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「アニャ・テイラー」に酔う [上映中飲食禁止]

久方ぶりに「ブロンド狂」を刺激させてくれた作品

ラストナイト・イン・ソーホー

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ファッションデザイナー志望のエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学するが、寮生活に向かず一人暮らしをすることに。新しいアパートで暮らし始めた彼女は、1960年代のソーホーにいる夢を見る。エロイーズは夢の中で、歌手を夢見るサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)と出会い、肉体的にも感覚的にも彼女と次第にシンクロしていく。(シネマトゥデイより)

小生のお気に入り「ベイビー・ドライバー(2017年)」のエドガー・ライト監督らしい映像と音楽に拘り抜いたサスペンス・ホラー映画だ。ホラー・ファンからは酷評の通り、正直、全く怖くない。だが、遊び心に溢れた映像作品として捉えると評価は大きく変わる。エドガー・ライトの類稀なる感性に脱帽である。

60年代マニアで霊感の強い女の子・エロイーズがロンドンのデザイン学校に入学する場面から物語が始まる。隠れた傑作「ジョジョ・ラビット(2019年)」の壁の中に住むユダヤ系少女役での存在感が記憶に新しいトーマシン・マッケンジーが、田舎育ち丸出しの少女が都会に出て覚醒したように美しく変貌する姿を好演した。劇中、彼女が突然、髪をブロンドに染めてからは一気にスクリーンに引き込まれた。そして彼女の夢の中に登場するアニャ・テイラー=ジョイという女優に魅力に身も心も蕩けてしまったのである[揺れるハート][揺れるハート][揺れるハート]

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派手派手しい顔立ちは元来苦手な小生だが、ここまで個性的だとマイナスに振れていたた感性メーターが逆回転に振り切れてレッドゾーン突入なのだ[どんっ(衝撃)]久々の大当たりじゃ[パンチ]

毎晩エロイーズの夢に現れる謎のブロンド美女は、1960年代のソーホー街の有名キャバレーで歌手を目指すサンディだ。トッププロを目指す彼女に好意を抱いたエロイーズは、夢の中で俯瞰しながら応援する。だが、マネージャーのジャックに騙され続けたサンディは下働きのストリップダンサーの域を出ず、酔客相手の売春まで強要されて行く。そしてエロイーズは、知らぬ間にサンディ自身と同期している自分に気づくのであった。

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荒んでいくサンディはジャックに抵抗するのも束の間、喉を掻き切られ絶命する。その場所はまさしく、今、エロイーズが住んでいる部屋だった。彼女は精神異常と疑われながらも、半世紀以上前の殺人事件の真相を掴もうと奔走するのだが...

最後はドンデン返しの驚愕のホラーシーンなのだが、前述の通り恐怖レベルは非常に低い。それでも小生は大満足なのである。60年代のソーホーを煌びやかに再現した装飾とオールデイズをバックに歌い踊るバービー人形が如くブロンド美女が、徐々に正気を失って行く様に胸を焦がす。

何はともあれ[黒ハート]アニャ・テイラー嬢[黒ハート]に一目惚れの小生は、後日、配信動画での連続TVドラマの中で彼女と再会する。
netflixを契約したまま嫁に行った長女に感謝なのだ[わーい(嬉しい顔)]

[ぴかぴか(新しい)]1年前の海外ドラマだが絶品[ぴかぴか(新しい)]
『クィーンズ・ギャンビット』
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海外の連ドラには興味の無かった小生だが、長女オススメの「愛の不時着」を一気見して以来、映画館至上主義という妙な拘りを捨てた。映画でもTVドラマでも素晴らしいものには感動するのだ。特にnetflixオリジナルには、単品映画以上に丁寧に作り込まれた作品が散見される。エミー賞を獲得した当作は、アカデミー脚本賞に2度ノミネートされたスコット・フランクが指揮を執り、脚本・演出・美術・音楽全てにおいて極上の仕上がりとなっている。そして今作の最大の魅力が、主演アニャ・テイラーの美貌と演技力なのだ。

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孤児院で育った少女がチェスの魅力に取り憑かれ、15年後にソビエトの無敗の世界王者に挑戦するまでを描いた全7話の物語。主人公ハーモン役のアニャ・テイラーは、今作では残念ながらブロンドを封印して赤毛に染めているが、その美貌には何の影響もない。第1話では少女時代を個性的な子役が熱演し、アニャは14歳となって養子に引き取られる第2話からの登場だ。

