ、名声を手入れる毎に心の闇に落ちるハーモンの外見は危うげな美しさと気品に溢れて行く。

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映画「ラストナイト・イン・ソーホー」では見られなかったアニャ・テイラーの演技力の幅の広さが堪能でき、60年代のファッションショーから抜き出たような彼女の容姿にも目が離せない。目力一つで聖女にも悪女にもなれ、常に気品は失わない往年のハリウッド女優を彷彿させる存在感は、最近の洋画界では稀有だ。

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終盤では、唯一の理解者であった継母が急死し、自宅を失いかけ、精神的にも経済的にもドン底に陥った時に、世界戦へのチャンスが訪れる。そんな時、音信不通だった孤児院時代の親友が現れ、ハーモンにチェスを教えた用務員のおじさんの逝去を知らせる。久しぶりに孤児院に立ち寄った彼女は幼少期からの思い出を振り返り、今まで見て見ぬ振りをしてきた他人からの愛の大きさに気づく。そして、自ら遠ざけていた友人や捨てた恋人達の協力を得て、ハーモンはモスクワの世界大会に出場し、ついに決勝戦で王者ボルコフと世界一を賭けての戦いに臨むのだった...

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男性目線で女性心理が描かれた脚本だが、文学的な香りを残しつつ繊細でありテンポが小気味よい。アニャを取り囲む共演陣も魅力たっぷりだ。ハーモンの対戦相手が皆個性的でゲームをリアルに見せる。特筆は継母役のマリエル・ヘラーで、精神を病みながらも娘を愛し支え、女性の弱さを恥ずかしげも無く曝け出した演技は素晴らしく、そんな母の姿に抗いながらも闇に落ちて行くハーモンの苦悩が際立った。孤独な戦いを永きに亘り自らに強いてきたハーモンが、かつての友人達の力を得て、世界一決定戦で見せる逞しく清々しい戦いぶりに胸が熱くなる。決して彼女は、ひとりきりではなかったのだ。長丁場の連続ドラマならではの、緻密な人間関係の描写の積み重ねの賜物だと思う。時代考証にも手抜かりは無く、大枚叩いた大掛かりなセットを作らずとも、古い建物やホテルを上手く利用し、60年代の雰囲気を見事に再現している。

海外連ドラを侮るなかれ[exclamation×2] 
粗製乱造の風潮も否定はできぬが、こんな傑作に巡りあえてしまうので、未だ睡眠時間の足らぬ日々が続く。本作のような全7話完結がちょうど良いな。下手にシリーズ化しての「シーズンXX」みたいのだけは御免被りたい所だけど。
まずはアニャ・テイラー=ジョイに出会えた幸運に感謝、感謝なのだ[わーい(嬉しい顔)]彼女の次回作への期待が否応なしに膨らむ。

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