SSブログ

トモル【拉麺・押上】 [江戸グルメ応援歌]

スカイツリーが開業して早、8年が経過しようとしている。何の取り柄も無かった我が下町の風景は一変し、人の流れも大きく変わった。だが、タワーを一歩出て周りを散策すると、昔ながらの商店街に活気は感じられない。観光客が溢れていた頃は、何の経営努力をしなくても商売になったのだろうが、コロナ禍のこの期に及んでは万事休すかもしれない。いまだに客足が途絶えない店のほとんどは、ツリー開業後に開店した飲食店ばかりだ。特に個人経営で乗り込んできた店の姿勢に、地元で永らくノンビリ商売してきた店では、残念ながら太刀打ちできないようだ。

ツリー直結の地下鉄の駅を出て、地元では「開かずの大踏切」と呼ばれる人影まばらな方向に足を延ばすと、美味いラーメン屋さんがある。2年半ほど前に、古い木造の空家を改装し、営業を始めた。開業当初は、「太刀魚ラーメン」なるものがメインだったようだが、小生が通い始めた2年前からは、太刀魚を封印し、「汁なし担々麺」が看板メニューに。広島ラーメンが源流なのだが、オリジナルを知らない小生には、比較しようが無い、だが、とにかく美味い[exclamation×2]

店内は、カウンターとテーブル3卓で、10名入れば満員。広島カープの球団旗と共に、古いエレキギターと往年のロックアルバムのジャケットが飾られている。この一風、雑然とした佇まいの中、ご夫婦の自然体の接客と仕事運びが、これまた小気味好いのだ。

広島汁なし担々麺〜辛さ・シビレは4段階から選択
20200131-UNADJUSTEDNONRAW_thumb_831.jpg

私の定番〜辛さ2シビレ0、麺大盛り、小ライス卵黄セット
20201125-UNADJUSTEDNONRAW_thumb_12ae.jpg

実は「広島中華そば」も絶品[ぴかぴか(新しい)]
20190417-UNADJUSTEDNONRAW_thumb_811.jpg
程よい甘みの豚骨風スープに中太麺+厚切りチャーシュー
濃厚なのにしつこく無い絶妙のバランス[ひらめき]

夜の帳が下りる頃には、地元常連客が集まり、居酒屋状態になる事もしばしば。サイドメニューが充実しているせいもあるが、やはりご夫婦の人柄かな。よその土地から来て開業し僅か3年で、めんどくさい下町の客をしっかり掴んだ力は、やはり味への拘りと商売への情熱だろう。地元生まれの商売人は、もっと見習わねばと感じさせてくれる店である。

20201125-UNADJUSTEDNONRAW_thumb_12b4.jpg



nice!(27)  コメント(2) 
共通テーマ:グルメ・料理

晩秋の旧古河庭園 [寫眞歳時記]

「Go to キャンペーン」の恩恵に預からず、都内をウロウロしております。最近、業務出張で、鹿児島や仙台には行ったが、ネット予約により自動的に宿泊料が割引されていた。会社の経費減には繋がったし、もらったクーポンで事務所への土産も購入出来たのだが、私個人の財布には大した影響もなく、得した気分にはならなかった。ただ、夏には閑散としていた双方の定宿が、今回は非常に混雑していた。確かに経済効果なのだが、腑に落ちない。現在のコロナの感染拡大は、この政策が遠因であるのは間違いない。無能な前政権の負債は、早めに精算する勇気が現政権に欲しい所だ。経済のアクセルを踏まぜる得ないのは理解できる。だが、ブレーキのかけ方が日増しに弱くなっている。「正しく恐れる」〜基本に戻って、「三密撲滅キャンペーン」でも徹底するのが先決ではなかろうか。今週末から、東京の飲食店に再度の時短要請が出た。2、3時間の営業時間短縮に如何程の効果があるのか、小生には合点がいかない。

旧古河庭園には気軽に通っている。年2回春秋のバラの季節は必見だし、閑散期に洋館のテラスで珈琲を啜るも悪くない。今年はコロナ禍により、春バラの時期は休園だったが、夏から限定的に開園し、秋が深まる今、色とりどりの薔薇と紅葉が観る者を魅了してくれる。

20201123-DSCF1499.jpg

20201123-DSC02059.jpg

20201123-DSCF1521.jpg


20201123-DSCF1492.jpg

20201123-DSC02054.jpg

20201123-DSC02065.jpg

20201123-DSC02018.jpg


nice!(23)  コメント(0) 
共通テーマ:地域

最期の『原美術館』 [寫眞歳時記]

