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西日暮里「ツツジとシイと彫刻と」 [寫眞歳時記]

近場をぶらっと散策。

昨今の「谷根千ブーム」で西日暮里駅から谷中銀座に向かう一本道は日頃から多くの観光客が行き交うが、その途中に普段は人影まばらな寺院がある。但し、この季節だけは躑躅の鮮やかな色合いに誘われて立ち寄る人々で賑わう日蓮宗の古刹・経王寺である。この辺りでは躑躅のメッカと言えば根津神社だが、この小さな寺院で愛でる躑躅も一興である。

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先日の写真展に触発されてスクエア・フォーマットで撮影してみたが、難しい。私のようなフィルム世代では6×6判の感覚なのだが、構図の切り取り方のセンスの無さが露呈されてしまう。まだまだ修行が足りません[あせあせ(飛び散る汗)]
経王寺から1ブロック離れた処にもう一つの古刹がある。七面大明神を祀る延命院は樹齢600年を越える椎の古木で有名だ。安政の大地震(1855年)に本堂が崩壊してもこの樹木は生き残ったが、20年前に腐朽から南側半分の大枝が崩落した。それでも、大きな傷跡を露わにしながら緑の新芽を目一杯煌めかせ、隣の民家の外階段に乗しかからんとばかりに枝を広げている。

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脇道に逸れると、ビルの屋上から今飛び降らんとする人影が[がく~(落胆した顔)] 早まってはいけない[exclamation×2]

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...そんなわけはなく、此処は『朝倉彫塑館』という美術館である。彫刻家・朝倉文夫の昭和初期に完成したアトリエ兼住居を文化財として保存し、彼の作品と共に公開しているのだ。

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存在は承知していたが、見学するのは初めてだった。朝倉自身が設計した建物は、駆体から内装の意匠、中庭に至るまで趣向に富み、彫刻だけに留まらない彼の芸術性に満ち溢れていた。戦前からの都内の洋館はいくつも訪ねているが、此処は凄い[ぴかぴか(新しい)]創造者の息遣いを今でも感じられ、芸術家の圧倒的パワーに包まれる気がする。

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  (内部は写真撮影厳禁なので、公開されている資料から)

屋上に上がると、当時の都会の屋上緑化の先駆けとも言うべき庭園が今も美しく整備されている。屋上の縁から身を乗り出すブロンズ像と一緒に眼下の谷中の街並みを一望して見る。

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最後は、本日のお土産[わーい(嬉しい顔)]
西日暮里なら『羽二重団子』の一択であろう[かわいい] 創業文政2年(1819年)当時の製法を今も引き継ぎ、昔ながらの素朴な風味を味わせてくれる。日持ちは当日限りの生醤油の焼団子と渋抜きこし餡団子を串からバラして女房と半分個づつ戴きました[わーい(嬉しい顔)]

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『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』 [上映中飲食禁止]


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20世紀のロック・ヒーロー「デヴィッド・ボウイ」の軌跡を本人所蔵の大量のアーカイブから編集した魅惑のドキュメンタリーだ。生前のインタビュー、ライブ映像の合間に時代ごとに象徴される写真・ビデオをモンタージュで押し込み、徹頭徹尾、ボウイの世界観を描き尽くしている。

若い子が観れば、時代遅れの音楽とサイケな映像に振り回されるだけの2時間だろう。映画レビューというより、そんな知られざる偉大なヒーロー・ボウイへの個人的な思い出を綴る。

ロックに目覚めた中学生時代に彼の音楽にも触れたので、40年以上の付き合いだった。だが、病み付きになったのは、のべで5年間位なのである。それほどボウイは年代によって音楽性も主張も変化するアーチストだった。今思えば、彼の本質を理解しないまま音楽のスタイルで好き嫌いを決めていた私の浅はかさゆえかも知れないのだが...故に私の好きなボウイは大きく三つの時代に絞られてしまうのだ。
 
