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上野の甘味処を巡る [江戸グルメ応援歌]

幼少の頃、甘党だった父が「あんみつ」を年に何度か買ってきた。当時のおやつと言えば、近所の駄菓子屋で買う一個十円のアイスキャンディーが関の山だった子供にとって、この高級和菓子は別世界の食べ物だった。小さな容器の中に、寒天・エンドウ豆・餡子・求肥・フルーツという全て食感も味も違う食材が美しく並び、そこに別容器から黒蜜を搾りかけ混ぜ合わせ、それらを一気に口の中に放り込む。餡と蜜の甘みと寒天の冷たく滑らかな食感が渾然一体となり、未体験の味のシンフォニーになんだか大人の仲間入りをしたような心持ちになったものだ。

◯みはし

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我が家であんみつといえば、この店の持ち帰り土産が定番だった。戦後、食糧事情も厳しい昭和23年に上野公園前に創業した老舗だ。以来地道な商売を続け、今や東京下町甘味の代表的存在となった。土産用あんみつの昔と全く変わらぬ器に胸が躍ったが、今回、生まれて初めて店舗の中で味わってみた。

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清潔な店内、自然な接客に老舗ならではの守り続けた心意気を感じる。多少混雑していても、落ち着いた空気感が心地良い。今回は奮発して白玉入りのあんみつを注文した。餡子の形が土産と違うのは、土産の方が機械生産の為と思われるが、当然ながら昔から慣れ親しんだ味に変わりがない。店内で食せば、手作り感と器の美しさが増し、美味さもひとしおだ。餡と黒蜜のしつこすぎない甘さと寒天の爽快さのハーモニーに白玉のプニュプニュ感がアクセントを加える。う〜ん、堪らない[わーい(嬉しい顔)]
都内東部の百貨店や駅ナカに売店も出し、土産用あんみつは手軽に購入できる。伝統を守りつつも生産体制を整え、販路拡大にも前向きだ。頑なに一店舗のみの味に拘る職人気質の老舗には頭が下がるが、多くの客に店の味を広げる努力に余念がない老舗も素晴らしい。商売人の真髄だ。

◯うさぎや

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大正2年創業の和菓子店である。ビルに建て替えられているが、1階部分の庇と暖簾、そして兎のオブジェが老舗の往時の貫禄を現代に呼び起こす。商品も多く、最中、うさぎまんじゅうも美味いが、「どら焼き」の存在感が半端ない。無類の餡マニア・つむじ風としては絶対に外せないオススメの一品である。日本橋、阿佐ヶ谷に親族の店があるが、この店のどら焼きはここでしか食べられない。賞味期限2日の出来立てを販売するのを旨としており、当日に食さなければ勿体無い旨さだ。

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しっとりとした皮にもほんのりと甘味が載り、これだけでも洒落た喫茶店のパンケーキより十分美味い。その優しげな皮に挟まれた餡子は、エグ味やしつこさとは無縁の小豆の旨味に溢れている。コッテリ系を珈琲で流し込むのも好きだが、このどら焼きならお茶無しで一気に5、6個は食える[わーい(嬉しい顔)]東京随一の美しくて上品などら焼きの銘品だ[ぴかぴか(新しい)]
この店はイートインコーナーは無く持ち帰り専門だが、歩いて30秒ほどの裏通りに併営の「うさぎやカフェ」が在る。本店の餡子を最大限活かしたメニューが人気の洒落たカフェだ。かき氷ならぬ「うさ氷」が有名らしいのだが、流石に今の季節では食指が動かないので...