『原美術館』の「光ー呼吸 時をすくう5人」展に行って来た。

FB4B-620.jpg

此処に伺うのは、ほぼ十数年ぶりだ。品川御殿山に在る古い洋館を利用した洒落た美術館なのだが、現代美術の展示が多く、暫く足が遠のいていた。過日、来年1月に閉館との情報を得、また最期の展示会が現代写真中心でもあり、妻を誘っての来館なのだ。

20201122-DSCF1430.jpg

20201122-DSCF1435.jpg

20201122-DSCF1468.jpg

20201122-DSCF1485.jpg

館内は撮影禁止の為、外観のみの撮影はあしからず。内部は多く補修されているが、階段や窓枠に昭和初期の香りを色濃く残していた。1938年に竣工された実業家・原邦造氏の邸宅を再利用されたものだ。老朽化が当然、閉館の理由であり、改築によるバリアフリー対応や耐震強化は困難との判断もあったのだろう。古い建造物の原型を保ったままでの改装は、新築よりも経費がかかるという。そもそも、営利第一であれば、一般受けしない現代美術主体の展示にしないはずだ。陽の当らない芸術家にも公開の機会を与える美術館だった為に残念である。数年前、大改修した旧朝香宮邸の東京都庭園美術館のように、文化財指定されるか、国や都に買い取ってもらわなければ、歴史建造物が保存される道は無さそうだ。悩ましい問題だなと、中庭を眺め、チーズケーキを頬張りながら、そう思った。

20201122-UNADJUSTEDNONRAW_thumb_1291.jpg


5人展の中で「城戸保」氏の作品が好きだ。こういう写真を撮る感性が、小生に無いのが悔しいけれど。

9fcef6244d34_l.jpg
(https://www.museum.or.jp/report/99748)より



nice!(14)  コメント(2) 
共通テーマ:アート

『さくら』 [上映中飲食禁止]

こういう映画が刺さるんです[ぴかぴか(新しい)]

さくら.jpg

タイプでは無いが、今最も気になる女優〜小松菜奈〜が出演と知り、内容自体は予備知識ゼロで臨んだ作品だったが、素晴らしかった。
胸に優しく深く刺さる感覚が堪らない[もうやだ~(悲しい顔)]

消息不明の父親が2年ぶりに家に帰ることになり、長谷川薫(北村匠海)は実家に向かう。2年前、家族は長男・一(吉沢亮)の死をきっかけに離れ離れになっていた。薫は妹の美貴(小松菜奈)の誕生や愛犬のサクラとの出会いなど、幸せだった日々のことを思い浮かべる。そして大みそか、家族にとって奇跡のような出来事が起きる。(シネマトゥデイより)

3人兄弟の次男・薫(北村匠海)の一人称で物語は進む。彼の記憶が幼少期に遡り、幸せな5人家族が、一匹の犬〜さくら〜を迎い入れる場面から始まる。

img_8c50cd17235dda55f060616550c39467154407.jpg

ありきたりなホームドラマのように、前半は淡々と進むのだが、家族全員の個性を押し付けがましくなく、自然と描き出す見事な演出である。そしていつもながらであるが、母親役の寺島しのぶの演技が絶品だ。夫婦の夜の営みの声を娘に聞かれた母が、朝食時に、子供達にレクチャーする性教育の場面は、抱腹絶倒でありながら邦画史に残る名演かもしれない。

20200221-sakura_full.jpg

中盤から、子供達が思春期に入り、3人それぞれの青春を色とりどりに魅せていく。長男・一(吉沢亮)は、野球部のエースにして学校一の人気者だ。美人の彼女・矢島優子(水谷果穂)も出来、幸せ一杯、まさに長谷川家の一等星だ。地味で周りに流されやすい弟の薫(北村匠海)は、何かと出来過ぎの兄と比較されるが、決して屈折する事なく、マイペースで生活を楽しむ。学年トップの才女山谷花純に見初められ、呆気なく童貞を喪失するシーンには、青春の甘酸っぱさが溢れる。両親に甘やかされて育った美樹(小松菜奈)は、自由奔放かつ勝気な女子高生に成長していた。親友がレズビアンと知っても全く差別する事なく、友情を続ける。そして、彼女には、子供の頃から憧れ続ける人がいた。長男の一だ。兄と彼女の交際が進むのを目の当たりにし、嫉妬に悩み苦しむ美樹の何といじらしい事。そんな子供達を優しく見守る両親。全員が精神的に自立し、むやみに寄り添う事もなく、ただ自然と佇む素晴らしき家族だ〜その家族をじっと見つめ続ける末っ子ともいうべき「さくら」の姿があった。

