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『映像の世紀』コンサート [上映中飲食禁止]


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昨年3月15日に開催予定だったが、新型コロナにより8月8日に延期され、結局中止に至ったコンサートである。女房にしては珍しくこの硬派な番組がお気に入りで、地元トリフォニーホールでの開催を楽しみにしていたが、チケット返金となった我が夫婦にとっては幻のコンサートだった。

昨年は未知のウィルス襲来に全国民が行動自粛を余儀なくされた。それが1年半経過し、「緊急事態が通常状態」の首都東京は完全に『WITH コロナ』の風潮となり、同コンサート復活の運びとなった訳だ。当然の如く、ペアでチケット予約し、漸く本日の鑑賞となった。

ほぼ満員御礼の状態で、観客の年齢層も幅広い。単なるクラシックファンだけでなく、ファミリー鑑賞も多そうだ。ワクチン接種完了した我が夫婦としても、違和感も圧迫感も無く、普段と変わらぬ純粋にコンサートを楽しめる雰囲気だった。全員がマスクを着けている以外は。

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『音楽と映像がとても深いところで一体化して、見る人、聴く人に迫ってくるこのコンサートは、感動の力が通常のコンサートや通常の映像の鑑賞では想像できないほどの力でみなさんの心に押し寄せてきます。それが何といっても最大の見どころ、聴きどころです。その感動を、ぜひ多くのみなさんに体験していただきたいと思います。・・・・加古 隆

パンフレットに書かれた通りの心に沁みるコンサートだった。ナレーションに山根基世を起用し、NHK番組そのものの雰囲気を再現、映像自体は既に放映された作品の総集編という感で、20世紀の事件を駆け足に前後半で90分程に収めていた。とにかく、生の演奏の凄さだ。聴き慣れたピアノの旋律が、ホール全体を包み込む。ピアニシモの消えかかる余韻が美しい。交響楽団のアンサンブルとピアノが溶け込み、スクリーンに映し出される映像を際立たせて行く。ヨーロッパ王朝の崩壊から2度の大戦を通して繁栄と分断を繰り返す人類の姿が、ドラマチックに描かれて行く。人間の本質的な愚かさと逞しさをなぞるように、テーマ曲の「パリは燃えているか」のメロディが繰り返される。加古隆のピアノは哀しみを伴いながらも、人間の美しさを追い求める人類賛歌のようだ。





4年程前から全国コンサートを繰り返しており、すでに「加古隆」は一流作曲家としての地位を築いたといっても過言ではない。だが、小生の知る元々の彼はフリージャズのピアニストなのだ。芸大卒業後、現代作曲家を目指した彼はパリに留学するのだが、元々好きだったJAZZに傾倒し、TOKというバンドで現地デビューするのだ。高校時代からJAZZに親しんだ私は、彼の演奏もたまに聴いていた。もう40年位昔の事だが、変貌した彼の演奏を今まさに聴いている事に時の流れを感じる。70歳を越した彼は白シャツに黒帽子を纏い、いまだにダンディそのものだった。終演後、鳴り止まぬ拍手の中で弾いたアンコール曲は「黄昏のワルツ」という短いソロピアノ曲だった。あの激しいフリージャズの熱情が、こんなに優しい旋律に昇華されていた。心洗われるコンサートの開催に感謝の日だった。





先日、ZOZOマリンスタジアムで開催されたスパーソニックが物議を醸した。主催者側は感染対策に万全を期し、アルコール厳禁、間隔を開けた全席着席に変更したそうだ。そもそも屋外なので換気も良い。冷静に見れば、本日のコンサートの方が『密』だ。どうも、若者主体のロックコンサートは分が悪い。そろそろ日本も、ワクチンパスポート導入含めてイベント開催、夜間飲食への客観的な検証をすべきであろう。ワクチン接種が進み、「WITH コロナ」に向けてギアチェンジする時期だ。いい加減、コロナ被害の事業者に光を当てなければならない。


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『少年の君』 [上映中飲食禁止]


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進学校に通う高校3年生の少女チェン・ニェンは、大学進学のための全国統一入学試験を控え重苦しい日々を過ごしていた。ある日、一人の同級生が陰湿ないじめを苦に自殺し、彼女が新たないじめの標的となる。いじめっ子たちの嫌がらせが激しくなっていく中、チェン・ニェンは下校途中に集団暴行を受けている少年・シャオベイと出会う。共に孤独を抱えた彼らは次第に心を通わせていく。(シネマトゥデイより)