既にグラムロックの寵児として人気を博していた1970年代前半、5枚目のアルバム『ジギー・スターダスト』のLPにハマった。変幻自在のボウイのヴォーカルが胸に刺さり、チープ感漂うギターサウンドが心地良い。地球にやって来た火星人がロックスターになるというコンセプトアルバムであり、コンサートも宇宙人になりきったボウイの奇抜なファッション・衣装が話題となった。



だが、ドラッグ漬けの「わたし、暗いんです」的なサイケな風潮より、Led Zepplinなどの骨太ロックかGnesis、King Crimsonのプログレに私の興味は大きく傾いて行き、暫くボウイから遠ざかった。再度、彼に出会うのは1977年の『ロウ』だ。薬物中毒からの脱却の為にベルリンを活動拠点に変えたボウイは、前衛音楽家ブライアン・イーノと組んで実験的なアルバムを作り上げた。初めてFMラジオで聴いた時はぶっ飛んだ。何しろ大半がインストルメンタル曲で歌がほとんど無い。まさに当時ハマっていたプログレの香りに溢れていた。続け様に2作を発表し後に「ベルリン3部作」と呼ばれた作品群は、興行的には成功しなかったが、ボウイの美学が卓越した演奏家達によって具現化された欧州ロックの新しい風となった。『”Heros”』『Lodger』にはイーノに加えてギタリストにロバート・フリップ師匠とエイドリアン・ブリューまでもが参加し、まさにKing Crimson信者の小生にとって夢みたいな作品だった。



アメリカに活動拠点を戻してからの80年代以降の彼の活躍は目覚ましかった。マニア向きのロック・アイドルから脱却し、正真正銘のロック・スターへの道を突き進む。『レッツ・ダンス』が世界的に大ヒットし、映画『戦場のメリークリスマス』で役者としての評価も高まる。拗ねた了見の小生は、大衆受けすればするほど気持ちが離れ、音楽の趣向自体もJAZZ系に流れた時期でもあって、彼の活躍への興味も薄れてしまった。それからの約20年間、ボウイは数々の名声をほしいままに活躍したが、体調を崩した2004年以降は一切の活動の舞台から姿を消し、実質的な引退状態となった。

ところが、2013年に突如10年ぶりのNewアルバムを発表する。音楽業界に衝撃が走ったが、私は「66歳での新作は厳しいだろうな」と懐疑的だった。だが昔、惚れた女に敬意を表するべくアルバムは購入してみた。そして「以前の輝きを失った様には触れたくない」と思いつつ聴いた音楽に言葉を失い、魂が揺さぶられた。



『THE NEXT DAY』彼の半世紀に及ぶ活動の集大成とも言うべき練りに練り込まれた作品群。老いる自分と真正面から対峙しつつ創り上げられた音楽は、歓びに溢れ若き蒼き生命力に漲る。MVに映し出されたボウイの深い皺が刻まれた表情には、何の迷いもなく更に音楽の高みに駆け上がろうとする気迫に満ちる。既に発売から10年が経過するが、私は今でもこのアルバムを聞いてパワーをもらっている。2016年1月に次作『Blackstar』をリリースした2日後に、世紀のロック・ヒーローは69歳の生涯を閉じた

時代によってファッション、哲学、音楽性をカメレオンの如く変遷させるが、それはアーチストとしてのボウイの表現方法の違いであり、決して素の姿を見せることは無かった。デヴィッド・ボウイは常に演じ続けていたと、このドキュメンタリーは語る。私には晩年に近くなるほどに、自然体の彼を垣間見た気になるのだが、多分それも錯覚なのかも知れ得ない。稀代のパフォーマーの軌跡を十分に堪能させてもらった。

小生の一番好きな『LOW』に収められた1曲「Sound and Vision」。タイトなリズムにビートが効いたバランスが堪らないボウイ音楽の白眉だ。2002年のライブで、普段着に近いボウイの姿を見せてくれている気がする。




ジギー・スターダスト

ジギー・スターダスト

  • アーティスト: デヴィッド・ボウイ
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2014/01/29
  • メディア: CD
ロウ <2017リマスター>