夫の浮気を問い詰める寺島しのぶ、審判する「さくら」〜これも迷場面〜
Emq70IcVoAAXxm1.jpg

終盤、一と優子の別離から家族のバランスが徐々に崩れ始める。美樹の嫉妬心は、倒錯した兄への愛へと昇華し、彼女から届く手紙を全て隠し続ける。傷心の一は、或る日、交通事故に遭い下半身不随の生活を余儀なくされる。車椅子の兄を甲斐甲斐しく介護する美樹に笑顔が戻る。「やっとお兄ちゃんは私だけのモノになった」輝く太陽だった長男が一家の暗い重しとなり、家族の関係は軋み始める。のも束の間、一は呆気なく自死を選ぶのであった...

El9Woi9VcAIKB9Z.jpg

この件に至る小松菜奈の演技が際立つ。葬式中に、へらへらと笑いながら失禁する姿は、愛する人を失った計り知れない衝撃を十二分に表現していた。
その後、父(永瀬正敏)は無言で家を出て行方知れずとなり、次男・薫は大学入学により上京し、一家は散々となる。それから2年の月日が流れた年末、唐突に父から「家に帰る」と連絡が入り、久しぶりに家族が集まる事になった。実家に戻った薫が見たのは、一見昔と変わらない、寡黙な父、元気一杯の母、明るく色っぽくなった妹、そして年老いた「さくら」の姿だったのだが...

前後半のギャップの激しさが、「幸福」という形が如何に脆いものなのかを如実に表す。同時に「家族」という形の価値観さえも問いてくるような構成である。家族の皆が、それぞれに長男の死を背負いつつ、時をかけながら自分を取り戻し、日常生活へまた彩りが加わえて行くのだ。残された者達の自然な生き様が美しくて堪らない。作品内では、LGBTや近親愛、DV・障害者介護から自殺の問題まで、現代が抱えるテーマが目白押しに組み込まれ、伏線が絡み合っている。だが、映画全体から、必要以上に重苦しさを感じず、逆に清々しい気分になるのは、生きる人間の強さの方に多くの光が当てられているからに他ならない。寺島しのぶ・小松菜奈を中心にした女優陣が魅せた女の逞しさと「さくら」の迷演が、更にそれを際立たせた。笑いと悲しみの配分が見事な、あえて『喜劇の傑作』と呼ぼう[exclamation×2]エンドロールでの東京事変「青のID」が胸を焦がす[たらーっ(汗)]

EevAARqVAAANoof.jpg



本作の実質的な主人公である小松菜奈
演技力はもちろん、ホットパンツを穿いた彼女の脚の美しさは強烈であった[揺れるハート]
img_5b35bb4f02284.png

独りよがりのつむじ風大予想
来年、大ブレイクする女優は
小松菜奈
浜辺美波
で決まりじゃな[パンチ]


nice!(25)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

『相撲道 サムライを継ぐ者たち』 [上映中飲食禁止]

TOHOHO系列がUA割とかで、一人@1,000円だったので会社帰りにフラリと・・・

相撲.jpg

上映館も限られたドキュメンタリー映画である。
大手シネコンでは、6月以降しばらくの間、1席空けのコロナ仕様を実施していたが、先月中旬の「鬼滅の刃」公開から封印を解いた。但し、飲み物OK食事持込禁止というよく分からん条件付でだ。先日にカミさんと鬼滅を観た時は、場内は立錐の余地もない超満員だったが、小生の一番嫌う「ポップコーン」の匂いと咀嚼音が皆無であり、不快感なく鑑賞できた。昨今の映画館は、上映料金以上に飲食の売上が粗利を左右すると言われており、今回の措置は興行主も苦渋の決断であったろう。結局、鬼滅は記録破りの興行収入を打ち立てており、結果オーライといべきか、とりあえず映画業界にとっては久方ぶりの明るいニュースとなり、1映画ファンとしても嬉しい限りである。しかしながら、本作のようなマイナー作品となると、自主規制があろうとなかろうと、30席に1名のほぼ無観客試合状態なのだ。隣の鬼滅スクリーンは満員なのに...

