落葉の日比谷公園 [寫眞歳時記]
季節外れの暖気のお陰で関東の紅葉の寿命も延びたようだ。とはいえ暦の上では冬至を過ぎ、鈍足の冬将軍もそろそろ本気モードだ。週末の日比谷公園は今年最後の紅葉を楽しむ人々で賑わっていた。
有名な「首かけイチョウ」は完全に葉が落ちていた。明治34年の日比谷通り拡張工事で伐採の予定だったが、当時の公園設計責任者が「首にかけても移植する」と上層部に主張し、現在地に無事に移されたと伝わる樹齢400年の古木だ。後ろの建物は『松本楼』、明治36年の公園開園と同時にオープンした洋食レストランの先駆けだ。
都内の紅葉はイチョウの独壇場で黄色のみが織りなすグラデェーションが魅力だが、たまにモミジの紅色が混ざる場所に遭遇すると京都の寺院にいる気分になって嬉しい。鶴の噴水を擁する雲形池の周りは、まさにそんな場所だった。
東京のど真ん中でも秋の終わりを体感できる幸せに感謝する。都会のオアシスとは使い古された言葉だが、此処は明治から令和まで激動の首都で生き抜いた人々を癒やし続けた楽園なのかもしれない。公園内には市政会館、日比谷公会堂、野外音楽堂、日比谷図書文化館など歴史的建造物も多く、不肖カメラ爺いにとって常に憩いとトキメキを与えてくれる場所でもあるのだ。