ロウ <2017リマスター>

  • アーティスト: デヴィッド・ボウイ
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2018/02/23
  • メディア: CD
ザ・ネクスト・デイ デラックス・エディション(完全生産限定盤)

ザ・ネクスト・デイ デラックス・エディション(完全生産限定盤)

  • アーティスト: デヴィッド・ボウイ
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2013/03/13
  • メディア: CD

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『ウェス・アンダーソンすぎる風景展』 [上映中飲食禁止]

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一風変わった展覧会に行ってきた。天王洲アイル・寺田倉庫G1ビルだ。

ウエス・アンダーソンはお気に入りの映画監督だ。「グランド・ブタペスト・ホテル」「犬ケ島」「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」の直近3作でのシニカルとハートフルが交差する展開と目に焼き付く独特の映像美にやられてしまった。

本展覧会は、彼の写真展では無く「みたいな」写真展なのだ。ウエス・アンダーソン作品に現れそうな風景の写真をアメリカ人夫婦がインスタに投稿してからブームが起きた...らしく 
@accidentallywesanderson というユーザーネームからAWAと略され、世界中のフォロワーが同様の写真を投稿する交流の場となっている...らしい(インスタの仕組みをよく理解しておりません[あせあせ(飛び散る汗)]

「みたいな」基本要件は、左右対称でありパステル調の色彩と鮮やかな模様が際立ち、スクエエアフォーマットが似合う。ウエス・アンダーソンは今で言う「映える」写真の先駆けを遥か昔から映像化していた訳だ。

お洒落で愛らしい写真達に囲まれ、気分は世界を旅する冒険者の気分を味わせてもらった。仕切られた部屋ごとに彩色もディスプレイも趣向が凝らされ、倉庫の剥き出しの無機質感との対比もまたアンダーソン風という事なのだろうか。仕事帰りの素敵な週末の夜だった。

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『search/サーチ2』 [上映中飲食禁止]

痺れる[exclamation×2]新感覚ノンストップ・サスペンス[ぴかぴか(新しい)]

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アメリカ・ロサンゼルスの女子高生ジューン(ストーム・リード)の母親が、南米コロンビアを旅行中に消息を絶つ。デジタルネイティブ世代のジューンは、検索サイトやSNSなどを駆使して捜索を試みるが、手掛かりはつかめなかった。母の失踪はSNSで瞬く間に拡散されて憶測が飛び交い、国境を越えた話題になっていく。さまざまな情報に翻弄(ほんろう)される中、ジューンは真相を追い求める。(シネマトゥデイより)

緊迫感の持続力が半端無いサスペンスの秀作だ。いちゃいちゃポップ&コークを愉しむ不謹慎なカップルでも指を止めざる得ない強制力は近年でも屈指のレベルと言わざるを得ない[どんっ(衝撃)]

この作品に着いて来れるかで貴方のITリテラシーが測られる[がく~(落胆した顔)]

父を幼少の頃に亡くし、いまだに父の面影を追い求めるジェーンだが、女手一人で自分を育ててくれた母・グレイスの新しい恋は静かに見守らざるを得ない。母と彼が南米旅行に出掛けた一週間、厳しい母の監視から解き放たれたジェーンは友人達とハメを外しながら楽しい時間を過ごした。そして二人の帰国の日、ジェーンは空港に迎えに行くが母の姿が見えない。予定の飛行機には搭乗しておらず、スマホも通じない。コロンビアのホテルに連絡すれば、荷物を置いたまま二人は帰って来ないという。勘の良いジェーンは事件に巻き込まれたと感じ、ホテルの監視カメラの映像を保管しておいて欲しいと交渉するも、データは48時間で自動上書きするから無理と断られる。コロンビアの大使館は、強制捜査は出来ないが善処するとの型通りの返答だ。痺れを切らせた彼女は、現地の便利屋サイトからハビエルという代行業者を雇い、ホテルとの交渉を頼むのであった...