閑散とした観客席なのだが、若い女性客が大半という不思議な雰囲気の中での鑑賞となった。意外や、今の相撲界は、うら若き熱狂的な女性ファンに支えられているのかも知れない。隠れデブ専ギャルが増えているのは、コロナ太りで日々成長中の小生としては密かに微笑んだのだが、この映画を観終わって、「単なるデブ」は対象外な事を自覚したのであった[もうやだ~(悲しい顔)]

相撲は究極の格闘技である・・・とは、小生の持論でもある。
何度も殴られ、叩きつけられても、血みどろで立ち上がる強靭なタフネスと防御力はプロレスラーだが、攻撃に関しては、力士の瞬間の破壊力に勝るものは存在しないと思う。神事相撲から武家相撲、勧進相撲という形態を通して、近代の相撲は日本古来の精神性を伴ったまま進化し、現在の国技たる大相撲となった。その為、相撲に携わる人間は、公私ともに武道家として、心技体の鍛錬を求められるのだ。

今作は、2019年の境川部屋と髙田川部屋に密着取材しての大相撲初のドキュメンタリーだ。冒頭の稽古風景から圧倒される。何度も言うが、ただの肥満では無い、鍛え抜かれた究極の肉体がデブなのだ[むかっ(怒り)]あの「股割り」の柔軟な肉体を持ちながら、200キロのバーベルを軽く挙げる怪力。延々と続く「申し合い」と、そしてイジメにしか見えないような「ぶつかり稽古」。これを毎日やれば、当然、強靭な肉体と精神力が身に付き、本場所での怪我にも強くなる。そう信じ、高みを目指す者は、究極まで自分の肉体を鍛えぬくのだ。

豪栄道・・・境川部屋の看板力士、大関である。怪我に悩ませられながら、8度のカド番を切り抜けた実力者だ。今年の初場所で負け越し、すでに引退しているが、本作では現役時での戦いを通じて、彼の人となりも濃密に描いている。

相撲2.jpg

「男を磨くなら境川部屋に行け」・・・各界では常識の話しらしい。徹底した規律の元、昔ながらの常識を超えた稽古を続ける。その試練を当然の如く受け入れる雰囲気がこの部屋にはあるようだ。凛とした稽古場・・・その中心が部屋の筆頭・豪栄道だ。右腕の筋を断裂しても、サポーターを巻かずに、本場所に臨む。「そんな事したら相手に弱点を教えるようなものだから」と、当たり前のように話す。男の中の漢だ。TV観戦してた頃は「大関のくせに、情けない負け方するなぁ〜だらしねぇ」など思っていたが、彼は命の限界まで戦っていたのだ。表面上や結果だけで、プロの勝負事を決めつけていけないと感じ入った。

相撲4.jpg

後半は、髙田川部屋の取材に代わる。ある意味、前述の境川とは対象的な相撲部屋だ。「2、3年前までは、うちも昔風に激しくやってたんですがね。パワハラになるでしょ、今は。」髙田川親方(元・安芸乃島)は和やかに話す。親方は、無為な根性論を振りかざさず、自らまわしを締め、直接に若手の指導に胸を出す。「今の子たちには、具体的に教えないと駄目ですからね。」充実した個室制度、栄養バランスを考慮した食事は、角界一と評判だ。この部屋の筆頭である竜電に脚光が当てられ、華やかな結婚式と新妻との楽しいやり取りが映し出される。明るい今風の好青年は、伸びやかな部屋の勢いそのまま、いざ本場所では闘神と化す。

日本古来の武道を守る現代の侍達の様々な姿をリアルに映し、大相撲の精神性の普遍的な支柱と時代の変遷と共に変わりゆくものを炙り出す。ただ、そんな講釈より、常人では命に関わるレベルの巨体同士のガチンコの激突を高精度カメラで見せられれば、この国技の計り知れないパワーに一発で感きわまる事、間違いなし。

この作品の取材時と、今の大相撲の状況は、コロナ禍によって大きく変わった。夏場所の中止から無観客興業を強いられた。この秋に新大関誕生という喜ばしいニュースと共に、ようやく土俵にも歓声が戻る形になってきた。但し、コロナ禍は、力士達の稽古にも影響が出ている。事実、今夏に高田川部屋ではクラスターが発生し、各界初の死亡者も発生した。出稽古は自粛となり、サムライ達の鍛錬度にも疑問符が付いていた。それと関連しているのか、2横綱、2大関が怪我による休場という、盛り上がりに欠ける11月場所が、現在進行している。