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『うさ餡みつ』・・・あんみつというよりは、餡かけ寒天なのだが、まごう事なき「うさぎや」自慢の餡子だ。どら焼き同様に甘さを抑えた上品あんみつだ。店の伝統の味を、和菓子を食べ慣れない若者向けにアレンジして提供する姿勢に、進化する老舗の力強い姿を見た。

◯みつばち

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明治42年創業の氷屋をルーツとした甘味処だ。『小倉アイス』発祥の店と言われている。モナカに挟んだ小倉アイスを店先で販売するのを旨とし、特に夏には賑わう。店内でも食事のスペースがあり、アイス以外の甘味も扱う。と来れば、「小倉あんみつ」の一択しかない。

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アイス自体は決して高級な体ではない、正直「あずきバー」と大差無い。明治の時代から庶民に親しまれた味を守り続けて来た訳で、それこそ「変わらぬ味」の素晴らしさなのだ。大正期に田舎から丁稚奉公で上京した祖父も食べたであろう貴重な甘味の記憶が遺伝子に刷り込まれているに違いない。身体が喜んでいるのが判る。いつまでも継承して欲しいものだ。
但し、前述の甘味専門店と違い、アイス販売店が客引きの為に甘味も始めた為、店内で食すと際立つ職人度もおもてなし度も低いのが判る。店内は職人不在で、アルバイト風が出来上がった材料を組み合わせて提供しているだけのようだ。接客も片言の日本語の外国人を採用している。今の時代に老舗を光らせるのも、名跡の名だけで凌ぐのも、オーナーの姿勢ひとつだと思う。残念ながら、現状は小倉アイスのテイクアウト専門店か。

◯つる瀬

湯島天神下の交差点に在る昭和5年創業の和菓子店だ。豊富な種類の菓子を販売し、喫茶室もある為、参拝帰りの客で休日は非常に繁盛している。

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職人の良心を感じる店で何でも美味い。やっぱり豆が良いのだろう。良い材料に確かな職人の技が、この店を永きに亘り支えて来たのが窺える。

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白玉は注文されてから作っているに違いない。「みはし」の洗練度とは違う職人の手作り感が嬉しい。ほとんどの和菓子は防腐剤抜きの為に賞味期限は当日か2日間だ。余りにも豆が美味いので「鹿子」を追加してしまった。

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個性豊かな老舗が今だに息づく街・上野。コロナ規制も緩み、最近の休日はどこも大混雑だ。地元民が気楽に立ち寄れないのは少々残念なのだが、3年間の危機を乗り越えた老舗が頑張ってくれるなら、小生は大雨の平日にハシゴするからいいぜ[わーい(嬉しい顔)]

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古月【中華・根津】 [江戸グルメ応援歌]

この1ヶ月立て込んでおりました[がく~(落胆した顔)]

コロナ罹患から業務復帰後、鹿児島地方裁判所の証言台に立たされるわ、いきなり国税調査が入るわと国家権力に振り回され、てんてこ舞い。プライベートでは、母の一周忌法要をなんとか無事に執り行うことが出来た。気が付けば年の瀬も迫り、仕事はいまだに忙しないが、気分的には落ち着いてきたと思いきや、我が営業所内で社員5名がコロナ発症[exclamation×2] オーマイゴッド[ダッシュ(走り出すさま)]


先日の谷中の菩提寺で母の一周忌法要を終えた後、親族での会食の席を設けた。ほぼ25年ぶりの再訪の中華料理店なのだが、家族全員が幸せな時間を過ごさせてもらった。母も喜んでくれたに違いない。


『古月』・・・昭和初期の日本家屋を利用した情緒溢れる中華料理専門店だ。併営している「山中旅館」は宿泊可能で中華料理旅館としても有名だ。創業が1990年というので、前回訪問はまだ開業間もない頃だったようだ。料理長である山中シェフはこの間に「薬膳料理」の大家としての地位を築き、店の格式も非常に上がったが、そんな敷居の高さを感じさせない自然な佇まいが心地良い。何せ2歳と4歳の騒がしい孫を連れても優しく受け入れる懐の深さは有難かった。


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メニューは多岐に渡り一般の中華料理もあるが、今回は法事でもあるので、当店でしか味わえないであろう「本格精進ランチ」を注文した。肉類を一切使用していないのだが、匠の技により味わいが幾層にも深まり、かつてない満足度を与えてくれる。

精進肉と五目野菜の煮込み
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キヌガサ茸と木耳豆腐のスープ
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炒め物二種盛り中華クレープ添え
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古月特製野菜ビーフン
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素晴らしい親族団欒の刻を戴いた。ご馳走様でした[わーい(嬉しい顔)]





