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『コンテイジョン』 [上映中飲食禁止]


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パンデミックをテーマにしたSF映画の秀作を密林プライムで改めて観てみた。

劇場で鑑賞したのが、東日本大震災の起きた2011年末だから、すでに9年近くも前の作品だ。世界をコロナ禍が襲う今、この映画を見返すと、絵も言われぬ感慨が押し寄せてくる。当時の小生の稚拙ブログに綴っていた感想を読み返すにつけ(https://tsumujikaze2.blog.ss-blog.jp/2011-11-20)、当時の能天気な自分が恥ずかしくなる。

まず、この作品が、SARSや豚インフルエンザの流行を元に、医学的な事象や世界の保健機構を極めて正確に描かれている事に驚かさせる。聞き慣れなかった「実行再生産数」や「抗体調査」は、今や日常用語だし、「CDC(アメリカ疾病予防センター)」の実在は、今にして納得している訳である。

未知の病気による死者が日中米で発生、米国土安全省が生物兵器テロの可能性を示唆する水面下で、CDCがウィルスの解明に動くが、感染者は世界各地で急増する。街に溢れた死者は、ビニール袋に詰め、流れ作業的に埋葬されていく。シカゴ・ミネアポリスは都市封鎖、デマが横行し、市民のストレスは暴動・強奪に向かう...
まさに「今」を最悪にシュミレートしたような映像が瞼に焼き付く。それ以上に、極限化に置かれた人間の種々の行動が胸に刺さる。

政治家、研究家、医療従事者、ジャーナリスト...職業・組織を超えて、父として母として、一人の人間として『何を信じて行動するか』を問い、あえて正解は示さない。カミュの「ペスト」や100年前のスペイン風邪の時代から、人間の本質は何も変わっていないのだ。100人いれば100通りの考えと生き方がある。医学は飛躍的に進化し、情報のグローバル化に時差が無い現代でも。

ジュード・ロウの太々しい生き様に、一瞬憧れたりもするが、なり切れない自分に気付かされる。自分にとって「正しく生きる」とは「他人を傷つけない」事なので。

オスカー常連俳優陣の配役に沿った自然な演技と徐々に危機感を増幅させる緻密な演出が、人間の根源的テーマを浮き彫りにする秀作である。

最後に、劇中前半でウィルスの犠牲となった医師を演じたケイト・ウィンスレットと、妻と息子を一瞬に失い必死で娘を守り続ける父を演じたマット・デイモンの言葉を...


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U3

おはようございます。
>ジュード・ロウの太々しい生き様に、一瞬憧れたりもするが、
>なり切れない自分に気付かされる。自分にとって「正しく生きる」
>とは「他人を傷つけない」事なので。
 強烈な個性ゆえに、時に未だ多くの人々を心ならずも傷つけている小生には、耳の痛い言葉である。
 だが「他人を傷つけない」事と同時に「他人を傷つける行為を見たら座視しない」という姿勢や生き方も大事だと小生は考えています。それが「他人を傷つけない」かといえば、そうとも言えない。だがそれで救われる人がいるなら、それがたった一人でも小生はそれを行うだろうと思います。
「コンテイジョン」小生もAmazonPrime会員なので見てみます。

by U3 (2020-05-19 06:26) 

つむじかぜ

> U3 様
「ペスト」の不条理世界は、未だに理解に遠い小生ですが、この映画には、それに近い極限化の人間の滑稽さが描かれていると思います。
是非、ご鑑賞ください。
by つむじかぜ (2020-05-20 02:04) 

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