序盤から一気呵成に母親の謎の失踪事件がクローズアップされる。ジェーンの高校生とは思えない迅速的確な行動に舌を巻く。彼女はZ世代の典型的なデジタルツールの使い手だった。コロンビアのホテル担当者が英語を解せないと知るや、翻訳アプリを駆使してスペイン語での会話を成立させてしまう。英語を話せて報酬の安い現地の便利屋を瞬時に探し出し、その場で代行契約を結んでしまう。この時点で、昭和爺いは目から鱗、これがZ世代の世界標準かと呆然とするのであった。更に、ジェーンのデジタルスキルが冴え渡る。

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母と彼氏のgoogleアカウントにアクセスし、彼氏ケヴィンのパスワードを突破して失踪当日の彼の行動履歴を把握してしまう。そして彼が元犯罪者であり、母とは別の女性と頻繁に連絡を取っていた事実までも突き止める。女子高生ではあり得ないハッカー同様の実力だが、頭脳明晰かつ合理的な推理が下敷きにあるので自然と受け入れてしまう巧みな演出が素晴らしい。ケヴィンが主犯の誘拐ではと疑うジェニーだが、FBIは非合法で入手したデータを元には捜査できないと言う。そして便利屋ハビエルの活躍で、観光地のライブカメラに仲睦まじく映る二人の姿を確認するのも束の間、その直後に拉致誘拐される映像が何者からか警察に送られる。

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息もつかせぬ展開に1秒たりとも目を離せない。大スクリーンでPCやスマホの画面をこれほど観る経験は初めてだが、瞬時にツールとアプリを使いこなすジェーンのスキルは、まさに我ら昭和世代には神業にしか見えない。だが、ストーリーは更に二転三転し、謎が謎を呼ぶ。ジュニーはコロンビアでケヴィンと共にいた母は別の女性であるのを見破り、母が国内に潜伏している可能性を見出す。そして知られざる母の過去までもが明るみに...果たしてこの事件の真犯人は、その目的とは?ジェニーは母への愛慕と疑惑の葛藤に苦しみながらも、真実に向かって突き進む。PCとスマホを駆使しての彼女の戦いは熾烈を極め、それは事件を予想外の方向に収斂させて行くのであった...そして衝撃のフィナーレ[かわいい]

出演者は全て未知の俳優であったが、この緊迫の展開に見事に溶け込んでいた。ジューン役のストーム・リードは決して美形タイプでは無いが、今風のアメリカの出来る女子高生を好演だ。少々冷静沈着過ぎるきらいはあるが。そして親友役のメーガン・スリは小生のタイプ[揺れるハート]でございます。外国から無理難題を押し付けるジェーンに協力する便利屋ハビ役のヨアキム・デ・アルメイダが中年親父の良い味を出していた。張り巡らせた伏線の想定外の回収法は見事としか言わざるを得ず、それを極めて自然な描写で映像化した制作陣の力量は半端では無い。シーン毎の挿入音楽も目立たないが示唆に富んでいる。
昭和世代には最新のITスキルの勉強にもなる、極めて異色かつ極上のサスペンスの傑作と言えよう。小生のような還暦爺いでも何とか内容には着いていけたが実戦は無理だな。とにかく、パスワードの使い回しだけは面倒でも習慣づけねばと誓うのであった[あせあせ(飛び散る汗)]

勢い、前作「search/サーチ(2018年)」を配信で観た。この作品も素晴らしい出来栄えだ。今作との関連性は無く、登場人物も全く違う。今作は失踪した母を娘が探す設定だが、前作では中年親父が消えた娘の探索に執念を燃やす。スピード感と意外性はサーチ2が抜けている反面、サーチでは親子の情愛が深く描かれている。感じたのは、僅か5年前の作品と新作を比べてもITの進化が著しい事だ。サーチ3が公開される頃には世界はどんな情報社会になっているのだろうか。そんな未来で爺さんは如何にIT機器と共存出来ているのかと...




