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『ヒプノシス〜レコードジャケットの美学』 [上映中飲食禁止]

[るんるん]70年代ロックファン垂涎[るんるん]
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中2の時に初めて自分の小遣いで2枚のレコードを買った。

フォックストロット

フォックストロット

  • アーティスト: ジェネシス
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1995/11/29
  • メディア: CD
聖なる館<2014リマスター/デラックス・エディション>

聖なる館<2014リマスター/デラックス・エディション>

  • アーティスト: レッド・ツェッペリン
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2014/10/29
  • メディア: CD
洋楽ロックにハマり始めた頃合いに、唐突に父が小さなコンポステレオを購入したのだ。それまではラジカセでFM放送をこまめにエアチェック(もはや死語[あせあせ(飛び散る汗)])するか、高級コンポを持つ裕福な友人宅に上がり込んで豊富なLPを聴き漁っていたのだった。冬休みにお年玉を握り締めて友人と入った秋葉原の今は亡き「石丸電気・レコード館」の何と神々しいこと[exclamation×2]中学生が気楽にレコードなど買えない時代だ。当時の私がハマっていたバンドで、しかもいつも世話になっている友人のコレクションには無いレコードを探す。もちろん国内盤は高いので輸入盤狙いだ。悩みに悩んだが、最後の決め手は『ジャケ買い』だった。

2段目のLed Zeppelinの5theアルバムのジャケットは、全裸のブロンド少女達がオレンジ色の遺跡のような岩肌を登る幻想的な写真が使用されている。常識的な方なら眉をひそめるようなロリータ趣味全開のデザインに惹かれてしまう中学生だった自分に今更ながらほくそ笑んでしまう[あせあせ(飛び散る汗)]

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帰宅してアルバムを包んでいる薄いビニールをひっ剥がし、見開きの中ジャケットとご対面する。

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何かの神話を彷彿させるような壮大な世界観が、これから針を下ろし聴こえてくる音楽を予兆させてくれた。半世紀前の懐かしい思い出だ。こんな音楽体験は、手のひらサイズのCDやましてネット配信などでは得ることは出来ない。レコードジャケットが中身の音楽と共にアーチストの重要な芸術表現だった時代だ。

前置きが長くなり過ぎたが、このジャケットを製作したのが「ヒプシノス」というイギリスのアート集団であり、本作の主役である。60年代後半にストーム・トーガソンとオーブリー・パウエルの二人によって創立したデザイン会社「ヒプシノス」の長編ドキュメンタリーであり、当時の音楽に興味の無い人には全く無縁の映画だ。創業者の二人や当時のスタッフ、デザインを依頼したロックスター達のインタビューを通して、ヒプシノスの成功の軌跡を辿る構成だ。特にデビュー前からのピンク・フロイドとの交流話は新鮮だ。ドラッグ漬けのぶっ飛んだ若者達が既成概念を打ち破る斬新なアートを生み出した時代に羨望と哀愁を感じざるを得ない。ヒプシノスはそれまでは宣伝パッケージかアーチストのピンナップ程度だったレコードジャケットを独創的なデザインによって芸術の域まで引き上げた革命児なのである。彼らは、80年代前半までに一流アーチストのジャケットを200枚近く手がけ、時代の寵児となって行く。

大学生になる頃には私のLPコレクションも少しづつ増えていくが、特にブリティッシュ・ロック好きだった為に、知らずにヒプシノス製作のレコードが多く含まれていた。特にピンク・フロイドの一連の作品は、ジャケットの奇々怪界さと音楽の鮮烈さが混然となって当時の純真な青年を刺激した。

