『クルエラ』 [上映中飲食禁止]
目眩くファッションに胸踊る
1970年代、パンクムーブメント真っただ中のロンドン。デザイナー志望のエステラ(エマ・ストーン)は、夢と希望を胸にデザイン画の制作や裁縫に全力で取り組み始める。しかし、カリスマ的なファッションデザイナー、バロネス(エマ・トンプソン)との出会いをきっかけに、エステラは狂気に取りつかれた“クルエラ”へと変貌していく。(シネマ・トゥデイより)
半世紀以上昔のディズニー名作アニメに登場する悪女の若かりし時代を描いた作品なのだが、残念ながら「101匹わんちゃん」の内容を知らない小生は、クルエラ・ド・ヴィルと言われてもピンと来ない。著名なディズニーより円谷特撮シリーズで育った日本男児な為、クリエラへやダルメシアン犬への思い入れは皆無だが、そんな予備知識抜きで抜群に楽しい映画であった。
母の仇を討つべく強大な敵に立ち向かう女性の復讐劇だが、その戦いの場が70年代のロンドンファッション業界という設定がユニークである。その復讐に燃える窃盗団上がりの若きデザイナー助手エステラにエマ・ストーン。「アメイジング・スパイダーマン」や「ラ・ラ・ランド」でのイメージを気持ち良く裏切ってくれた貫禄の演技だ。元々上手い女優だが、オスカーを獲ってまた一回り大きくなったような気がする。清潔感溢れる演技の印象が強いが、今作のアバズレの方がハマり役で、実質的なメジャーデビュー作「ゾンビランド」での素の彼女に近い印象だ。
嗚呼、美しい
メイクのセンスも素晴らしいのだが、やはり素材の問題ですな。とにかく、悪女=美女の方程式を守り通すディズニーに拍手である。そしてもう一人のエマ。
先輩オスカー女優のエマ・トンプソンが、ストーンの上を行く悪女ぶりを貫禄十分に魅せてくれる。当時のファッション業界を牛耳るカリスマデザイナー・バロネス役である。エステラの才能を見出し、彼女を引き立てながら自己の名声を更に強固にせんと狙う。当初は師弟愛を醸し出していたが、エステラの斬新なセンスが花開き始めると、嫉妬と恐怖の心が膨らんでくる。一方のエステラは、強烈な個性と才能を放つバロネスに恋い焦がれ、厳しい試練も喜んで受け入れ、自分を拾ってくれた人の力になろうと尽くす。が、その憧れの人物が自分の母親の仇だと知った日を境に、復讐の刃を向けることになる。悪女クルエラに変身して、バロネスの栄光を地に堕としめんと数々の画策を巡らすのだ。
ありきたりの展開ではあるのだが、二人が纏うファッションの競演に目を奪われ、クルエラの奇抜かつ用意周到なバロネスへの妨害行動が胸をすく。装飾美術とカメラワークが細部に渡り凝っており、小生好みの「絵作り」なのだ。