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錦糸町中華そば さん式【拉麺・錦糸町】 [江戸グルメ応援歌]

常連のシネコンビルの裏に7軒ほど飲食店が軒を連ねる通りがある。自国の方が働く中華と韓国料理店が立ち並び、唯一元祖コッテリラーメンチェーン「天下一品」が気を吐く不思議なスポットだ。映画帰りに気分次第で店を選んでは空腹を満たすのが小生のパターンだ。昨年末に一店舗が入れ替わっており、看板を一瞥して「またラーメン屋かぁ」と思っていたが『烏賊背脂煮干』の文字に惹かれてフラリと先日、入ってみた。そして最近では病み付きの店になった[ぴかぴか(新しい)]

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拉麺業界は、鶏ガラ・豚骨の定番から煮干鰹節の和風だし、それらのブレンドに飽き足らず、あらゆる食材のエキスを抽出し独自のスープを創造する大競争時代に突入して久しい[どんっ(衝撃)]ラーメン激戦地の錦糸町だけでも、鴨・真鯛・牡蠣・帆立などを素材にした店が結構繁盛している。そして今回の烏賊出汁ラーメンも絶品だった[ぴかぴか(新しい)]

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スープをゴグッと飲み込む。確かに烏賊じゃ、イカの一夜干しの味じゃ[がく~(落胆した顔)] 縁日の安っぽいイカ焼きとは違い、上品かつ濃厚な烏賊の風味が押し寄せてくる。しかもイカ独特の臭みが感じられない。小生は釣り好きでもあるが、船上で戴く釣れたてのスルメイカの肝で作った塩辛を彷彿させる。大阪のお好み焼きの如く、ここに豚の背脂が加わり、初体験のイカ豚スープの完成だ。もっちり中太縮れ麺との絡みも抜群で麺を啜る度に刻み海苔が海の香りを届けてくれる。あっという間に平らげて、スープと卵半分だけ残して「替え玉」を注文だ[exclamation&question]

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なんだか、九州ラーメンの替え玉と違う。机上のメニューを良く読むと、『そのまま食べられる替え玉』と書いてある。『良くかき混ぜて食すべし』に従ってみる。いわゆる汁なしラーメンだが、玉ねぎと粉末だしが効いた和風味だ。今度はストレート細麺なので先のラーメンとの食感とまるで違う。更に酢や一味をかけたり、烏賊スープにつけたり、個人の責任の範囲で好き勝手に食って良い替え玉なのだ。あっという間に完食[わーい(嬉しい顔)]

店内はシンプルかつ清潔感溢れ、店主夫婦と思しき二人の接客も心地よい。器や盛り付けにもセンスの良さが窺われ、店主の料理への真摯な姿勢が感じられる。「錦糸町」という地名を冠した店名は、自信の表れと共に、この地で味への飽くなき挑戦を続ける宣言ではなかろうか。これからますます楽しみなお店だ。


 

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ブラザーズ【ハンバーガー・人形町】 [江戸グルメ応援歌]

子供たちが幼少時には、マックやモスで家族みんなで良く外食をした。

自分の子供より食べ盛りの父親は、ハンバーガー3個でも足らずポテトやナゲットを喰い漁り、カミさんから「あんたバカじゃないの、カロリーいくつだと思ってるの!しかも子供みたいにベタベタこぼして[どんっ(衝撃)]」と叱られたものだった。当時のハンバーガーは、美味しく味わうよりも空腹を満たす為に流し込む固形物に近かった。そして子離れ以降は、滅多にハンバーガーショップに立ち寄る事は無くなった。

先日、いつものようにランチタイムに街を彷徨いていたら、真っ赤な外装のレストランの前を通った。ハンバーガー専門店であるのは承知していたが、当然のように常に素通りしていた。だが、何故かこの日に限って「何段重ねのバーガーをかぶりつきたい[exclamation×2]」衝動に駆られてしまい、思わず入店してしまった。人形町で働き始めて3年経つが初めてのランチ経験だ[がく~(落胆した顔)]

内装も赤を基調にしたアメリカンな明るい雰囲気だ。テーブルは満席で、カウンター席に座る。メニューを見ると多くの種類のバーガーとお得なランチセットなどもあるが、滅多に来る事も無さそうなので、「1番のオススメはどれですか?」と店員さんに聞き、少々割高だがお店一押しの商品を注文してみた。