原子心母(1970年)
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狂気(1973年)
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炎(1975年)
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80年代初頭からコンパクトディスクの普及とミュージックビデオの席巻により、アナログレコードの衰退が始まり、同時にジャケット写真の重要性も薄れていく。ヒプシノスは1983年に倒産し、輝かしい70年代アートの伝説として当時のロック小僧達の脳裏にのみ深く焼き付いたのだった。そして今まさにアナログ復権ブームとなり、当時のオリジナルLPが若者たちの間で高値で取引される時代となっている。記憶の片隅に眠っていたヒプシノスが目を覚まし、特に我が国で停滞する洋楽に警鐘を鳴らす。挑戦と遊び心が無ければアートは進化しないと[どんっ(衝撃)]

映画レビューというより個人的な思い出話でした[ダッシュ(走り出すさま)]

Led Zeppelin「The Ocean」(1973年)
R・プラントのヘソ出しもJ・ペイジのパンタロンも70年代だなぁ[揺れるハート]

Pink Floyd「Money」(1973年)

映像は2024年にAI製作されたモノ
生身のアーチストとの戦いは始まっているのだ[がく~(落胆した顔)]


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「龍子記念館」からの [寫眞歳時記]

暫く改装中の為に休館だった「川端龍子記念館」がリニューアルオープンした情報を得て、大田区池上へ向かう。

川端龍子の作品は既知であり、流麗かつ豪快な作風は自分好みである。但し作者が男性だと知るのはつい最近なのだが[あせあせ(飛び散る汗)] 現在、精神科医・高橋龍太郎の現代美術コレクションとのコラボによる「ファンタジーの世界」展が開催されている。過日、東京都現代美術館の展覧会で日本屈指と云われる彼のコレクションに圧倒されたばかりだ。そして美術館に隣接している龍子公園内の旧宅とアトリエも一般開放されるのも魅力なのだ。

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ファンタジーと言ってもお花畑的な可愛いさ全開では無いのが現代美術[あせあせ(飛び散る汗)]アーチスト達のとめども無い想像力の発露に目を奪われ、胸を抉られる。常人の私などには辿り着けない領域だが、何歳になってもこんな刺激は好きだ。
隣の龍子公園には1日3回、係の方の引率付きで見学できる。旧宅は1938年に建造され、竹を多用した造作や広いアトリエ、空襲で崩壊した住宅部分を造成した「爆弾散華の池」に龍子の嗜好が汲み取れ、今でも彼の息遣いが感じられる。

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美術館の近くには池上本門寺があり、その参道入口付近に洒落た古民家カフェ「蓮月」がある。セルフサービスの割にメニュー料金高めが玉に瑕だが、場所柄と維持費を考慮すれば致し方ないか。雰囲気は抜群だ[ぴかぴか(新しい)]

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本門寺は何度かお参りしているので、本日は季節柄「池上梅園」に行ってみる[かわいい]この冬は寒すぎるのか、白梅は満開だが、いまだに紅梅は六分咲きといったところか。

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久が原方面に少し足を延ばして、以前から興味のあった建物を訪ねに行く。

クロスクラブ・・・建築家・山口文象が1940年に建てた自邸である。川端龍子邸とほぼ同時期の竣工だ。他に現存するのは黒部川第2発電所、林芙美子邸や小生の好きな清洲橋など数少ないが、戦前の土木建築デザイン中心に関わった人物だ。モダンな和洋折衷の建物は今でも斬新そのもので、特に正面とサイドからの表情の違いに胸がすく。音楽家である長男・勝敏が引き継いだ邸宅では定期的にコンサートや音楽セミナーが開催されて内部も開放していたようだが、この3年程は情報の更新はされていないのが少々気がかりだ。

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久が原教会・・・元々は山口文象の戦前の設計だが、戦後に別の場所から移転して此処に建て替えられた2代目だ。それでも山口文象の息遣いを感じるのは気のせいだろうか。

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勝手知ったる下町エリアを徘徊するのは気楽だが、滅多に訪れない街をナビを見ながらそぞろ歩くまっさらな気持ちも良いものだ。もうすぐ春[かわいい]健康維持とボケ防止を兼ねての街歩きも全開のシーズンが近い[どんっ(衝撃)]






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