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かどや【軽食・大師前】 [江戸グルメ応援歌]

絵に描いたような昭和の食堂なのである

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久方ぶりに西新井大師の参道脇にある食堂に伺う。前回の訪問が4年ほど前で、実は存在自体が不安だったが、哀愁漂う勇姿と懐かしの味は以前のままだった。

大正11年創業の食堂である。現在は、食事が麺類のみで甘味が主体のメニューだ。夏場は、このレトロな雰囲気とあいまって今風のかき氷が若者達から評判のようだ。

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小生は、なんと言っても此処は「ラーメン」一択になる。潔過ぎるほどのシンプルさ=これぞ昭和の「中華そば」なのだ。私が幼少の頃は、何処の店でもラーメンといえばこのタイプだった。

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前回訪問は冬場の為に「あんみつ」の注文だったが、本日は10月というのに30℃を越す蒸し暑さだ。思い切って「いちごミルク」を注文する。

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かき氷は、縁日屋台風のザラザラ氷ではなく、平成風の「粉雪」風に進化していた。爺い独りで掻き込む氷もなかなか乙なものだ[あせあせ(飛び散る汗)]

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令和以降、昭和以前に竣工された建築物が次々と取り壊されている気がする。建物と言えど人間と同じく寿命がある。建築物は文化財として保護され定期的に補修工事を施さねば100年住宅など夢物語なのだ。だからこそ、文化財扱いされずとも代々の住民の手によって守られてきた建物には支えてきた人々の想いが詰まっている。それでも必ず来る最期の時に、「ご苦労様」と言ってあげたいな。

鉄人・アントニオ猪木も天に召されてしまった。合掌

本日は食事が目的だったが、薬師様にもしっかりお参りしてきました。

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イマカツ【トンカツ・東銀座】 [江戸グルメ応援歌]

年に一度の人間ドックに行ってきた。

男の厄年(42歳)から、春の健康診断と共に秋に人間ドックを受ける事にしている。再度の厄年(60歳)を迎えても大病せずにいられたのは、その為とは言わない。ただ、歳の割には不摂生の極みの食生活を続けられるのは、学生時代の試験結果の如く受診後に届く診断結果のおかげなのだ。50歳からは念入りに、胃の検査をバリウムから内視鏡に変え、また愛煙家継続に向け肺CTスキャンをオプションで付けている。要するに、健康の為というより不摂生を続ける免罪符を戴く儀式みたいなものかもしれない。いつも女房に叱られるが...[ちっ(怒った顔)]

毎回、胃カメラが唯一の難関だった。喉を通るスコープを身体が拒絶して、えずきっ放しなのだ。自分の娘のような看護師に『ヨチヨチ、頑張ってくださ〜い』と背中をさすられ、涙・涎まみれのオッチャンのプライドは地に堕ちるのであった。だが、3年前から鎮静剤使用を決断してから難関が快感に変わった。当初は、強制的に眠らされて、そのまま目を覚さなかったらなどと不安がよぎったが、寝ている間に全てが終わるという簡略さを知ったら、もう後戻りできない。本日も、麻酔医が点滴の針を腕に射した3秒後に意識が飛び、軽く肩を叩かられて目を覚ましたら終了だ。「良くお眠りでしたよ」と看護師がにこやかに話ししたので、「大きいイビキ、かいてました?」と聞くと微笑みで返してくれた[あせあせ(飛び散る汗)]

全ての検査が終了し、街に出る。歌舞伎座タワー内の病院なので、東銀座の交差点界隈で昼食だ。検査のため朝食抜きだったので腹ペコだ。検査完了のご褒美に高カロリーの肉系がいい、そして食事場所はもう決めている。


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『イマカツ』銀座店・・・六本木に本店を置くトンカツ専門店だ。昨年の人間ドック終了後に偶然に飛び込んだ店だ。その時、トンカツメインであるのだが、この店のこだわりの一品である「ささみかつ」を食し軽い衝撃を受けたのだった。昨年は「ささみかつ膳」だったが、今回は「イマカツ膳」という盛り合わせランチを注文だ[exclamation×2]

