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公衆トイレから思い出の聖地へ [寫眞歳時記]

やり残しのケリをつけに京王線幡ヶ谷まで[パンチ]


(17)幡ヶ谷公衆トイレ/マイルス・ペニントン 東京大学DLXデザインラボ
この奥行き・ダウンライト・男女共用〜新感覚だ[exclamation]
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なんとか取りこぼしたワンピースを埋めて「THE TOKYO TOILET」をコンプリートしたが、達成感に浸ってばかりもいられない。公衆トイレ一つの為に此処まで来てとんぼ返りは勿体無い。実は前夜から作戦は練っていたのだ。幡ヶ谷駅の隣の代田橋駅には以前から訪れたかった場所があった。

杉並区和泉の甲州街道から入った脇道に一見異様な2棟のヴィンテージマンションが存在する。あの『ドラード和世陀』で度肝を抜かれた梵寿綱の作品である。ネット上でも多くの写真が公開されておりイメージは出来ていたが、いざ実物を目の当たりにすると製作者の熱き想いを改めて感じざるを得ない。そしてこの奇妙な建物を今も生活の場として暮らす人々の息吹まで窺い知れて嬉しい気分になる。

マインド和亜(1992年竣工)

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ある意味、カオス[がく~(落胆した顔)]
異彩な建物の一階に生活感溢れるコンビニがテナントとして営業中だ。ご丁寧に店頭で野菜の即売までやっている。裏手に回ればベランダに洗濯物が散見される。そして装飾に目を凝らせば、梵寿綱独自のワンダーランドな世界観が散りばめられている。

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エントランスホールは住民以外立入禁止で入口には錠がかけられており、残念ながら一部分しか見ることは出来ない。それでも雰囲気は十分だ。

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ラポルタ和泉(1990年竣工)

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正面の女性と階上右手のペガサスの巨大オブジェに圧倒される。聖女は身体をくねらせ静かに目を伏せ、純白の天馬は今にも冬の青空に飛び立たんとする。マインド和亜よりひと回り小さいマンションだが、狭いエントランスの手前が吹き抜けになっており、見事な装飾が施されている。

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なんと正面の女体の半身がエントランス側の壁から飛び出ている構造なのだ。この杉並の2棟は梵寿綱の晩年期の作品だが、圧倒的なパワーを今だに四方に放ちながら、此処に住む人々の生活と同化しているのだ。自分が単身赴任の立場だったら住んでみたいなぁ[ぴかぴか(新しい)]因みにこのマンションの向かいにも素敵なレトロビルがある。昔は生鮮食品を扱う市場だったようだが、現在はリノベされた店舗が入居している。

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化粧ガラス越しの猫ちゃんに別れを告げ、最終目的地に向かう。我が学び舎がある隣の「明大前駅」に行く。大学の教養課程の頃だから43年ぶりだ。どうしても行ってみたい場所があった。当時通っていたJAZZ喫茶が5年前にママの逝去の為に廃業したが、有志の手によって最近復活したという情報を得たからだ。大学3年から駿河台に校舎が変わって以来、プライベートでは新宿以西に足を運ばなくなり、いつかは顔を出したいと思いながらあまりに年月が流れ過ぎた...

駅前自体が整理された上に、当時、校舎に向かう途中の商店街も様変わりだった。僅かに見覚えがあったのは煎餅屋さんと電気屋さんくらいなもので、入り浸りだった雀荘やビリヤード店は今や一件も存在しない。そんな中、この店は昔のままそこに在った[ぴかぴか(新しい)]

◎JAZZ喫茶「マイルス」

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1960年創業のJAZZ喫茶。ジョン・コルトレーンも来店した伝説の店だが、そんなことを知らない1980年当時のつむじ風青年は、講義の合間や麻雀仲間が集まるまでの時間調整に週2.3度は顔を出していた。右の狭い階段を登り、雑然した薄暗い店内に入れば、JAZZビートの大音量と膨大なレコードとむせかえる紫煙が迎えてくれる。女性ひとりで昼夜切り盛りしている店だったが、「音楽」を聴く為に会話は厳禁に近い。ゆえにママとゆっくり話した経験は無いのだが、通い初めの頃「この紙に書いてリクエストしていいのよ」と優しくルールを教えられ、Jazz初心者の私はエリック・ドルフィーばかりお願いしていた。「このアルバムも好きなんじゃない」とオリバー・ネルソンの「ブルースの真実」を教えてもらったっけ。

本山ママは創業以来、女手一つでマイルスを59年間守っていたのだ。最期に一度会いたかったな。「いつか行こう」と思った時は「今、行け!」なのだ。そんな境地に達したのは還暦を過ぎてからだが、もっと早くにこの店を思い出せなかったことが悔やまれる。とっくに廃業しているものと勝手に決めつけていたからだ。

現在の「マイルス」は昼営業は無くなり、Jazz喫茶というよりJazzBarになってしまっていた。当然、この日はまだ開店していなかった。それこそ「今、行っても」ママはもう居ないが、彼女が残した大量のレコードと音響装置はそのままのようなので、近いうちに女房を誘って来るつもりだ。俺の定位置だったカウンター左端の席に座ろう。

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井の頭線のホームからは店の裏側が見える。赤錆だらけのトタン板に書かれた店名が愛おしく感じた...








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Labyrinth

精力的に駆け巡る! つむじかぜさんに大拍手♪ ( ´艸`)
ペガサスや猫ちゃん等々に心惹かれて…♪
ラストの “愛おしく感じた...” にウルっときました。流石…つむじかぜさま!
by Labyrinth (2024-02-21 11:42) 

つむじかぜ

「いつか行きたい」と思ったら極力「今、行こう」と刹那的に
生きておりまする^^;
by つむじかぜ (2024-02-22 01:45) 

八犬伝

和泉に43年ぶりでしたか。
私が通っていたのは
77年から79年にかけてでした。
このJAZZ喫茶は残念ながら覚えていません。
by 八犬伝 (2024-02-22 11:43) 

つむじかぜ

> 八犬伝 様
多分、小生の一年先輩でいらっしゃいますね!
和泉も駿河台もずいぶん変わりましたが、昔の風景に出会うと学生気分に一瞬戻れます。
by つむじかぜ (2024-02-25 00:56)