今の中国を覆う社会問題を、涙なしには観られない青春恋愛ドラマの体裁に落とし込んだ見事な力作である。2019年の香港・中国の合作映画で、民主主義陣営からは問題提起の多い中国だが、国の抱える病巣には我国以上に向き合っていると感じる政府公認の作品であり、当然の如く中国国民からも高く評価された。

冒頭から現在の中国の受験地獄の実態を目の当たりにさせられる。共産党支配と言いながら実態は自由経済市場を確立した中国でも学歴による格差問題が表面化している。低所得層がそこから脱出するには、超難関の一流大学に入学し、グローバル企業に入社するか共産党の幹部候補生になるしか成功の道は無いのだ。70年代の日本とも比較にならない熾烈な生存競争が、各都市の進学校で繰り広げられる。同級生は全て敵であり、その鬱屈とした環境から陰惨なイジメが後を絶たない。

母子家庭のチェン・ニェンは重慶(らしい?)のマンモス進学校に通う高校3年生。借金に追われる母は常に出稼ぎ状態で、彼女はほぼ一人で生活しながらもトップクラスの成績を収め、目標の北京大学も合格圏内だ。ある日、校内で飛び降り自殺したクラスメイトの遺体に上着を掛けてあげた事で全校生徒の注目を浴びてしまう。そして、その日を境に陰湿なイジメの刃が彼女に向かう。チェンの家庭環境と彼女が追い込まれていく様が淡々と描かれて行く導入部だが、痺れるようなリアルな緊迫感を生み出したのは、前半をほぼ台詞無しで演じたチョウ・ドンユイの力だ。

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撮影当時は25歳だが、運命に翻弄される女子高生になりきった迫真の演技は、まさに女優の鏡と言える。普通に着飾れば、スリムなモデル系美女だ。

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イジメがエスカレートし髪をザンバラに切られた彼女は、髪型を丸刈りにせざる得なくなる。本気の演技に胸が締め付けられる。今作の魅力は彼女の熱演失くして語れない

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チェンが出会う街のチンピラ青年シャオペイ役にイー・ヤンチェンシー。中国では人気のアイドルグループのメンバーらしいが、当時の18歳が等身大に純真なワルを好演だ。

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ひょんな事から出会ったチェンの用心棒を引き受ける事になるが、次第に二人は惹かれ合うようになる。シャオペイは、大学合格とそれから広がるであろう幸福を叶えてあげたいと、自分の身を賭して彼女を守りぬくと誓う。チェンは彼の気持ちを受け入れ、北京大学合格という目的と共に、都会で二人の生活を築きたいと夢見る。環境も背負っているモノも全く違う二人が、お互いに抱える孤独を糧に愛を膨らませる姿がいじらしいほど美しく描かれて行く。そして純愛ドラマの王道パターンは、更に二人を追い詰める。シャオペイの存在で一時は沈静化していたイジメだったが、執拗な首謀者は諦めていなかったのだ。

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イジメグループのリーダー役を演じたジョウ・イエ。可愛い過ぎるからこそ残忍さが際立つ深窓の令嬢を好演だ。イジメっ子になってしまった経緯を暗に伺わせる演出も光り、彼女も受験戦争の犠牲者だと作品は訴える。彼女の死の謎が、後半を一気にサスペンス調に展開させ、チェンとシャオペイの運命を決定づける。館内は至る所からすすり泣きが聞こえ、へそ曲がりな小生もここまでストレートに純愛を魅せられて不覚にも目頭が熱くなった。

今や世界経済を牛耳る大中国が抱える社会問題を真正面から捉えた今作は、紛れもなく社会派ドラマの秀作だ。その重いテーマを、手に汗握るサスペンスを織り込んだ青春迸るラブロマンスに昇華させた香港出身デレク・ツァン監督の手腕に拍手喝采である。全般を通じて、心も視線も『痛い映画』なればこそ、ラストの爽快感も格別だ。しかも問題提起は残しつつ。中核都市重慶の「今」を切り取ったカメラアイが秀逸、ストーリーに自然に溶け込んだ音楽も素晴らしい。こういう香港系映画なら中国共産党も認めるのか、と隣国の奥深さにも意外と感心したりして...

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