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ロットバーガー 1800円

なかなかの迫力である。そして食べ方がわからない...と、メニューと共に食べ方ガイドが置いてあったので、見よう見まねで実践だ。ナイフとフォークを使っての上品マナーも書いてあったが、ここは店オススメの紙に包んでのかぶりつきしかない[かわいい]

『美味い[わーい(嬉しい顔)]
初めて知るハンバーガーの複雑な旨味が喉元を流れる。トマト・レタス・タマネギの野菜のフレッシュ感に濃厚なバーベキューソースに包まれたチーズがけのパティとベーコンから溢れる肉汁が絡まる味のハーモニー。とそこにパイナップルの甘味が後からいい具合に追いかけてくる。小生は、主食とデザート完全分離派であり、酢豚に入ったパインやアボガド寿司は絶対に許せない主義だが、これは許す[ひらめき]多分、紙に包んでのかぶりつきだからこそ味わえる食感だと思う。中身が溢れない程度に押し潰し、上から下までの具材が全てが口に入るように一気に頬張るのが秘訣のようだ。ナイフ・フォークでお洒落に食しては未知の領域には踏み込めないであろう。
店内の雰囲気同様に従業員の接客も明るくフレンドリーで非常に小気味良い。ソースをネクタイにこぼしていたのに気づき、食後にハンカチを濡らして必死に落としていたら、店員さんがシミ落とし液をスッと貸してくれた。子供じみた爺さんにも優しいサービスだ[あせあせ(飛び散る汗)]勢いで飛び込んだ店での新鮮なランチタイムに感謝の1日だった。

その夜、TVで「マツコの知らない世界」を見ていたら、なんとハンバーガー特集だ。しかも昼間の店が紹介されているではないか[exclamation&question]ブラザーズ」は知る人ぞ知るハンバーガーの老舗で、多くの職人を輩出している銘店なのだそうだ。この図ったような偶然をカミさんに自慢したら、「アンタ、ところで何個食べたの?」と責められる始末だ。暴食家を卒業した自称美食家親父は切々とハンバーガーの魅力を女房に伝えるのであった。
そして2日後の夜。仕事帰りに同じ店でハンバーガーを頬張る親父の姿が...

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王道のベーコンエッグチーズバーガー

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近々、カミさんを連れて来なければいかんな[ぴかぴか(新しい)]はい、もちろん1個しか食べませんよ[あせあせ(飛び散る汗)]


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匝瑳の古木 [寫眞歳時記]


先の週末は久しぶりに好天に恵まれ、関東近県は花見のラストチャンス[パンチ]今回は目的地をお隣の千葉県にした。成田空港の先の匝瑳(そうさ)市に地元で有名な古木があるらしい。レトロ建築好きが高じて、最近は巨樹古木にも興味が出てきた爺いは東関道を突っ走る。

流石に古木では車のナビで検索しても見つからないので、スマホでググりながら交互通行が困難な一本道を彷徨いていると、地元風の手書きの看板が目に入りなんとか辿り着く。先客と思しき車があり、駐車スペースもなく逡巡していると、「足が悪くて此処に停めてごめんなさい。もう少し先に駐車場がありますよ」と車中のおばさまが声をかけてくれた。親切な方でなんだか気分が和む。

黄門桜・・・水戸光圀が当地の飯高寺を訪れた際に植えたと伝わる。樹齢300年のヤマザクラで、全高は7mほどだが黒い塊のような幹から枝が四方に向かって伸び華麗な花を咲かせている。ソメイヨシノは落花の後に葉が芽吹いてくるが、山桜系は花と葉が同時に付く。純白の花弁と渋柿色の葉に菜の花の黄色が被り、味わい深いコントラストを生む。樹勢はまだまだ盛なようで、周りの畑から肥料の養分を吸収しているおかげかもしれない。ずんぐりむっくりの幹が非常に印象的で、樹木の強い生命力を感じざるを得ない。