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盛り合わせの内容は「ささみ2本、一口ヒレ、メンチ、カニクリーム、ナス」の6品にキャベツ・ライス(五穀米も可)・味噌汁だ。まずは、ささみかつを塩で頂く...蘇る感動[わーい(嬉しい顔)] 尋常ならざる鶏肉の柔らかみと極限まで薄く軽く揚げた衣が渾然一体となって口の中でとろけていく。フライ好きの小生は、串揚げ屋にも結構通うが、このレベルまで素材を活かして揚げる店は無かった。本来は旨味が薄いと言われるささみ肉の優しい味わいが存分に前面に押し出されて来るのだ。厳選された食材と独特の調理法の賜物と思われる。初めて食すヒレ肉とメンチも同様に絶品であった。
元々は、豚ロースの溢れ出る肉汁と粗いパン粉のザクザク感を濃厚ソースでガッツリ頂くのが私の本流なのだが、この店の一品は、そんな小生にカツの全く別の魅力を教えてくれた。そして加齢と共に、ますますこちらのお品に嵌るであろう事を予感させるのであった。

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とにかく、いつまでも美味しく肉を頬張れる健康は維持したいものだ。今回の人間ドックの通信簿はどうだろうか?来年の検査後もこの店でのランチを楽しみたいな。とりあえず腹囲ジャスト1メートルは昨年と全く同じであった...[ふらふら]




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桃乳舎【洋食・人形町】 [江戸グルメ応援歌]

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勤務先の徒歩ランチエリア内に存在する古い喫茶店だ。
『桃乳舎(トウニュウシャ)』という店名と古色蒼然とした店構えから助平な爺さんは、いかがわしい商品を取り揃えたマニア向け専門店ではと胸ときめかせたのだが、妄想過ぎた。真っ当な喫茶店であった[あせあせ(飛び散る汗)]

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明治22年(1889年)に牛乳販売店として創業し、その後にミルクホールに転業したそうだ。昭和8年に建て替えられて以降、戦災をかいくぐり、バブル地上げに見向きもせず、当時の姿そのままを今に留めている。
店内に一歩足を踏み入れれば、外観からの期待通りの昭和の世界にタイムスリップさせてくれる。私が学生の頃は、こんな雰囲気の『サテン』ばかりだった。マンガ喫茶も当然ネットカフェも無い時代、薄暗い喫茶店でたいして美味くない珈琲を啜りながら、漫画週刊誌を読み漁った。

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私よりも遥かに年配のご夫婦二人で店を切り盛りしている。ランチタイムのみの営業であり、しかも飲み物の提供は一切していない。以前は看板の通りに軽食喫茶だったはずだが、高齢と人手不足の為に、摩訶不思議な洋食専門店の形態になっている。そんなお店側の事情での営業方針にも関わらず、小生のような懐古趣味の優しき客で連日混雑している。

多分、メニューは半世紀に亘り変わっていないのかもしれない。値段も20年は値上げを忘れているような佇まいだ。そしてどの料理を食しても「昭和の味」を思い出させてくれる。

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平成以降の飽食に慣れ親しんだ自分の舌を戒めるように、昔懐かしい味がドッと押し寄せてくる。高級食材やレアな調理法を使わずとも、プロのベテラン職人の本気の技が此処に在る。
80歳近いと思われる腰の曲がったマスターは、今日も純白のコックコートを着込み、黒の革靴を履いて調理場に立つ。ホール担当の奥様は、無造作にカウンターに硬貨を積み上げて、釣り銭を間違わないよう客さばきに余念がない。普通ならノンビリ老後を愉しむ年代のはずだが「ずっと二人で仕事をするのが当たり前」というご夫婦の自然体な姿勢まで伝わってくる。

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桃のレリーフが一層輝いて見える。
桃太郎を育てた老夫婦みたいに愛情たっぷりの店だ。

 

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ブーランジェ ボワ・ブローニュ【パン・浅草】 [江戸グルメ応援歌]

[ぴかぴか(新しい)]最近お気に入りの街のパン屋さん[ぴかぴか(新しい)]