この史上最大の厄災を凌駕するサムライ達の真の闘いの復活を、一日も早く望む。

監督は、現役TBSプロデューサーの坂田栄治。「マツコの知らない世界」などを手掛けた。番組同様に、視聴者の興味へ変化球で攻めてくるカメラ目線が独自で楽しい。遠藤憲一のナレーションも秀逸である。




nice!(25)  コメント(2) 
共通テーマ:映画

劇場版『鬼滅の刃』無限列車編 [上映中飲食禁止]

カミさんに半ば強引に誘われ、観て参りました[かわいい]

鬼滅3.png

歴代の興行収入記録を次々と塗り替える前代未聞の映画だ。そう言えば、バイデン勝利確定で株式市場も活況、日経ダウも29年ぶりの高値回復だ。だが何かおかしい。この映画は非常に良く出来てはいるが、「千と千尋〜」や「君の名は。」を凌ぐ作品だろうか?バイデン次期大統領は、世界の期待を一身に背負うほどの政治家であろうか?
「虚飾の熱狂」・・・分断された社会での長引くコロナ禍で、鬱屈し行き場を失くした国民の心情が、一筋の希望の光の下に一気に収束した事態なのだろう。しかし砂漠の中で見つけたオアシス同様に、実はそれが蜃気楼であることも珍しくないのだ。こんな時こそ、廻りに惑わされず、自分の感性を信じるべきではないかと思ったりするのだが...

とは言え、実はこの作品に関しても小生の方がカミさんより詳しいのである[むかっ(怒り)]年甲斐も無く、流行り物にはとりあえずチャレンジする質で、昔の「エヴァンゲリオン」は再々放送からハマったものだった。この作品の連載漫画は未読だが、TVシリーズを密林プライムで視聴した。3日間で26話を走破できたのは、紛れもなく「次を早く観たい」と思わせる秀逸な構成に拠る。アニメとは言え血肉吹き出す場面が多く、「男の子向け」と感じたが、然もありなん。老若男女を問はず、空前の大ヒットというわけだ。その理由をつむじ風なりに考えると...

〜とにかく洒落た絵心。そして日本人が忘れていた古き日本の伝統文化や伝説を敷き詰めて、観る者の探究心を煽る。〜

時代背景は大正期なのだが、幕末でも大東亜戦争時でもないニッチな時代を敢えて舞台にする。日本が世界の列強に数えられた時期で、経済は急拡大し、文化面では江戸伝統文化と西洋文化が融合した独特の「大正浪漫」を生み出す。只今、人気沸騰中の「格子柄」の衣装や登場人物の名前の難しさ〜漢検1級クラス〜は、現代人の思考をくすぐる。炭治郎の振りかざす刀から巻き取られる闘気の描写は、葛飾北斎の浮世絵を彷彿させる。

浪漫漂う浅草
鬼5.jpg

こんな羽織も人気の秘密
鬼11.jpg

水の呼吸〜浮世絵の型[exclamation&question]
鬼4.jpg

人間と鬼との戦いを描いているが、桃太郎伝説の「鬼退治」にはならない。全ての鬼が以前は人間であり、単純な「正義と悪」の構図に収めていない。そして、鬼は増殖するのだが、ゾンビのように噛まれて無限に伝染するのではなく、鬼舞辻無惨というラスボスの手によってのみ生み出される。鬼たちは基本的に不死身であり、首を落とされるか太陽の光を浴びなければ絶命しない。この辺りは、ドラキュラや進撃の巨人などにも見られる難敵の唯一の弱点パターンだ。兎にも角にも、ラスボスの討伐無くして、平穏は訪れないのだ。

無惨様もお洒落なのだ
鬼12.jpg

一番の人気の秘訣は、キャラクター描写であろう。多くの登場人物(鬼も含めて)を、出自・性格等を丁寧に描き、小学生では読めない漢字の羅列の命名にしている。観る者の嗜好によって、感情移入できるキャラを豊富に揃えた劇画ならではの面白味だ。特に主人公である竃門炭治郎の「底なしの優しさ」と「怠らない努力」は特筆であり、世の母親たちは、自分の子供はこう育って欲しいと願うのではなかろうか。一介の炭焼きの少年が、鬼化した妹を救う為、一歩づつ剣士としての力をつけていく様は、昔からのスポ根漫画に類似しているし、友情と信頼で結ばれた仲間が力を合わせて戦い続け、剣技を磨き、ラスボスに立ち向かう様は、まさにドラゴンクエスト状態。水・炎・風・雷などそれぞれの呼吸法と剣技を身につけている鬼滅隊の柱達は、南総里見八犬伝に登場する八剣士みたいだ。そしてシビアな戦闘の合間に差し込まれる笑えるシーンの数々が、痺れた身体を和ませる効果大なのだ。

