SSブログ

『コーダ あいのうた』 [上映中飲食禁止]

210812codamovie1.jpg

とある海辺の町。耳の不自由な家族の中で唯一耳が聞こえる女子高生のルビー(エミリア・ジョーンズ)は、幼少期からさまざまな場面で家族のコミュニケーションを手助けし、家業の漁業も毎日手伝っていた。新学期、彼女はひそかに憧れる同級生のマイルズと同じ合唱クラブに入り、顧問の教師から歌の才能を見いだされる。名門音楽大学の受験を勧められるルビーだったが、彼女の歌声が聞こえない両親から反対されてしまう。ルビーは夢を追うよりも家族を支えることを決めるが、あるとき父が思いがけず娘の才能に気付く。(シネマトゥデイより)

  主人公が高らかに歌い上げる
       ジョニ・ミッチェル「both sides now」に胸が熱くなる[黒ハート][黒ハート][黒ハート]

ホッコリと心温まる青春ドラマの秀作である。体裁は下半身ネタ満載の少々下品なコメディ仕立てだ。放送禁止用語連発につき字幕製作者の苦労が偲ばれるほどだ。だが、ストーリーの骨格は、聾唖の家族に囲まれた女子高生が自分の夢と家族の幸福の狭間で葛藤しながら大人の階段を登って行く成長ドラマだ。一風変わった4人家族が障害者差別と戦いながら、本当の家族の絆を再発見して行く過程が数々の名曲をバックに丁寧に描かれていく。

主演ルビー役のエミリア・ジョーンズは若干19歳。溌剌した演技と深い歌心が好印象だ。両親と兄は聾唖者で、家族で唯一の健聴者であるルビーが家族を支えていると言って過言では無い。家族の為にずっと漁師として働く事に疑問を感じなかった自分が、違う将来の可能性を発見し戸惑う姿を、まさしく等身大の今時の女子高生として演じた。

coda-1.jpg

ぶっ飛んでいる両親役にトロイ・コッツァーとマーリー・マトリンだ。精力絶倫
夫婦は常にユーモラスで聾唖というハンディを表面上は感じさせない。深い疎外感と焦燥感を胸の奥深くに隠したままに。

troy-kotsur-coda-marlee-matlin.jpg

マーリー・マトリン・・・聞き覚えがあった気がしていたのだが、、彼女は傑作「愛は静けさの中に(1986年)」の主演でオスカーを受賞した女優と同一人物ではないか[ひらめき] 実際の聴覚障害者でもあり、オスカー受賞は当時の話題にもなった。小生お気に入りの映画で、レンタルビデオで何度も彼女の凛とした美しさに打ち震えた記憶があった。それにしても...36年の歳月の残酷さを感じてしまう...我が愚妻の方が若く見えてしまう[がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)]

EFwfrWLWwAA7uNM.jpg

「娘さんには類まれな歌の才能があるので、バークレー音楽院を受けさせたい」と音楽の先生から伝えられても、耳が聴こえない両親は実感が無く、信じる事が出来ない。当然だが、家族全員がルビーの歌声を聞いた事はないのだ。それよりも、彼女が家を出て仕事を手伝わねば、聾唖者3人での社会生活は困難になるのは目に見えている。今までルビーが健聴者達との意思疎通を当たり前のようにしていた日常が崩れる事に家族達は悩み苦しむ。

ここから今まで平穏だった家族達の本音の衝突が起こり、物語は佳境に突入する。これまた精力絶倫の兄は「お前に甘えるている自分に腹が立つ。早く家を出て行け!」と、ルビーを敢えてつき離す。母ジャッキーは「貴方が生まれた時に健聴者だと聞いて失望したの。だって娘と分かち合えないと思ったから」と、ずっと抱えていた思いを吐露する。そして父フランクは、学園祭で聴衆から大喝采を浴びたルビーの歌声を無性に感じたくなり、一計を案じる。ネタばれは避けるが、フランクが娘の美声に気づく瞬間が今作の白眉である。劇中ほとんどが客観的な描写だが、要所で聴覚障害者サイドの無音でのシーンが挿入される。ルビー家族の成長の物語と共に障害者差別という問題提起もサラリと織り込む演出効果が見事だ。

家族の思いがひとつとなり、ルビーはバークレー音大の試験に向かう。試験会場に忍び込んだ家族に気づいた彼女は、歌唱実技中に手話を交えて美声を披露するのだった...

「both sides now」〜「青春の光と影」〜人生の摩訶不思議さを美しく綴った詩がルビーの熱唱と手話で表現されたシーンに胸ときめかない者がいるのだろうか。あまり話題になっていないようだが、美しき名作[ぴかぴか(新しい)]

父フランクはヒップホップ好きだ。聴力が無くとも大音量での低音の響きが尻に心地良いからだと云う。そう、音楽って耳では無く心と身体で感じるものなのだ[どんっ(衝撃)][どんっ(衝撃)][どんっ(衝撃)]




nice!(25)  コメント(4) 
共通テーマ:映画

nice! 25

コメント 4

Labyrinth

私めも先日拝見♪
フランスの「エール!」も好みでしたので、興味津々でした。( ´艸`)
ん?気付いたら涙腺がぁぁぁ という映画でしたね。(汗)
“美しき名作” 仰る通りかと…!
by Labyrinth (2022-02-05 10:37) 

JUNKO

私も見ました。お母さん役、彼女でしたか。気が付きませんでした。あの時手話の美しさを感じて少し覚えてみみようと思いました。今はほとんど忘れていますが。
by JUNKO (2022-02-05 19:59) 

つむじかぜ

> Labyrinth 様
仰る通り、甘く見ていると一気に涙腺をやられてしまう作品でした^^
by つむじかぜ (2022-02-06 02:22) 

つむじかぜ

> JUNKO 様
実は小生も六十の手習いで手話を覚えようと思ったりしたのですが...
by つむじかぜ (2022-02-06 02:24)