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銀座奥野ビル [寫眞歳時記]

レトロ建築巡りを不定期に実施中なのです[わーい(嬉しい顔)][わーい(嬉しい顔)][わーい(嬉しい顔)]

銀座一丁目のビル街の一角に、古いアパート風の建物がやたら存在感を主張して佇んでいる。美術好きの方々には結構有名な『銀座奥野ビル』だ。


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「銀座アパートメント」として1932年に竣工し、2年後に新館が右側に隣接して建てられた。東京大空襲の大火を逃れ、平成バブルの地上げブームにも踊らされず、東京の一等地で齢90年になろうとする奇跡的に長寿の建物である。いつしか約70戸の住居が小さな画廊やショップ、個人事務所などがひしめく現役バリバリのテナントビルとなって活躍中なのである。当然、一般人も出入り自由であり、若手アーチストの作品目当てにギャラリー巡りをする愛好家で週末などは結構賑わっているようだ。

銀座には画廊が点在しているが、どこも敷居が少々高く感じてしまう。だがこの奥野ビル内のギャラリーは、学園祭の教室ごとの展示を見て回るような気軽さがある。手動開閉のエレベーターで六階まで上がり、女房はショップ巡り、小生は写真を撮りながら階下に降りて行く。

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1階のエレベーターホールに足を踏み入れた途端に昭和初期にタイムスリップする。当然、改装・補習は繰り返していると思われるが、塗装が剥げた壁や床、古色を含んだタイル、剥き出しの配線に往時の昭和の輝きを感じる事が出来る。新旧ふたつのビルは内部で繋がっているが、多分後年に改築連結されたものと思われる。外窓が内部に組み込まれた不思議な光景だ。

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個性豊かなギャラリーは前衛的もしくはマニアックな作品の展示が多い。昭和の遺物の中で令和時代の先端を行く芸術品が飾られる違和感が、今風に面白いと云う事か。戦前に此処に居た住民達は90年後に自分の部屋がこのように使われていようとは思いもよらぬ事に違いない。

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先日訪れた取り壊しが決定した中銀タワービルと違い、奥野ビルの寿命は当分尽きそうもない。有志や入居者、芸術家達の協力により「奥野ビル306号室プロジェクト」を立ち上げ、306号室の保存を通してビル全体の継続営業を訴えている。因みに、306号室には最後の入居者・須田ヨシさんが住んでいた。奥野ビルの一室で美容院を開き、廃業後も住居として過ごした。10年前に100歳で天寿を全うされた後、この部屋を有志達が借り受け、住居のままの保存活動を開始したそうだ。

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やみくもに古い物を残し、ノスタルジーに浸るのが良い事とは思わない。千年経過した神社仏閣は国宝になり行政が経済的に保護するが、築百年のビルは耐震化基準無視の危険な建築物の扱いになっていく。個人の所有者にとってはその補修・管理維持には莫大な経費がかかり、新築した方がビジネスとしては正しい。この奥野ビルのように、市井の人々が保存に立ち上がり、ほぼ全室が再利用されて運営維持されている建物は稀であろう。昭和初期の近代建築物に関しての芸術的価値を再評価し、今まさに消えゆく美術遺産の経済的な再利用にも行政が力を入れるべきと考える。

1階の待ち合わせに女房がなかなか現れないので探してみると、美術に造詣深いと自負する彼女は、とあるギャラリーで迷画を購入中でありました。いいセンスだ
[がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)]


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