デフォルメされた表情は”漫画”そのもの
実は斬新なアイデアは余り無い。ただ江戸時代から昭和にかけての日本文化〜古典・浮世絵からファミコンRPGまで〜を微細にわたり研究し、随所に取り込んだ原作者「吾峠 呼世晴」氏の執念は賞賛に値する。汚い現代用語を使用せず、美しく力強い『日本語』を多用するのにも好感が持てる。そして一貫したテーマである「人間愛」を真正面から描き切る潔さ。多くの日本人が忘れていた、古き良きニッポンを再発見する事象に溢れた素晴らしいアニメである。

今作の内容には全く触れていなかった...
とにかく準主役扱いの煉獄杏寿郎(これも読みにくい[あせあせ(飛び散る汗)])の勇姿に拍手を送ろう[ぴかぴか(新しい)]

267793.jpg



久しぶりに映画館に足を運んだファミリーが、この作品をきっかけに多くの他の映画にも触れてもらいたいものだ。全集中で[わーい(嬉しい顔)]

nice!(23)  コメント(4) 
共通テーマ:映画

伯山、再び! [上映中飲食禁止]

2週続けて、生の神田伯山を聴くことになるとは...

20201105-Epson_20201106003651.jpg
先週、浅草演芸ホールに出演した伯山を初めて聴き、感動に耽っていたのだが、なんと今週に我が地元で独演会が開かれることを3日前に知ったのだ。
今回は、小生が乗り気となり、カミさんを誘った。もちろん今や大人気の伯山である。当然チケットは残り僅かで、二人並びは3Fのみ、1F席は両サイドの壁側に1席づつとのことだ。ここは我が夫婦の気の合うところ、

「3F席じゃ、伯山が米粒だ。離れ離れの1F席にしよう!」
(意気投合するこんな女房が好きだ[黒ハート]

一人3,500円が、墨田区在住割引にて3,000円じゃ! 流石、すみだトリフォニー[ぴかぴか(新しい)]
この会場は、クラシック専用の大コンサートホールである。コロナ自粛も緩和され、前列2列以降は、立錐の余地もない満員状態だ。3Fの混雑感は分からなかったが、1,500名近い観客数と思われる。我が夫婦は、毎度の現地集合で、お互いの存在を気にせずに講談を楽しむ計画とした。もちろん、終了後は出口集合ということで...

普段は、フルオーケストラが鎮座するステージの中央に「ポツン」と釈台が置かれている。二人の前座が勢いよく、手短に、師匠の露払いをして、いよいよ真打登場である。
いささか猫背気味に照れ臭さそうに現れるいつもの神田伯山だ。開口一番・・・

「皆さんと同じ気持ちですよ・・・広すぎるんですよ。2階3階のお客様には本当に申し訳ない。これで一律3,500円ですよ。主催者が全くのど素人なんです。なんで、この仕事を受けちゃったのかな。」

いきなりから爆笑を誘う。本題に入る前の「マクラ」でいかに観客を一気に引き込むかが、噺家の巧拙だが、寄席で鍛えた伯山のそれは、百戦錬磨の落語家を凌ぐ。講釈師としては先例が無い話術の巧みさであり、それが幅広い年代からの人気の秘訣なのだと思う。

1席目は、「講談初心者の方でも分かりやすいように」と断りを入れて『源平盛衰記 扇の的』だ。落語好きの小生であるが、講談は詳しくない。但し、この演目は日本史の平家物語の一節として覚えている。屋島の合戦での弓の名手「那須与一」の有名な逸話である。日本人なら多くの人が知っている故事が、伯山の手にかかると、臨場感溢れる中に笑いを散りばめ、全く新しいものに生まれ変わる。師匠にはウォーミングアップのネタがこの出来だ。次への期待が高まる。