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朝食は生まれながらの米派であったが、パン派に主旨替えしたのは結婚して長男が生まれてからだ。やはり子育て中の戦う主婦にとってパン食の用意の方が有難いらしい。小生は20年後に単身赴任してそれを実感した訳だが、どちらにしてもスーパーで買う六枚切り100円台の食パンが定番だった。子供達が家を離れ、最近になって専門店でパンを購入し、夫婦で朝食を摂る機会が増えてきた。

或る夜「明日のパン買ってきて!」と唐突にカミさんから連絡があり、会社帰りにコンビニでも寄るつもりでいたら見つけたお店だ。銀座線・田原町駅から徒歩1分、近代的なフォルムのAPAホテルの隣でこじんまりと佇んでいるが、可愛らしい看板が印象的なレトロな店舗だ。

自家製天然酵母を使用した、手づくりパン屋さんだ。その日に焼いたパンをなるべく売り切りたいとのことで、23時頃まで店を開けている職人魂に頭が下がる。近くには高級食パンブームで人気復活した老舗「パンのペリカン」がビジネス展開に成功して大繁盛しているが、まるで対極の経営手法だ。店番は嫁姑と思しき女性二人が受け持ち、パン作りに勤しむ男性陣の姿は見えないが、典型的な家族労務だろう。

常食の食パンは、一斤では賞味期限内に夫婦二人では食べきれないので六枚切りを買う。こちらの店では、カット売りでも端っこの固い部分を薄く切って付けてくれるので、六枚切りが七枚切りになる...何だか嬉しい[わーい(嬉しい顔)]トーストにすると、少々の塩味と小麦の甘味が心地良く、耳の部分はしっかり固い。小学校の給食に出された食パンの感触を思い出してしまう。

食パン以外は目移りする程に種類が多く日替わりでパターンも変わるが、定番の1番人気は「ぶどうパン」だ。


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大粒の葡萄が目一杯詰まっている。スライスして生食でも焼いても絶品、食べながらもボロボロとジューシーな葡萄が溢れてくる。バターを乗せてトーストすれば小生の大好物レーズンサンドそのものだ。パンマニアでは無いが、菓子パンでこの感動は初めての経験だった[ぴかぴか(新しい)]

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「豆腐と野菜サンド」何と優しいお袋の味〜母ちゃんが剃り残した耳が可愛い[黒ハート]
「あんこロール」塩ロールと餡子の抜群の組み合わせが嬉しい[かわいい]

どれを食しても何だか優しい気分に浸れる味ばかりだ。店構えと女性陣の人柄を知るゆえの思い入れもあるかも知れない。ただ、毎日食べても飽きない自然な味であるのは間違いない。永くお付き合いしていきたいお店だ[ハートたち(複数ハート)]




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初小川【うなぎ・浅草】 [江戸グルメ応援歌]

茹だるような暑さの季節〜少々値段が張っても喰いたくなってしまう・・・『鰻』

浅草界隈に江戸前鰻の銘店は多いが、最近の小生のお気に入りは此処だ[exclamation×2]


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『初小川』・・・雷門が目と鼻の先にも関わらず意外と閑静な通りに面して、凛として佇む小粋な老舗である。実は以前は此処から至近の『色川』に通っていた。一時はTVにもよく顔を出していた江戸っ子気質の親父に怒鳴られながら食す絶品鰻は、M的快感も伴って唯一無二の代物だったが、7年前に単身赴任から帰った時には、その名物職人は天に召されていた。そして跡を継いだ未亡人と娘さんが切り盛りし、下町グルメブームも手伝って店は更に大繁盛していた。昼営業のみに変更した上に常に長蛇の列という状況で、途方に暮れた行列嫌いの小生が偶然に入った店が『初小川』なのだ。

