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今荘【うなぎ・神保町】 [江戸グルメ応援歌]

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威容を放つ外観に惹かれ、一度は伺いたいと思っていた鰻屋さんだ。平日ランチタイムのみの営業の為、小生の勤務地からさほど遠くもないのだが意外と機会が無かった。ようやく、余裕のある昼間に地下鉄に乗って3駅で辿り着いた。

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今荘・・・明治30年創業。現在の建物は昭和8年の竣工である。独自の和洋折衷のデザインで、唐破風(玄関部分)と千鳥破風(上層部)が混在した意匠で中間の丸窓が不思議なアクセントになっている。創業当初は牛鍋店だったが、昭和50年代にうなぎ専門店に転身したらしい。その時期は小生がこの街を徘徊していた学生時代にあたるが、残念ながら記憶には無い。当時の私には、鰻もすき焼きも高嶺の花だし、今ほど古い建物にも興味が無かった。朽ち果てかけた木製の看板は創業当時の一世紀越えの代物とみた[目]

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12時ちょうどに入店、外観から想像した通りの「昭和の食堂」風景だ。厨房を囲んだL字カウンター席と大座敷にテーブル席が8卓だが、コロナ仕様の一席空けルールによりMAX20名収容だろうか、満席だったが10分ほどでカウンター席に案内された。年配女性2名と職人1名の少数精鋭の体制で切り盛りしている。お品書きは1点〜うな重3,500円のみで、希望のご飯の量だけ伝えれば良いという、なんと潔い商売[exclamation×2]
小生より一回り上と見える女性コンビの動きが小気味良い。注文聞きからお重へのご飯詰め、吸い物作り、配膳・片付け・会計全てをこなす。焼き場は2人前しか同時に焼けない広さのようで、蒸し方・焼型を一人でこなす職人さんも大忙しだ。しきりと仕込んだ鰻串の数を確認し、残数を女性に伝えている。当日は小生の後に並んだ5人で売り切れ御免と相なった。1日に決めた仕込み以上は調理しない方針らしく、人気店ゆえもっと稼げるはずなのに無理をしない。女性陣の年齢を考慮すれば現実的でもあり、江戸っ子らしい割り切り方というべきか。そして幸運にも初訪問でありつけた鰻重の味は...

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江戸のうなぎじゃ〜[わーい(嬉しい顔)] そして懐かしい昔の鰻重の味がする。今ほど鰻が高額では無かった幼少の時代、それでも年に一度くらいしか家族では食べられなかった憧れの味が蘇った。そう、普通に美味しい鰻重なのだ。入手困難な食材を使用したり、職人の巧みな技が窺える訳ではない。米も特別に拘っていない。適度な柔らかさの蒸し加減が甘すぎないタレと調和して川魚本来の鰻の風味を引き出す。とにかくこのテリ加減を見れば、江戸っ子には十分過ぎるのだ。お吸い物もしっかり「肝吸い」であり、一品メニューの鰻屋の心意気を感じる。今のままマイペースで末長く商売を続けて欲しい店だ。働き者の顔ぶれと戦前の香り残す建物と共に。
高コスパの店を見つけたとはいえ、やはり鰻は頻繁に食せる金額の料理では無い。でも月1は食いテェな〜。普段の昼飯は立ち食い蕎麦でいいから...[ぴかぴか(新しい)]




マンボー終了から1ヶ月近く経過し感染再爆発の足音がヒタヒタと忍び寄る中、東京の外食業界は少しづつ息を吹き返している。今までは一部の有名店のランチタイムのみにグルメ達が殺到する傾向だったが、最近は夜の帳が下りれば多くの一般酔客で繁華街は賑わいを取り戻している。着なれないスーツ姿の新入社員と思しき若者達が酔い潰れている光景は、昨春には全く見られなかった。少しづつ「日常」が戻ってきているのかと感じつつ、果たして「日常」とはなんぞやと我に帰る。マスク姿でパーティションに囲まれた会食だろうと十分に「平和な日常」ではないか。東欧の戦火のニュースに触れ、「日常」を奪われる悲惨さを知る。日本人であることの幸せを感じつつ、迫害が続く遥か異国の人々に対して全く無力な自分に苛立つ今日この頃である。



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JUNKO

ウナギはこういう風格のあるお店でいただきたいですね。生唾ごっくんです。
by JUNKO (2022-04-16 17:07) 

つむじかぜ

> JUNKO 様
歴史はあるけど内部は庶民的な理想的なお店です。
やっぱり鰻はやめられませんね^^
by つむじかぜ (2022-04-23 19:18)