『ビリー・アイリッシュ』に向き合う [歌姫列伝]
日本人の洋楽離れが顕著らしい...
2020年の世界の音楽市場は6年連続のプラスとなり、コロナ禍の中で力強い音楽の力を示した。成長を牽引したのはストリーミング配信でああり、全体の62%に及んだ。日本はアメリカにつぎ世界第2位の売上を誇る。但し、国別トップ10の中で唯一のマイナス成長だ。他国と比較しストリーミング売上が伸び悩み、CD・レコードなどのフィジカル音楽売上が着実に減少しているからだ。そして国内売上の邦楽・洋楽の構成比は10:90だ。20年前は何とか30%だった洋楽も今や風前の灯火である。最近巷に流れる音楽の大半は洒落たJPOPだ。70年代の洋楽ロック育ちの小生としては寂しい限りなのだが、最近のJPOPは確かに聴きやすい。楽器が皆滅茶苦茶上手いし、メロディーもキャッチーなものが多い。TVの歌番組は減ったが、ドラマ・映画・CMの挿入歌とネットでのMV露出は強力であり、庶民の購買欲をそそるには十分だ。ランキング上位の楽曲を一聴すると、スタイル・ジャンルは多様化しているが、多くが日本語の詩を大事にし、メロディーは日本人が歌謡曲で馴染んだコード進行が多いようだ。国内音楽業界がハイスペックな歌謡曲路線に回帰し国内アーチストの売り込みに特化するあまり、世界の潮流とは逆行したガラパゴス化が進んでいる気がする。何時から日本人は洋楽への憧れを失ったのだろう?世界のトップチャートとは全く異なる日本のチャートを見るにつけ愕然とする。そんな歌謡曲を毛嫌いした元ロック少年の小生ではあるのだが、直近の世界のヒットチャートTOP10のうち知るアーチストは何とBTSだけだった気が付けば、小生が今聴く洋楽は10年以上前の「クラシックロック」ばかりではないか。知らぬ間に俺も日本のレコード業界に洗脳されているのか いかん、いかん、慣れた音楽に身を浸すのは老化の前兆じゃ
...そう言う訳で唐突に「ビリー・アイリッシュ」に挑戦するのだ。世界を震撼させたティーンエイジャーの最先端の音楽を還暦爺いは理解できるであろうか
昨年初に2019年発売のデビューアルバムをアナログレコードで購入。
When We All Fall Asleep.. [12 inch Analog]
- アーティスト: Eilish, Billie
- 出版社/メーカー: Universal
- 発売日: 2019/03/28
- メディア: LP Record
針を下ろす...衝撃より先に戸惑いがやって来た。囁くようなヴォーカル、聞き慣れないDTM、やたらと低域を強調したビート音が迫って来る。自分が親しんだギターの唸りやキレの良いドラムは皆無だ。ノリは良いが、重い。多チャンネルを利用せず、少ない音数で表現する独特の音楽作りにいまだかつてない感性を感じるが、アルバム全体を通して押し寄せるダークな印象は小生の嗜好には合わなかった。グラミー賞5部門を受賞した〜全米で大衆受けした理由が解せなかった。英語の歌詞の理解不足、彼女のSSW以外の魅力を知らない面を差し引いても、音楽的傾向は自分とは違うような気がした。アルバムは2回聴いてほぼお蔵入りとなったのだが...
だが昨年夏に発売された彼女の2ndアルバムが前作以上に評判が良すぎるので、懲りもせず駄目元で買ってしまうのだった
なんて素敵な音楽・・・病みつきになった
前作に比べて遥かに楽曲の彩りが違うのだ。まずビリーの生声が全面に押し出され、彼女が稀有な歌唱力と表現力を併せ持つシンガーである事を初めて認識した。そして低音重視のDTMを基調にしつつ、ギターやドラムのアナログ楽器が多く使用され(前作はベースが主体)、人間の温もりを感じるサウンドに仕上げっている。プロデューサー兼マルチミュージシャンである実兄フィニアス・オコネルの卓越したセンスも華開いた印象だ。歌詞はほとんどがビリー自身の極めて私的な内容に基づいている。瞬く間にスターに押し上げられたティーンエイジャーの悩める感情が精緻な言葉で表現されており、それが年代を超えて多くの人々の経験則と絡まり共感を呼んでいるようだ。
この曲は、DVの傾向があった元カレへの想いを歌っているが、聴き方によっては前トランプ政権を揶揄する内容にも受け取れるのだ。それにしてもアコギ1本がバックだとビリーの染み込むような歌声と表現力が更に際立つ。絶唱などせずにここまで心に沁みる歌声は稀有だ妹をサラリとサポートする兄の姿が何だか微笑ましい。
アルバム製作は二人の兄妹の共作であり、特に各曲の豊かな彩りは兄フィニアスの力に拠るところが大きいのだが、三歩下がって敢えて妹ビリーに脚光が浴びるように演出する兄の偉大さに敬服だ。70年代を席巻したカーペンターズのリチャード・カレンの兄妹を彷彿させる...と、唐突に50年前に遡ったりして...
名曲『Close To You』LIVE
歌詞の意味が良く分からんでも、時代を超えてやっぱり洋楽は素晴らしい
では改めて今世紀最強の兄妹バンドの熱狂のステージを
では改めて今世紀最強の兄妹バンドの熱狂のステージを
彼らにしては珍しいドラマチックな展開の曲
今後の二人の進化が楽しみで仕方ない
私もyoutubeで古い音楽を探してばかりいて、
新しいものは
中々受け付けられない自分に「いかんいかん」と思っては
いるのですが^^;
「老化の前兆」・・・
そっかぁ、新しいものを受け入れる力を
持たないとダメですね^^
by 青山実花 (2022-02-16 06:20)
> 青山実花 様
小生は、いまだ若い娘が好きな事が原動力のようですが...^^;
by つむじかぜ (2022-02-19 01:50)