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時代背景は1950~60年代の米ソ冷戦時代であり、欧米社会にはまだまだ女性蔑視が根深く残り、チェスのプロトーナメントは男だけの戦場だった。そんな男性社会に、天賦の才と桁外れの闘争心を併せ持った一人の少女が立ち向かう。周りから好奇の目で見られながら、米国内の地方トーナメントで男どもをバッタバッタとなぎ倒して行くのだ。この過程は、貧乏な主人公が恵まれたライバル達を打ち負かして行く日本のスポ根漫画にも共通する小気味よさだ。だが、このドラマが優れているのは、少女の成長を輝くスーパーヒロインのように一辺倒には描かない。孤独な戦いの連続から薬物とアルコールに溺れ、愛を捧げる男達をボロ雑巾のように捨て去り、世界チャンピオン打倒のみに命を賭すダークヒロインの位置付けだ。『類稀なる才能を持った者は、その代償を支払う事になる』少女から大人の女性へ、名声を手入れる毎に心の闇に落ちるハーモンの外見は危うげな美しさと気品に溢れて行く。

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映画「ラストナイト・イン・ソーホー」では見られなかったアニャ・テイラーの演技力の幅の広さが堪能でき、60年代のファッションショーから抜き出たような彼女の容姿にも目が離せない。目力一つで聖女にも悪女にもなれ、常に気品は失わない往年のハリウッド女優を彷彿させる存在感は、最近の洋画界では稀有だ。

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終盤では、唯一の理解者であった継母が急死し、自宅を失いかけ、精神的にも経済的にもドン底に陥った時に、世界戦へのチャンスが訪れる。そんな時、音信不通だった孤児院時代の親友が現れ、ハーモンにチェスを教えた用務員のおじさんの逝去を知らせる。久しぶりに孤児院に立ち寄った彼女は幼少期からの思い出を振り返り、今まで見て見ぬ振りをしてきた他人からの愛の大きさに気づく。そして、自ら遠ざけていた友人や捨てた恋人達の協力を得て、ハーモンはモスクワの世界大会に出場し、ついに決勝戦で王者ボルコフと世界一を賭けての戦いに臨むのだった...

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男性目線で女性心理が描かれた脚本だが、文学的な香りを残しつつ繊細でありテンポが小気味よい。アニャを取り囲む共演陣も魅力たっぷりだ。ハーモンの対戦相手が皆個性的でゲームをリアルに見せる。特筆は継母役のマリエル・ヘラーで、精神を病みながらも娘を愛し支え、女性の弱さを恥ずかしげも無く曝け出した演技は素晴らしく、そんな母の姿に抗いながらも闇に落ちて行くハーモンの苦悩が際立った。孤独な戦いを永きに亘り自らに強いてきたハーモンが、かつての友人達の力を得て、世界一決定戦で見せる逞しく清々しい戦いぶりに胸が熱くなる。決して彼女は、ひとりきりではなかったのだ。長丁場の連続ドラマならではの、緻密な人間関係の描写の積み重ねの賜物だと思う。時代考証にも手抜かりは無く、大枚叩いた大掛かりなセットを作らずとも、古い建物やホテルを上手く利用し、60年代の雰囲気を見事に再現している。

海外連ドラを侮るなかれ[exclamation×2] 
粗製乱造の風潮も否定はできぬが、こんな傑作に巡りあえてしまうので、未だ睡眠時間の足らぬ日々が続く。本作のような全7話完結がちょうど良いな。下手にシリーズ化しての「シーズンXX」みたいのだけは御免被りたい所だけど。
まずはアニャ・テイラー=ジョイに出会えた幸運に感謝、感謝なのだ[わーい(嬉しい顔)]彼女の次回作への期待が否応なしに膨らむ。

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Labyrinth

この活き活きとした筆の冴えはっ いよいよ完全復活でいらっしゃいますね♪ ( ´艸`) ヨカッタ~
若手2女優の競演は、私めもときめきましたよ…!(笑)
by Labyrinth (2022-02-02 19:17) 

つむじかぜ

> Labyrinth 様
おかげさまで完全復活です!
マンボー自粛でも楽しんでおりまする^^
by つむじかぜ (2022-02-04 02:20)