雑然とした店内に誰もが一瞬たじろぐかも知れない。レトロ感というよりも、昭和初期の気軽な食事処がそのまま残っているのだ。

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手前に火鉢を囲んだカウンターと小上がり、奥の座敷で10人も入ればいっぱいの広さだ。壁の至る所には、安っぽい芸能人の色紙ではなく、相撲取りの手形やら歌舞伎のポスター、無数の千社札が貼られ、三社祭の提灯から祭り道具が無造作にに陳列されている。そしてお品書きは当然に筆書きだが、外国人向きにしっかり英語表記もあるのが微笑ましい。まさに「開国直後の東京」の風情なのだ[ぴかぴか(新しい)]
実際の創業は明治40年。それ以来100年以上に亘り継ぎ足している割下と三代目主人が捌き焼く鰻、絶妙の炊き具合の米が織りなすハーモニーが美しい重箱に詰められて、それを私と同年代の粋な女将が運んで来てくれる。

うな重(上)4,300円
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美しさより「愛おしさ」を感じる

お吸い物(肝入り)なんと50円[exclamation&question]
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品切れが多いが運が良ければ食える「肝焼き」も絶品
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少々辛めのタレは好みの分かれる処だろうが、下町育ちの小生には申し分の無い味付けだ。一子相伝の焼きと蒸しから生み出される、皮のカリカリ感と身のフワ感も絶妙だ。何よりも、ご主人と女将そして4代目修行中と思しき息子による家族で代々守り抜いてきた江戸前の粋が今も感じられる風味が素晴らしい。値段の高騰ゆえに、鰻屋の敷居が益々高くなって来ているが、この店で食べる鰻の幸福度と安心感は格別なのである。

ご馳走様でした[わーい(嬉しい顔)]
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ゲリラ豪雨と強烈な日照りが繰り返される東京にいるとなんだか
たっぷり蒸された後にカラッと焼かれるウナギの気分になったりして[ふらふら]


 [かわいい]夏にピッタリ[かわいい] 
このMV好きです



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マウンテン【喫茶・浅草】 [江戸グルメ応援歌]

久しぶりに浅草の喫茶店で晩飯を食す。

学生時代から通っていた洋菓子喫茶店『アンヂェラス』が2019年に70年の歴史に幕を閉じた。自家製ケーキのテイクアウトも人気だったが、レトロ感溢れる店内で店舗と同じ名を冠する小ケーキ「アンジェラス」を一口で頬張り、濃い目のコーヒーを一気に喉に流し込む快感は格別であった。昭和の文豪達も足繁く通ったというこの老舗が失くなって以降、小生お気に入りの浅草の喫茶店は全く対極の此処と決めている。

純喫茶『マウンテン』・・・雷門通りで約半世紀、こちらも浅草の栄華盛衰を見つめてきた老舗喫茶店だ。「純」喫茶と謳ってはいるが、西洋文化の息吹を感じる「アンヂェラス」と違い、観光地に付き物のコテコテの和風喫茶なのである。あんみつ+コーヒーセットという困惑の組み合わせで外国人観光客に興味を抱かさせ財布の紐を緩ませるという商売のあざとさを全く包み隠さない潔さが小生は好きだ。幅広く一見の観光客を取り込むためにメニューも多岐に及ぶ。甘味はお汁粉・あんみつからパフェまで和洋折衷、当然、洒落た自家製ケーキなどは無い。食事も節操がなく、もんじゃ・お好み焼きの鉄板系からサンドウィッチ、うどん・雑炊、カレーライスまで、まさに「不純」喫茶だ。以前は喫煙自由の無法地帯だったが、流石に電子タバコのみの利用に変更されていたのは愛煙家の小生にとっては少々残念だった。だが、入り口脇にしっかり灰皿が置かれ、通行人に白い目で見られながらも煙を楽しむ余地を残す官権への僅かな抵抗心も嬉しい。

小生の注文パターンだが、食事は粉系から麺類までその日の気分で決める。そしてデザートはほぼ一貫して「小倉ホットケーキ」を注文するのである。本日はこの組み合わせだ[パンチ]

 銀の皿が眩しい昭和風『ナポリタン』
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禁断の『小倉ホットケーキ』[ぴかぴか(新しい)]
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店内は統一感が全く感じられない昭和レトロな雰囲気だ。歴史を感じさせる椅子とテーブルは居心地良く、壁には無造作に手書きメニューや古い週刊誌の切り抜きがベタベタ張り出され、美しいステンドグラスとの不調和がカオス的なムードを醸し出す。そんな処で、小倉あんと生クリーム&ホットケーキの三位一体攻撃を受けてはひとたまりもない。カロリー超過の背徳感はMAXを超過すると幸福感に変わるのだ。江戸っ子気質のママさんとのちょっとした会話のキャッチボールも楽しい。価格が観光地相場なのは痛いところだが、月一くらいは顔を出したい小生のオアシスなのである。

