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『私がやりました』 [上映中飲食禁止]

[ぴかぴか(新しい)]フランソワ・オゾンの洒落た小品[ぴかぴか(新しい)]

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著名な映画プロデューサーが自宅で殺害され、新人女優・マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)が容疑者として連行される。彼女はプロデューサーに襲われて自分の身を守るために殺害したと自供し、親友の新米弁護士・ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)と共に法廷に立つ。正当防衛を訴えるマドレーヌは人々の心を揺さぶる陳述を披露し、無罪を勝ち取ったばかりか、悲劇のヒロインとして一躍スターになる。そんな彼女たちの前にかつての大女優・オデット(イザベル・ユペール)が現れ、プロデューサー殺しの真犯人は自分だと主張する。(シネマトゥデイより)

売れない女優のマドレーヌと新米弁護士ポーリーヌはパリのアパートで二人で暮らす。収入が不安定な彼女たちは家賃も払えず汲々とした生活だ。だが、映画での大役を射止めというマドレーヌが帰って来れば、貧乏暮らしとも今日でおさらばだ。と、ポーリーヌがほくそ笑むのも束の間、マドレーヌが興奮した様子で帰宅する。強引に肉体関係を迫ってきた映画プロデューサーを咄嗟に殺してしまったと彼女は打ち明ける...

1930年代の華やかな巴里の情景と二人の魅力的な女優に心ときめく。美形パリジェンヌのネイティブなフランス語での会話は理解不明でも心にスッと寄り添ってくるようで、やっぱりフランス映画っていいなぁ、と冒頭からほっこりしてしまう。物語は殺人事件を発端にシリアスな法廷ドラマの様相なのだが、ファショナブルな装飾とブラックユーモアを随所に散りばめた脚本により緊張感は緩みまくり、エレガントなミステリーと言うべき展開に変容する。まさにオゾン監督の面目躍如たる処か。

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ブロンドのナディア・テレスキウィッツと黒髪のレベッカ・マルデール共に初見の女優だが出色の出来だ。性格は違うも将来を夢見る野心溢れる女性を、まさにエレガントかつ情熱的に演じた。マドレーヌの弁護を引き受けたポーリーヌは被告の正当防衛を訴えるのも、時代は男尊女卑の戦前のフランスだ。圧倒的不利な状況に追い込まれるが、最終の被告陳述で女優魂に火が付いたポーリーヌの一世一代の名演説により形勢逆転となり無罪を勝ち取る。

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時の人となったマドレーヌは人気女優の道を突き進み、ポーリーヌは辣腕弁護士として仕事の依頼が殺到だ。だが、二人がようやく掴んだ成功に暗雲が立ち込める。映画プロデューサーを殺した真犯人を名乗る初老の女性・オデットが現れる。彼女は知る人ぞ知る無声映画時代の大女優だった。

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役柄そのものの如くフランス映画界の至宝であるイザベル・ユペールではないか[がく~(落胆した顔)]フレンチ・ムービーには疎い小生でも「ピアニスト(2001)」での妖艶な演技は強烈に覚えている。この本物の大女優のキャスティングもオゾン監督の手腕によるものだろうが、彼女の登場により作品の純度がグッと上がると共に、展開そのものも予想不能な状況となり期待が膨らむ。

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オデットは二人が手にした富と名声は本来は私のものだと主張する。第一線への復帰を目論むかつての大女優と若き才能が弾ける名コンビとの熾烈な駆け引きの幕が開く[exclamation&question]果たして殺人者の名誉?を勝ち取るのは一体、誰...それとも...

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愉しみに溢れた映画だ。
作り手によっては低俗なドタバタ劇になる内容を、ものの見事にエレガントなサスペンスに昇華させたオゾン・マジックに脱帽だ。鮮やかな起承転結の展開の中に3人の女優の魅力を解き放ち、味付けとばかりにシリアスとユーモアとエロチシズムを絶妙に配合している。重いコース料理みたいなハリウッドの大作ばかり見ていると、こんなフレンチの魅惑の一皿が美味しく感じてしまう。まさに素敵な小品である。




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