SSブログ

『AKIRA』4kリマスター [上映中飲食禁止]

ほぼ3ヶ月ぶりの映画鑑賞である。

前後左右1席の間隔を空けての座席指定券を購入し、錦糸町のトホホシネマに到着。閑散としたロビーを抜け、入り口での検温を受けて入場する。当然、マスク着用は義務づけであり、方々に消毒液が設置してある。こんな窮屈な雰囲気でも鑑賞に来る奇特な観客は、未だマイナー派閥であり、100名ほどのミニホールは、小生含めて7名だった。ホストクラブや居酒屋よりは、よっぽど安全だろうが、映画業界復興にはまだまだ時間を要する。

1591061588_12127649505ed5ac546f135.jpg

原作は、言わずと知れた80年代の伝説的漫画である。1988年(昭和63年)に公開された劇場版がリマスターされ、32年ぶりにスクリーンに蘇った。学生時代から大友克洋ファンであり、彼の代表作は、ほぼ単行本で所持している。この「劇場版AKIRA」は、「ヤングマガジン」への漫画連載中に公開され、当時は、原作未完の状態での制作やオリジナルとの差異に対して賛否両論となった作品だ。今思えば、小生も否定派だったのか、勝手な思い込みにより、この劇場版は未見だったのだ。

1988年、関東地区に新型爆弾が使用され、第3次世界大戦が勃発した――。2019年、ネオ東京。金田をリーダーとするバイクの一団は進入禁止の高速道を疾走していた。しかし、先頭にいた島鉄雄は突然視界に入った奇妙な小男をよけきれずに転倒、負傷する。小男と鉄雄は直ちに現れたアーミーのヘリに収容され飛び去ってしまった。翌日、鉄雄を捜す金田は、少女ケイと出会う。彼女は反政府ゲリラの一員で“アキラ”という存在を追っていた。その頃、鉄雄はアーミーのラボで強力なクスリを連続投与され、不思議な力を覚醒し始めていた…。(allcinemaより)

オープンニングから暫くは、映像に違和感を覚える。多分、ジブリの名作や新海作品の精密な描写に慣れてしまった為だが、濃厚な2D動画に瞬く間に引き込まれていった。そう、これが大友ワールドが示した「昭和アニメ」最後の到達点なのだ。大型本全6巻の原作を124分に押し込んだ上に、連載途中にラストを先取りして制作されたがゆえに、展開の強引さは否めない。だが、それが逆に息をつかせぬスピード感に繋がり、シンプルなテーマ構築に繋がったのも事実だ。
設定は2019年、翌年にオリンピック開催を控えた東京である。何という偶然か、はたまた大友は予言者か?頽廃したneo東京の高速を滑走し、振り返る金田の姿に戦慄が走る。原作を知る者の特権かもしれない。

Akira-e1566258518150.jpg

五輪開催は想定しても、世紀末的な都市の荒廃ぶりは残念ながら?実現していない。貧富の差が拡大し、街中ではデモやテロが日常化する。救世主「AKIRA」出現を熱望する怪しげな宗教団体が大衆を扇動して行く。そんな状況でも、政治家達は自己保身を図るのみで、何一つ問題解決に立ち向かわない。実は冷静に比較すると、現代の日本と変わらないのだ、市民の直接的な行動を除けば。
この腐りかけた世界の破壊者であり、想像主でもある「AKIRA」の封印を、金田の幼馴染の鉄雄が超能力を身につけ、解いてしまうのがあらすじだ。大きな光に包まれ崩壊したneo東京に残るモノとは一体...
still-manga.jpg

原作者の意図は置いておいて、作品のテーマは個々の観客の感性に委ねられるのが正しいと思う。エヴァンゲリヲン、20世紀少年など類似した難解な作品ほど、観た者が自分勝手に解釈すれば良いのだ。正解などは無い。
ストーリー展開の激しさに見落としがちになるが、登場人物全てが「熱い」。未来社会を描きながら、気分は60年代安保闘争である。社会への不満、権力への反抗心を「行動」によって表現する若者達が溢れている。瓦礫のneo東京も、若い力が必ずや復興させるであろう事を暗示するような「希望」に満ちたフィナーレだと感じた。
2020年の混沌とした今だからこそ、平成世代にも鑑賞して欲しい作品かもしれない。
個人的には、超能力にもハイテク兵器にも負けず、ナンパと友情に生きる金田の勇姿が微笑ましい。アンログ人間強し!である。
もう一度、大友作品も読み返してみようかな。

[ぴかぴか(新しい)]やっぱり、映画鑑賞はキネマの大スクリーンだぜ[ぴかぴか(新しい)]

AKIRA 全6巻完結セット(KCデラックス)

AKIRA 全6巻完結セット(KCデラックス)

  • 作者: 大友 克洋
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: コミック
童夢 (アクションコミックス)

童夢 (アクションコミックス)

  • 作者: 大友 克洋
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 1983/08/18
  • メディア: コミック
ショート・ピース (アクション・コミックス―大友克洋傑作集)

ショート・ピース (アクション・コミックス―大友克洋傑作集)

  • 作者: 克洋, 大友
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 1986/05/15
  • メディア: 単行本
さよならにっぽん (アクション・コミックス―大友克洋傑作集)

さよならにっぽん (アクション・コミックス―大友克洋傑作集)

  • 作者: 克洋, 大友
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 1981/06/16
  • メディア: コミック
サルタン防衛隊 (Dobun comics)

サルタン防衛隊 (Dobun comics)

  • 出版社/メーカー: 同文書院
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: 単行本
気分はもう戦争 (アクション・コミックス)

気分はもう戦争 (アクション・コミックス)

  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 1982/01/24
  • メディア: コミック






35周年時のDVDBOXのプロモ(English版)内容は公開作品と同じです。


nice!(25)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 25

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。