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徳【うどん・水天宮】 [江戸グルメ応援歌]

コシの強い『うどん』と言えば「讃岐うどん」で決まりだろう。当然、店舗によって味の違いはあるが、麺自体の特有のモチモチ感は共通だ。ご当地手打ちうどんの王道とも言える存在だ。

では「日本一コシの弱いうどん」はと訊かれれば小生は『伊勢うどん』と答える[かわいい]

名古屋単身赴任時代に三重県にも度々出張し、地元のお客様に何度もご馳走になった。初めて食した時の衝撃[exclamation&question]甘辛固い物好きの江戸っ子には許し難い歯応えの無さにまず驚く。だが独特の麺の柔らかさが自然な喉越しを生み出して胃袋に溶け込む感じにいつしか病みつきになってしまった。現地の店で箱買いし、いつしか単身生活での貴重な食材の一つとなった。懐かしい思い出だ。

コロナ自粛もほぼ解禁となり、勤務先近辺の飲食店も賑わいが戻りつつある。久しぶりに新規開拓したいと思い、いつものランチエリアを越境して物色していたら見つけたのだ・・・「伊勢うどん」の看板を[がく~(落胆した顔)] まさか、東京で伊勢うどん専門店に出会うとは...迷わず入店する。

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「徳」という名の夜は居酒屋でランチタイムは伊勢うどんを提供している店だ。未だコロナ仕様につき10人も入れば満席のこじんまりとした店内をご夫婦二人で切り盛りしているようだ。メニューを一瞥して当然の如く「伊勢うどんセット」を注文。先に小鉢とミニまぐろ丼が来る。赤身を楽しみながら念願のうどんとの久々の対面を待つ。

来たぁ〜、これ、これ[かわいい]
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これを下に溜まっている醤油出汁とグチャグチャにかき混ぜ
揚げ玉をぶっかけて完成。う~ん、美しくは無い[黒ハート]
当時の小生はこれに生卵を投入したのだが...
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「旨〜い、うれし〜い[ぴかぴか(新しい)]」懐かしの味を堪能した[わーい(嬉しい顔)] 讃岐で言う「ぶっかけ」風だが、基本的に麺は熱いままだ。「日本一コシが弱い」と小生は称したが、当時の地元の方は「柔らかいけどコシはあるんだ」と主張して譲らなかった。確かに、病院食のように口の中で溶けるほど煮込んでいる訳ではない。麺の存在を明確に感じさせる食感は残しつつ、歯に優しく、そっと胃袋に収まる抵抗感のない喉越しが心地良い。さらに辛めの真っ黒醤油出汁が麺としっかり絡まって小麦の風味をじわっと引き出すのだ。見た目は、最近若者に人気のラーメン「油そば」だ。まさに三重県が誇るご当地ジャンクフードの原点みたいな存在なのだ。

江戸時代には伊勢参りが国民的行事となった。庶民は他国への移動が厳しく制限されていたが、伊勢参りだけは例外として認められ、階級に関係なく「一生に一度は」と、伊勢神宮を目指したのである。江戸からは平均15日間の行程である。一部の金持ちは別として、多くの旅人は疲労困憊して伊勢に辿り着いたであろう。遠方からの旅人に消化の悪い物を食べさせたくないという伊勢の料理人の気遣いが、嘘か真か「伊勢うどん」を生んだという。

昔日の伊勢の人々の優しさをちょっと感じる懐かしの味だった[ぴかぴか(新しい)]
セットのミニ丼・味噌汁・小鉢・お新香も丁寧に作られている。三重県人と思われるご夫婦のお人柄まで感じさせる味だった。また好きな店ができた[わーい(嬉しい顔)]




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今荘【うなぎ・神保町】 [江戸グルメ応援歌]