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水戸黄門が訪れたと云う飯高寺が此処から近いようなので向かってみる。杉林に囲まれた坂道を上ってくと忽然と本堂と思しき大きな建築物に出会う。お参りを済ませると、階段に座っていた初老の男性に「どちらからですか?」と声を掛けられる。「東京の浅草の方からです」と答えると「遠い所からありがとうございます。お時間あれば此処の説明をさせて下さい。」実直そうなボランティアの方だった。広い境内で二人きり、この寺の由緒を暫く聞いた。

飯高寺(飯高檀林跡)・・・安土桃山時代に開かれた僧侶の学問所(檀林)が発祥と云う。日蓮宗の最高学府の位置付けで、当地に在った大小80の檀林の中心であり、今で言えば大学院だと彼は説明してくれた。卒業するには36年間が必要だったといわれ、仏教界で学問を極める事の厳しさを物語る。明治5年の学制発布により廃壇となるが、この体制と精神を引き継いだのが現在の立正大学だ。多くの施設はそのまま残され、貴重な文化財は現在の飯高寺に引き継がれて現在に至るそうだ。

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もう一つの目的地を目指す。国内で五本の指に数えられる椎(しい)の巨樹だ。ナビ通りに到着したのは、どう見ても個人宅の裏庭だった。手書きで「無料駐車場」と書かれた板が掲げられていたので、2,3台分のスペースにとりあえず車を止める。今度は物置小屋の脇に「大シイはこちら」の立て看板を見つけ、個人の敷地内でも見学は自由なのだと確信して、それに従って歩いて行くと...
安久山(あぐやま)のスダジイ・・・樹齢1000年。幹回りは10m、近すぎて全景は確認出来ないが、樹高は25mになると云う。地表1mまで太い根がせり上がって、一部は平板状に変形している。こんな造形は人間では考えつかない、自然の為せる奇跡か。圧倒的な迫力に神々しさまで感じる。

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維持管理協力金を求める木製の小さなポストに、200円のところを奮発して500円入れて帰り支度をしていると、小屋の裏から現れた男性にまたもや声を掛けられる。「どちらからですか?」いつもの如く答えると「明治に建てられた母家の中もご覧になりませんか。ご案内しますので」と言われる。私と同年代のこの敷地のオーナーであった。ご縁を大事にする性分なのでお言葉に甘え、お邪魔させて頂いた。

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オーナーの平山さんは代々この地で暮らし僧侶を輩出する家系に生まれたそうだ。ご先祖には飯高檀林の本山である身延山久遠寺を立て直した高僧もいたとの事だ。この明治19年に建てられた家は、外装は茅葺き屋根を瓦屋根に変えるなどしているが内部は当時のままを維持している。随所に宮大工の匠の技が残っており、この家屋の保存に向けて「飯高まるごと体験博物館」として法人化したそうだ。欄間の精密な細工や洒落た磨りガラスなどは到底、現在では製作不可能だろう。古民家はレンタルスペースとして解放しており、昨年公開された映画「母性」ではロケ地に抜擢されたと、映画のチラシを渡してくれた。(残念ながら未見だが)しかし、普段はコスプレの撮影会がたまにある程度で経営は厳しい様だ。「市の文化財に申請すべきでは」と私が話すと「理解のある役人が居ても代わったらダメになるんでね」と過去に嫌な思いをされたのかも知れない。「息子夫婦も流山市に出たきり此処には興味が無いようでね。」次世代に家を継がせるという事は至難の時代なのである。同年代の親父の悩みをなんとなくお互いに共有し、この古民家を後にした。スダジイの大樹と古民家を一帯の美しい里山の風景と共に後世にまで残したいと願う平山さんにエールを送る[ぴかぴか(新しい)]

不思議とこの日は地元の人によく話しかけられた。小生が無警戒な風態なのか、この地の方々が総じて気さくなのかは定かでは無いが、気分が極めてよろしい。偶然出会った人との他愛のない会話にも一期一会を感じる年頃になったと云うことなのだろう。

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