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ファジル・サイ「ゴルドベルク変奏曲」を聴く [上映中飲食禁止]

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中学生時に私を洋楽ロックの世界に惹き込んだ親友Sと久しぶりの音楽鑑賞の予定だったが、微熱と喉の痛みを訴えた彼は直前に断念、小生独りで地元・錦糸町トリフォニーホールに行くことに...代打の切り札奥様はお茶会に出掛け早々に戦線離脱であった[あせあせ(飛び散る汗)]

中学卒業以来、Sとはその後の進路は別々であったが年に何度か飲み会兼ねてライブハウスに出掛けたものだった。やがて社会人になるとそれが2、3年に一度となり、5年に一度となるのだが、いつ会っても中二のロック小僧同士に戻れる不思議な関係なのだ。半世紀近くの付き合いの中で音楽の趣味もお互い変化していくが、その時々の自分のおすすめを披露しながら刺激しあうのも楽しみだ。

『ゴルドベルク変奏曲』は8年前に私の亡くなった父の仏前に焼香に来てくれた時に「これ、いいぞ」と、持ってきてくれたCDで知った。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル録音)

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル録音)

  • アーティスト: グレン・グールド
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2020/11/25
  • メディア: CD
二人ともロック・ジャズにはある程度精通していたが、唐突にSがクラシックピアノの作品を薦めるのには驚いた。だが聴けば納得した。歴史的ピアニストグレン・グールドの弾くバッハは慣れ親しんだフリージャズの世界観と似ていた。アドリブは無くとも、鍵盤の静かな響きに演者の魂を感じる。ピアノソロの作品では、キース・ジャレット「ケルン・コンサート」以来の衝撃を受けた。
そんな昔の前段があって、今回小生が見つけたコンサートなのである。グレン・グールド亡き後、このバッハの難曲に挑むのは、トルコ出身の奇才ファジル・サイだ。小生は楽譜も読めないクラシック素人だが、譜面通りの優秀な演奏とは一線を画した彼の演奏に高い精神性を感じざるを得ない。



聞き親しんだトルコ行進曲が彼のアレンジで生まれ変わる。身体を揺り動かし、口ずさみながらの演奏スタイルは破天荒なジャズピアニストと見まごう。
隣の空席に少々寂しさを感じながら、演奏会は始まった。一聴してCDのグールドとは違うのは明白だが、彼の生み出す響きのなんと味わい深いこと。倍音の美しさ、心地よいアクセント、ド迫力のピアニッシモ。自分の発した音を両手で包み込むようなジャスチャーを繰り返し、目線は観客と天空を交互に彷徨う。ピアノ1台なのに、ベースとドラムがいる錯覚に陥ってしまうほど私もリズムをとって体が自然と揺れる。



『ゴルドベルク変奏曲』休憩を挟んで『シューベルト・ピアノソナタ19番』魅惑の約2時間だった。アンコールの「ドビッシー・月の光」では不覚にも目頭が熱くなってしまった[たらーっ(汗)]まだまだ世界の著名なピアニストの地位には遠い存在のようだが、こんな素晴らしい音楽家がトルコに埋もれていたとは...墨田区民割引でS席3,500円はとんでも無いコスパの高さだ。考えれば、このピアニストに辿り着いたのは親友Sのおかげだ。コロナ陽性が判明した彼に早速、感動とお見舞いを伝えるメールを送るのであった、「今度は一緒に聴こうぜ[exclamation]」と。

バッハ:ゴルトベルク変奏曲 (日本語解説/日本語帯付)

バッハ:ゴルトベルク変奏曲 (日本語解説/日本語帯付)

  • 出版社/メーカー: Warner Music Japan = foreign music=
  • 発売日: 2022/10/13
  • メディア: CD

アンコールのドビッシー「月の光」

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