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威容を放つ外観に惹かれ、一度は伺いたいと思っていた鰻屋さんだ。平日ランチタイムのみの営業の為、小生の勤務地からさほど遠くもないのだが意外と機会が無かった。ようやく、余裕のある昼間に地下鉄に乗って3駅で辿り着いた。

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今荘・・・明治30年創業。現在の建物は昭和8年の竣工である。独自の和洋折衷のデザインで、唐破風(玄関部分)と千鳥破風(上層部)が混在した意匠で中間の丸窓が不思議なアクセントになっている。創業当初は牛鍋店だったが、昭和50年代にうなぎ専門店に転身したらしい。その時期は小生がこの街を徘徊していた学生時代にあたるが、残念ながら記憶には無い。当時の私には、鰻もすき焼きも高嶺の花だし、今ほど古い建物にも興味が無かった。朽ち果てかけた木製の看板は創業当時の一世紀越えの代物とみた[目]

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12時ちょうどに入店、外観から想像した通りの「昭和の食堂」風景だ。厨房を囲んだL字カウンター席と大座敷にテーブル席が8卓だが、コロナ仕様の一席空けルールによりMAX20名収容だろうか、満席だったが10分ほどでカウンター席に案内された。年配女性2名と職人1名の少数精鋭の体制で切り盛りしている。お品書きは1点〜うな重3,500円のみで、希望のご飯の量だけ伝えれば良いという、なんと潔い商売[exclamation×2]
小生より一回り上と見える女性コンビの動きが小気味良い。注文聞きからお重へのご飯詰め、吸い物作り、配膳・片付け・会計全てをこなす。焼き場は2人前しか同時に焼けない広さのようで、蒸し方・焼型を一人でこなす職人さんも大忙しだ。しきりと仕込んだ鰻串の数を確認し、残数を女性に伝えている。当日は小生の後に並んだ5人で売り切れ御免と相なった。1日に決めた仕込み以上は調理しない方針らしく、人気店ゆえもっと稼げるはずなのに無理をしない。女性陣の年齢を考慮すれば現実的でもあり、江戸っ子らしい割り切り方というべきか。そして幸運にも初訪問でありつけた鰻重の味は...

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江戸のうなぎじゃ〜[わーい(嬉しい顔)] そして懐かしい昔の鰻重の味がする。今ほど鰻が高額では無かった幼少の時代、それでも年に一度くらいしか家族では食べられなかった憧れの味が蘇った。そう、普通に美味しい鰻重なのだ。入手困難な食材を使用したり、職人の巧みな技が窺える訳ではない。米も特別に拘っていない。適度な柔らかさの蒸し加減が甘すぎないタレと調和して川魚本来の鰻の風味を引き出す。とにかくこのテリ加減を見れば、江戸っ子には十分過ぎるのだ。お吸い物もしっかり「肝吸い」であり、一品メニューの鰻屋の心意気を感じる。今のままマイペースで末長く商売を続けて欲しい店だ。働き者の顔ぶれと戦前の香り残す建物と共に。
高コスパの店を見つけたとはいえ、やはり鰻は頻繁に食せる金額の料理では無い。でも月1は食いテェな〜。普段の昼飯は立ち食い蕎麦でいいから...[ぴかぴか(新しい)]




マンボー終了から1ヶ月近く経過し感染再爆発の足音がヒタヒタと忍び寄る中、東京の外食業界は少しづつ息を吹き返している。今までは一部の有名店のランチタイムのみにグルメ達が殺到する傾向だったが、最近は夜の帳が下りれば多くの一般酔客で繁華街は賑わいを取り戻している。着なれないスーツ姿の新入社員と思しき若者達が酔い潰れている光景は、昨春には全く見られなかった。少しづつ「日常」が戻ってきているのかと感じつつ、果たして「日常」とはなんぞやと我に帰る。マスク姿でパーティションに囲まれた会食だろうと十分に「平和な日常」ではないか。東欧の戦火のニュースに触れ、「日常」を奪われる悲惨さを知る。日本人であることの幸せを感じつつ、迫害が続く遥か異国の人々に対して全く無力な自分に苛立つ今日この頃である。



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