国立西洋美術館〜ピカソとその時代〜 [寫眞歳時記]
夜の美術館が好きだ。
閉館間際の閑散とした雰囲気での鑑賞はお気に入りの絵画を僅かな時間でも独り占めした気分になれる。夜の静けさが館内にも染み渡り作者の筆遣いまでもが聞こえてきそうだ。などと高尚な事を言うが、単に人気展覧会の大混雑が苦手なだけなのだが。
久方ぶりに上野の『国立西洋美術館』に行ってきた。ここは通常は17時30分閉館だが、金・土曜日のみ20時までなのだ。夕刻、帰宅を急ぐで人々でごった返す上野駅の人混みに逆行して上野の森に向かう。
久方ぶりに上野の『国立西洋美術館』に行ってきた。ここは通常は17時30分閉館だが、金・土曜日のみ20時までなのだ。夕刻、帰宅を急ぐで人々でごった返す上野駅の人混みに逆行して上野の森に向かう。
国立西洋美術館といえば、国内随一の西洋美術品の宝庫であるのは間違いないが、その建物自体が近代美術の偉大な足跡を記す建築物である。ル・コルビジェの設計により1959年に竣工した当館は、その後の日本人建築家に多大な影響を与えたと云われている。
今回は、ベルクグリューン美術館所蔵の日本未公開作品と共に、世界的建築家の偉業も堪能してきた。
陽が落ちるまで、普段なら通り過ぎる前庭をじっくり散策する。何度かリニューアルされた美術館だが、今春には前庭もコルビジェ設計当時の形に復元された。以前はこんもりとした植栽が庭の中心で目立っていたが、今回は僅かな面積に縮小し、庭園内の彫刻の位置や床の目地も設計者の当初の意図通りに変更された。来場者の動線と視線を考慮した配置らしく、確かに本館自体と彫刻の存在感が際立ち、まるで美術館そのものが両手を広げて来場者を歓迎しているようだ。隣の東京文化会館(こちらも古い建築だが)も全体が見渡せ、夕陽に美しく映える。
入口から地下1階に下り、企画展から鑑賞する。ピカソのみならずクレー、マティス、ブラックら同世代の作家の作品が並ぶ。昔の国内の美術館は写真撮影・模写厳禁だったが、最近ようやくその頑なな姿勢も緩やかとなり欧州並みになってきた。嬉しい限りだ、とはいえマナー違反にはならぬようサイレントモードで周りを注意しながらシャッターを切る。
ジャコメッティ(彫刻)とピカソ2点
緑色のマニュキュアをつけたドラ・マール(ピカソ)
絵の具の凹凸にピカソの息遣いを感じる
こんなマティスの作品もお気に入り
今回は日本未公開作品が多く、会場内をゆっくり2往復して素敵な出会いを堪能した。そして常設展に移動する。本館の核となるこの展示室は「19世紀ホール」と呼ばれ、コルビジェの真価に触れることが出来る。展示室の入口に足を踏み入れた途端、3階までの吹き抜けと円柱に圧倒される。そして各階のギャラリーがこのホールを取り囲むように複雑に配置されている。