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『山の上ホテル』休館 [寫眞歳時記]

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古き良き時代のアカデミックな神田駿河台のシンボル的存在の一つだった「山の上ホテル」が来月に休館となる。老朽化が理由だが改築の計画は今のところ無く、このまま閉館・取り壊しの可能性が高い。

40年前の学生にとっては高嶺の花の高級ホテルだったが、友人との居酒屋帰りにホテル内のバーに立ち寄り優雅な大人を気取ったのも懐かしい思い出だ。女房との結婚披露宴会場の第一候補として下見に伺ったが、ウエディングドレスに拘る彼女の理想を叶えるには、近くの教会での定期的な研修参加が条件とのことであえなく断念した。嗚呼、若かった二人[あせあせ(飛び散る汗)]

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1954年開業で、設計は「天皇を守ったアメリカ人」と呼ばれるウィリアム・メレル・ヴォーリズだ。アール・デコ調の外観、幾何学的なクラシカルな内装は、まさに昭和モダンというべきか。総数30室ほどの小さな宿泊施設だったが、出版社がひしめく神田エリアという事もあり、昭和の文豪たちがカンヅメにされて執筆を強要された伝説が数多く残る「文化人のホテル」として名を馳せた。

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小生は宿泊経験は一度も無いが、プチ贅沢な食事処として家族のイベント時に施設内のレストランを利用していた。10年前の正月元旦、家族全員で墓参りの帰りにコーヒー・パーラー「ヒルトップ」で洋食を戴いたのが、亡き父との最期の外食だった。その父の7回忌には天ぷら「山の上」で孫を加えた新しい家族で会食した。

正月明けの夕方にカミさんとふらりと寄ってみたが、全てのレストランは予約で満席、ロビー喫茶も昼間に配布する整理券が無ければ無理との事だった。予想はしていたが、2月の休館に向けて一気に客が押し掛けているようだ。という事で、昨秋にカミさんに内緒で一人で「ヒルトップ」で食った『伝統のババロア』がこれです[ダッシュ(走り出すさま)]

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ババロア...脳内に響くなんて甘美な言葉[揺れるハート]そして昭和の子供のデザートが匠の技によって抽象画の如く色彩のハーモニーを醸し出す。美味いのは当然ながら、魅せるという付加価値をつける事こそ伝統と呼ばれる由縁なのだろう。

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現在の混雑状況では、閉館までに食事するのは困難かもしれない。しっかりと目に焼き付けながら、多くの思い出を共有した名ホテルに感謝の意を伝えておいた。


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