『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』 [上映中飲食禁止]
小生にとってアクション映画の王道シリーズといえば『007』と『M:I』が双璧である。緊急事態宣言解除直後に、待ちに待ったこの大作と出会えた幸せ〜奮発して思わずIMAX鑑賞なのだ
そういえば今夏、アベンジャーズシリーズの「ブラック・ウィドウ」の劇場公開が中止となった。アメリカでディズニー社が劇場とネット配信を同時公開し興行収入が激減、主役のスカーレット・ヨハンセンが損害賠償訴訟を起こす事態となった。これを受けて、日本の大手シネコンもデイズニー社に反旗を翻した訳だ。コロナ禍という特異な状況下で多くの人に鑑賞させたいディズニー社の意図も理解できるし、青色吐息のシネコン側の反発も分かる。ただ、個人的な趣向からすれば、あのヨハンセンのムチムチボディは大スクリーンで観なければ興奮しないので、劇場公開して欲しかった。映画業界の苦境を慮り、双方の冷静な協議が必要だったと思う。結局、熱心なファンを失っては元も苦もないのだ。『映画』として作られた作品はスクリーンでこそ、その価値が伝わる。スマホで見られる韓流ドラマとは違うのである。
前書きが長くなったが、だからこそ今作はIMAXの大迫力で一際輝くのだ
諜報(ちょうほう)員の仕事から離れて、リタイア後の生活の場をジャマイカに移した007ことジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、平穏な毎日を過ごしていた。ある日、旧友のCIAエージェント、フェリックス・ライターが訪ねてくる。彼から誘拐された科学者の救出を頼まれたボンドは、そのミッションを引き受ける。(シネマトゥデイより)
ダニエル・クレイグがジェームス・ボンド役となって通算5作目、すでに16年の月日が経過している。役者本人も53歳となった。その老兵ダニエル・ボンドの集大成を思わせる構成と過去のシリーズとは異質の感慨が駆け巡る大作である。
ファンの方なら承知の通り、007シリーズとして25作目であるが、ダニエル主演の5作のストーリーは完全に時系列で繋がっている。この新作鑑賞後にネット配信で過去4作を改めて視聴したのだが、ダニエル・ボンドの多分?最終作に感慨もひとしおとなった
雪に覆われた湖畔の家に能面を被った男が母娘を襲うジェイソンばりのオープニングと思いきや、これがマドレーヌ・スワンの幼少期の隠された過去だと判る。前作からの延長で、MI6を引退したジェームスは恋人となったマドレーヌとイタリアのマテーラを訪れていた。ジェームスは初めて愛した女・ジャスパーの墓参りをし、永らく引きずっていた気持ちにケジメをつけて、マドレーヌとの新生活をスタートする決意だった。だが、ヴェスパーの墓碑は爆破され、ジェームスは正体不明の刺客達に命を狙われる。石畳でのカーチェイス、橋上からのダイブ、愛車アストンマーチンの回転マシンガン乱射など、007ファン垂涎のアクションシーンの連続に頬が緩む。ジェームスは、元スペクター幹部を父に持つマドレーヌの裏切りだと確信し、彼女を長距離列車に乗せ別れを告げるのであった。そして5年の歳月が経過した...
この導入部で007を取り巻く状況を理解するには、せめて前作「スペクター」と1作目「カジノロワイヤル」を鑑賞していないと厳しいかも。「いい女は抱いても惚れない」歴代007の常識を覆し、敵スパイ・ヴェスパーを愛してしまったジェームス。目の前で彼女を失うのだが、ヴェスパーを裏で操っていたのが悪の組織「スペクター」幹部のミスター・ホワイト〜マドレーヌの父である。その後、スペクターを裏切ったホワイトは、娘の保護を条件に組織の秘密をジェームスに打ち明け自死する。そして以前にホワイトが惨殺した家族の生き残りが冒頭に現われた「能面の男」だ。復讐に燃える男はホワイトの留守宅を襲い、母親と幼少のマドレーヌに銃口を向けるのだった・・・と複雑な人間関係なのだが、マドレーヌ役レア・セドゥの魅力とダニエル・クレイグの男気だけでも十分成立する第5作目でもあるのだ
小生にとってなにはともあれレア・セドゥだ
生粋のパリジェンヌ、女盛りの36歳だ。10年程前から話題作のチョイ役で出演しており、ずっと気になる女優だった。同じスパイ映画のM:I4作目(2011年)では、刺客役となってドバイの高層ビルから見事な転落死を遂げたが、圧巻は「アデル、ブルーは熱い色(2013年)」での艶技だった。女性同士の純愛映画だが、自由奔放な芸術家を大胆な性描写含めて繊細に演じた。男に全く媚びない冷たい視線が好きだ。青い瞳の輝き一つで感情を表現できる女優だ。水着やハイレグが似合うモデル体型ではないが、女性独特の柔らかな色気が身体中から溢れてくる。歴代ボンドガールの傾向からは一線を画した魅力なのだ。今作でもCIAの新人諜報部員パルマ役のアナ・デ・アルマスの方がエロチック度では格上なのだが、007同様小生の好みはレア・セドゥ嬢である