次なる演題は、「一部の常連さんの前でしか演らない」ネタ。別門である一龍斎貞心から教えを受けたという初代・神田伯山に纏わる話だ。
江戸時代の後期、神田派の開祖・神田伯龍には3人の高弟がいたという。神田白龍の弟子、伯海は芸は優れ男っぷりも良い。自分くらいの腕がどこでも通用すると、お梅という娘を連れて江戸を離れ大坂へ赴く。しかし生来の遊び癖で、たびたび寄席の席を抜き、芸人仲間からの評判は悪い。さらには借金を重ね、妻のお梅には逃げられてしまう。江戸に戻ると自分の弟弟子であった伯山が神田派の総領となっていた。失意する伯海に名人の東林亭東玉が力を貸す…というあらすじなのだが、典型的な人情噺である。目の前に情景が浮かぶ名演だった。人気が復活した伯海に、藤玉が別れた妻を引き合わせる場面には、目頭が熱くなった。そして、伯山師匠の脈々と続く講釈師の名跡への深い想いを垣間見た「東玉と伯という大ネタであった。因みに、この噺の主人公である伯海、後の松林亭伯圓は、安政の大地震で本所小梅の自宅で亡くなったという。まさに小生の地元であり、在りし日の江戸の街並みが脳裏をよぎった。

中入りは挟み、最後の3席目だ。我々初心者に向け、「もう、疲れたでしょ」と労いながら、「今まではリハーサルみたいなもんで、最後に演るネタが、僕が大事な時にかけさせてもらう噺です。私のパッションが3Fにまで届くように一生懸命演らせていただきます」(げっ、もっと凄いのを出すの[がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)][がく~(落胆した顔)]

「中村仲蔵」・・・真打披露初日にかけた噺らしい。江戸中期、芸一筋に生きた歌舞伎役者の立身出世物語だ。当時の役者世界には、台詞ひとつの「稲荷町」から一座の中心となる最高位の「名題」まで厳格な階級が存在したという。そして徹底した血統主義もあり、大役者の血筋であれば名題の道が自ずと待っているが、家柄に恵まれない者は、いくら実力があっても生涯、稲荷町を抜け出ることは出来なかった。「芸きちがい」と呼ばれていた仲蔵は、一心不乱に芸を磨き、座長の市川團十郎の目にとまり、異例の出世を遂げていく。廻りの反対や嫉妬怨嗟にもめげず、稲荷町出身の初の名題に登りつめた矢先、「仮名手本忠臣蔵」で彼に与えられた役は、5段目の中での端役だった。玄人筋には、人気の4・6段に挟まれ飯を食べながら時間潰しの「弁当幕」と呼ばれ、誰からも注目されない舞台だった。かつてはどんな役でも工夫を凝らしてきた仲蔵だったが、この役は万事休す。果たしてこの斧定九郎役を、彼はいかにして演じるのか、そして観客の評価は如何に・・・

前座時代から人気を博しながら、落語協会の伝統により一度は真打昇進を見送られた、一般家庭出身の本人と完全にかぶるネタだ。1、2席とは打って変わり、本題に入ってからは敢えて「笑い」を封印したような緊張感溢れる語り口だ。クライマックスには、ホール全体が暗くなり、ステージ上の伯山のみにスポットライトが当てられる唯一の演出と相待って、一人の芸人の生き様をまざまざと見せ付けた。最後の「いよっ、堺屋、日本一!」の掛け声に戦慄が走る。怒涛の50分間。6代目神田伯山が、自分自身の芸への熱い想いを投射した魂の講談だった。

よく通う寄席は1席がせいぜい20分弱、個々の噺家の凝縮した話芸の一端を知る貴重な場である。だが、独演会というものは、一人の芸人の持てる全ての技術や想いを観客に披露する真剣勝負に思えた。3つの演目に約2時間を費やしたこの日の講談を目の当たりにし、日本伝統芸能の奥の深さを思い知り、伯山師匠の芸への真摯な姿勢に胸が熱くなった。

女房とシンフォニーホール向かいの居酒屋で煮込みをつつきながら、感慨に耽る夜でした[ぴかぴか(新しい)]

お時間があれば聴いていただきたい[パンチ]





nice!(21)  コメント(0) 
共通テーマ:芸能

『朝が来る』 [上映中飲食禁止]

彼女の作品って、どうしてこんなに温かいのだろう。

朝が来る.jpg

ドキュメンタリー制作から世界に羽ばたいた川瀬直美監督の最新映画である。拡大ロードショーされる類ではないが、昨今は異常な鬼滅ブームに追いやられ、この手の作品は尚更ひっそりと絶賛上映中だ[パンチ]

『あん』『光』の感動、再び〜本物の映画と出会えた〜

子供に恵まれなかった栗原佐都子(永作博美)と夫の清和(井浦新)は、特別養子縁組の制度を通じて男児を家族に迎える。それから6年、朝斗と名付けた息子の成長を見守る夫妻は平穏な毎日を過ごしていた。ある日、朝斗の生みの母親で片倉ひかりと名乗る女性(蒔田彩珠)から「子供を返してほしい」という電話がかかってくる。(シネマトゥデイより)