気儘な隠遁生活を続けるジェームスの前に親友でもあるCIAのフィリックス(ジェフリー・ライト)が現れる。誘拐された細菌兵器学者の救出を持ちかけられ、友人として協力するが、CIA内部の裏切りによりフィリックスは命を落とす。彼は友人の無念を晴らす為、MI6復帰に向けロンドンのMに会いに行く。懐かしのメンバーそろい踏みだ。M(レイフ・ファインズ)、マネー・ペニー(ナオミ・ハリス)、Q(ベン・ウィショー)そしてジェームスの後任になっていた新007のノーミ(ラシャーナ・リンチ)だ。彼らが集結するだけで嬉しくなる。
ノーミの自己紹介「貴方の後任007よ、傷ついた?永久欠番と思っていたの」に苦笑するジェームスが可愛い。MI6はDNAを利用した細菌兵器を手にした組織を追う。スペクターとも敵対している謎の組織を知る為、ジェームスは拘束中のスペクター総統ブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)と面会する為、5年ぶりにマドレーヌと再会する。既に彼女は能面の男・サフィン(ラミ・マレック)に脅迫されており、仕込まれた細菌兵器によりブロフェルドまで面会中に殺害してしまうのだ。マドレーヌへの疑惑が更に深まるジェームスは彼女の自宅に押しかけるが、そこには5歳になる彼女の娘が居た。ジェームスと同じ青い目をしたマチルダが...
007シリーズ60年の歴史の中でも異質の「愛に溢れた」ジェームス・ボンドの最終章である。サフィンの秘密基地に拉致されたマドレーヌ母娘の救出に向かう新旧007の二人。命を賭して愛する者を救い、かつ使命に殉じるジェームスの姿は、これこそお涙頂戴アルマケドンの王道エンディングではないか 完全無欠不死身の007の伝説が崩れた時、ダニエル・クレイグはジェームス・ボンドと決別する。ジェームスに降り注ぐミサイルの嵐は、シリーズを全うしたダニエル・クレイグへの慰労と次の門出への祝砲に見えてしまうのだった。
新進気鋭のC・J・フクオカ監督が、過去作とも遜色の無い演出で無事ラスト作を飾った。当初起用予定だった小生お気にりのダニー・ボイル&ジョン・ホッジのコンビであれば更に斬新な切り口を観せてくれかもしれぬが、致し方も無いところだ。ルイ・アームストロングとビリー・アイリッシュの新旧カリスマの歌う挿入歌が胸に沁みる。
『James Bond will Return』のテロップがエンドクレジットで現れる。次回作の新007は果たして誰か?今作のラシャーナ・リンチがそのまま居座るのはハードルが高いし、ジェームスの一粒種のマチルダが成人するにはあと15年かかる。ただ、スターウォーズも最期は女性を起用したし、「多様性と調和」が求められる現代において既存の007像を追い求めてはいけないのかもしれない。まさか、007は死んでいなかったでは、ダニエル・クレイグもやりにくかろう。老体に鞭打つのは、我が世代のヒーロー、トム・クルーズ様に任せれば良い。『M:I7』公開決定、『M:I8』製作中。こちらも楽しみであ〜る
ダニエル・ボンド16年の奇跡を振り返る
抑え気味な…? 熱いレビュー拝読させていただきました。w
“ネット配信で過去4作を改めて視聴” ですか~ 流石つむじかぜ さん♪
私めも いつかはやってみたいですけど、体力が~ぁ orz
いずれにしましても、レア・セドゥ心行くまでご堪能されて何よりでございます。w
by Labyrinth (2021-10-13 01:08)
007一昨日 観てきました。
あの氷の張りついた湖で泳ぐシーンから ハラハラドキドキでした。
最後 うさちゃんとボンドは 逝っちゃったの?
(つд⊂)エーン
by ゆうみ (2021-10-13 21:10)
> Labyrinth 樣
レア・セドゥとナオミ・ハリスの次回作での出演を心から望んでおります^^
by つむじかぜ (2021-10-14 01:27)
> ゆうみ 様
奇跡的に生き残って家族3人で幸せに暮らして欲しいです。でも現役復帰はダメですな。新しい007登場に期待です!
by つむじかぜ (2021-10-14 01:33)
007の新作、待ちに待った封切でした。つむじかぜさんのブログを拝見して、また観に行きたくなりました。
by yuzman1953 (2021-10-14 04:42)
> yuzman1953 様
心持ちにするシリーズ映画は非常に貴重ですね。役者が変わっても永遠に続いて欲しいです^^
by つむじかぜ (2021-10-16 01:03)