幼稚園児のジャングルジム転落事故が起こり、自分の息子が加害者だと疑われる。我が子を信じながらも、一抹の不安がよぎる...「私達夫婦とは血が繋がっていないから?」
不穏な雰囲気から始まる物語は、不妊治療の望みを失った夫妻に突如訪れた養子縁組の話に遡る。子供に恵まれない中年に差し掛かった夫婦の姿を、永作・井浦が等身大で演じる。永作博美が凄い、そして良い歳の重ね方をしていると実感する。本作内では、ほとんどスッピンと思われるが、目立つ目尻のシワが逆に可愛いらしく、またそれが演技の重みを増している。名作TVドラマ「青い鳥(1997年)」での食堂のひとり娘役の時と同じだ[がく~(落胆した顔)]

50歳にはとても見えぬ[揺れるハート]
朝3.jpg

640.jpg

190604_0030-s.jpg

突如恵まれた子供との縁を無性に喜ぶ夫婦。息子の成長と共に家族の絆が深まった頃に、一本の電話が掛かってくる...「私の子供を返して下さい」

中学生で妊娠し、特別養子縁組団体で出産、子供を手放さざる得なかった少女役を蒔田彩珠(あじゅ)が熱演だ。若干18歳とはいえ、子役時代からの芸歴は長い。この目力は魅力であり、最大の武器だ。栗原夫婦の幸せの過程と並行して、この片倉ひかりの哀しき思春期が刻々と描かれて行く。

朝7.jpg

img_story-600x350.jpg

先日の新聞紙上に河瀬監督のインタビューがあり、特殊な演出法に関しての記述があった。『脚本に書かれたシーン通りに撮影する「順撮り」をすること。そして俳優同士が役名で呼び合い、カメラの回っていないところでも役のまま過ごす「役積み」をさせることだ。順撮りでないと絶対に出ない感情があり、これまでも作品ごとに奇跡的なシーンを撮ることができた。今回は夫婦と実母が対面するシーンで奇跡が起きた・・・(日本経済新聞より)

出演者すべての自然かつ胸に沁みる演技の根幹が、そこに在ったと得心する。施設長の浅田美代子、ひかりの母親役の中島ひろ子、ひかりの親友となった森田想など脇役陣もハイレベルの演技だった。そして、特に蒔田彩珠の演技が神懸かり的なのだ[exclamation×2]初恋を知り幸せ一杯だった中学生が「妊娠」というアクシデントから人生の歯車が狂い、若くして都会の片隅でやさぐれた生活を送るのだが、設定された奈良の中学校に実際に通学し、卓球部に所属、新聞配達の共同生活も経験し、「役積み」をしたという。外見は清楚な美少女から別人の如く変貌しつつも、人を信じる心と一欠片の母性だけは失わず、都会でひっそりと生きる姿をリアルに演じた。

「産みの親」と「育ての親」が対峙する場面は、緊迫感に溢れ、観る者をスクリーンに釘付けにする。母に成りきった永作が静かに断固たる口調で話す...
「あなたは、一体誰ですか」

自らが養女である河瀬監督が、辻村満月原作を渾身の力で映像化した人間ドラマだ。ミステリー仕立ての体裁を保ちつつ、不妊治療問題と特別養子縁組制度に光を当てた「愛溢れる傑作」だ。映像の1カット1カットは、独自の光の取り込みと構図によりフィルムカメラで切り取ったような永遠性を帯びる。ラストシーンの二人の母親に囲まれた息子の目に映る夕陽が、えもいわれぬ愛しさを沸き立たせ、胸を熱く締め付けるのであった。

「鬼滅」も素晴らしいアニメだと思うが、本作こそ、もっと多くの方が観るべき本物の“映画”ではなかろうか。


nice!(21)  コメント(2) 
共通テーマ:映画

結納 [寫眞歳時記]

長女の婚約の儀〜喜悦の中に幾許かの寂しさあり〜

20201031-DSCF1316.jpg

20201031-DSCF1311.jpg

20201101-DSCF1416.jpg

20201031-DSCF1320.jpg

娘の結婚。
いつかは来ると思いながら、何処かでもっと先だと思い込む。
ずっと家に居られたら困ると言いながら、いざ離れる日には狼狽えるのだろう。
父親の我儘をちょっと飲み込んで、娘の笑顔に最大級のエールを送る。

nice!(23)  コメント(8) 
共通テーマ:日記・雑感